201909夕日

「辞める」から「いっしょに働きたい」へ

午後から番組の取材でいくつかの飲食店をたずねた。お邪魔したのは、おしゃれなレストランやピザ屋さん。撮影の合間にお店のオーナーとお話をする機会があったがどちらのオーナーも共通して同じことを話していた。最近は採用しても続かないし募集しても人が来ない、と。

オーナーによると、料理専門学校の卒業生の3割しか飲食店で働かないらしい。実際にレストランやピザ屋さんで働いても長く続くことは稀で、実際に仕事を体験してから「こんなにきついと思わなかった」といって辞めていくらしい。あきらめが早いというか、逆に決断力すごい。

こんなことも話してくれた。お店で働いている子に「お店のオーナーになると経営者になれるしお金も普通のサラリーマンよりそこそこ稼げるよ。だからこちらで頑張ってお店持ったらいいよ」とアドバイスしたら「お金そんなにいらないんです。朝から晩まで働く姿を見て自分には無理だと思いました。お金より自由に動ける休みが欲しいんです」と言って別の会社に転職したと。

東京の飲食店では退職の件で従業員の親が出てきて訴訟になるケースもあるらしい。どんなトラブルなんだろう。その影響かオーナーさんの知人のレストランでは採用のとき親と本人の3者で面接しているらしいと教えてくれた。どうなっちゃってるの。わからない。

自分も偉そうに書けるような立場ではない。就職するとき「10年以内に辞めるだろうな」と想像しながら入社したからだ。運がいいのか辞める前に絶対にやりたかった仕事をする担当者に抜擢された。

苦しいこともあったような気がするが楽しいことが多かったのだろう。なぜならいままで辞めないでサラリーマンをしているから。今の仕事以外は全く自分に合っていないと思っていた。そもそもすぐに辞めなかったのは運が良かったのか? 今でもわからない。

思えば入社試験の面接もジーパンだったし、面接を一緒に受けたやつと意気投合して、面接が終わった後に合格祝いと称して飲みに行った。合格なんて一言も言われていないのに。

飲みに行く途中のタクシーの中でこんな話をした。


「おまえさーこの会社で何がしたいの」と彼。

「この会社テレビCMやってないじゃん。俺はこの会社で最初にテレビCMを作る男になるんだ」

「ふーん」

「で、お前は何になるの」と聞いてみた。

「社長に決まってるだろ」

「じゃ、お互い絶対実現しようぜ。だれが先に実現するかな…… 」

「俺に決まってるだろ」


まったく…… 2人とも何を語っているんだろうね。若いってばか。

結局、彼と一緒に同じ会社に入社した。彼はとても優秀なので当然の入社だった。自分が入社できたのは何かの間違いか奇跡的に大きな力が動いたからだと思う。きっとそうだと今も信じている。

話は戻るが、入社から7年で約束を実現できる可能性のある担当者になった。そして10年後に会社のテレビCM最初に作るという約束を果たした。ちなみに悪友になった彼はまだ約束を果たしていない。

最近、会社に長く居すぎて新しい人の自由を奪うことになっていないかと時々不安が脳裏をかすめるようになった。配属されたときからこれまで自分と代われるような人が出てきたらいつでも辞めていいと言ってきた。自分より優秀だとわかった瞬間交代して辞める覚悟はある。

まだそんな人は出てきていないと思っているが、ほんとうはもうすでに優秀な人が近くにいるが自分には見えていないだけかも知れない。もしくは見ないようにしているのか。

新しい人はいつの世も賢くて優秀である。「あー、会社にいたらこんな大人になるんだ」と思ってオーナーや会社の先輩たちををみている。そんな大人を見て自分の明るい未来をイメージできなかったとき「辞める」という判断をしてしまうのではないか。もしくは、ここにいても未来にわくわくしなくないと思ったとき。ほかにも理由はあると思うけど。

出会った人に「辞める」より「いっしょに働きたい」と思ってもらえる人間に近づきたいと自分の身をギュッと引き締めてみた。

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