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子音優先とは?なぜ複合母音があるのか? ピンイン教本-10 ネイティブの発音の実体がつかめます! 

中国語 ee!chai

ネイティブの発音の実体がつかめれば、ピンインマスターの頂上はもうすぐです。理論が入りますが、これを理解すればあなたの発音は、後は練習次第でネイティブレベルです。前回の単母音での発音に加え今回は複合母音を更に詳しく取り上げます。

複合母音ではどの母音が重要か?

日本語は単母音だけなのになぜ中国語では複合母音があるのか?

日本語では音節とは別に「拍」があります。

拍はリズム上の単位のことです。「モーラ(mora)」ともいわれます。拍手の拍ですから、手をパンと叩くあのリズムと理解できます。ですから例えば「おかあさん」は「お/か/あ/さ/ん」の5拍になります。

外国人に日本語を教えるとき、最初は手を叩いて「お/か/あ/さ/ん」と一緒に声を出してもらえれば、拍の間隔をつかんでもらえます。「お/ば//さ/ん」と「「お/ば/あ/さ/ん」の違いも分かるようになります。

前回の記事で日本語はピアノのようだと述べましたが、そのイメージですね。一拍一叩きですから、一音節で単母音しかありません。ちなみに音節は母音・子音の一区切りの構成の音の単位のことです。

では中国語の一音節にはなぜ?複合の母音が存在するのでしょうか?

これは声門閉鎖が関係するからです。そしてこの声門閉鎖が、なんと日本語と中国語では真逆になるのです。か・Kaで説明します

例えば「Ka/か」の発音ですが、日本語でしたら「あ」の母音の口の構えがあってそれに子音のか/Kを付けて発音します。鏡で自分の口の形を見れば「あ」の口の形で発音しているのが分かります。

では中国語の「Ka」はどのように発音しますか?

中国語の「K」の子音は舌根音と言います。発音は便宜的に母音「e」で音声化します。「中国語発音完全教本」で次のような記述です。

口の構え:ほほえむように口を横に引く                発音:ノドをふさいでいる舌を弾き飛ばすように、息をノドの奥から強く吹き出して「ク+e」と発音。発音と同時に舌はノドから離れる。

中国語発音完全教本(アスク出版)子音の章、舌根音のp66

この日本語と中国語で、同じアルファベット記号の「Ka」でありながら、発音の仕方は声門閉鎖の違いが原因で、ずいぶんと違う口の動きになります。

以下が加藤徹先生の「中国語発音学習教材」の記述です。

中国語で母音だけ単独で発音するときは、必ず「声門閉鎖」をしてから母音を発音します。例えば同じアでも、中国語のa(声門閉鎖あり)と日本語のア(声門閉鎖なし)では、違って聞こえるわけです。

声門閉鎖とは、こういうことです。
 まず、日本語で「アッ」と発音してみてください。小さな「ッ」の部分は、ツと発音するわけではありません。アッ、の小さなツは、のどをキュッと閉めるという一種の符号なのです。
 日本語のアッの、小さなツが示すところのものを「声門閉鎖」といいます。
 中国語の母音を、前に子音をつけず、単独で発音する場合、必ずまず軽く声門閉鎖をしてから発音します。・・・中国語に「つまる音」はないのです。
 中国語の母音aは、便宜的にアルファベットのaと表記してありますが、英語のアとも日本語のアとも全然違います。中国語のaをしいて日本語のひらがなで表記すると、仮にもし「アッ」をひっくりかえして「ッアー」と表記したら、感じがでるでしょうか。

2-1 母音の総論および「声門閉鎖」について

動画で先生の説明もご覧になってください。

日本語の開(Kai)と 中国語の开(Kāi)は同じローマ字表記です。でも日本語で、開は「か/Kaい/i」で2拍・2音節で発声します。

中国語の开(Kāi)では子音が「K」、母音が「āi」で一つ!ですから、一音節になります。

また日本語の「開(Kai)」では母音優先ですから開(Ka・i)の口の形は母音「あ/a」から始まります。そして子音と一体化していますから、「あ」という母音の音だけが響いたりはしません。

しかし中国語の「开(Kāi)」では声門閉鎖が先で、子音の構えの「k(e)」(※ここは口の構えだけで音声にはしません)を作ってから、次に「ai」という複合母音で発音します。結果、複母音の「ai」は良く響いて後に残ります。

中国語の开(Kāi)の発音の流れをまとめてみます。

複合母音の発音の流れ

① 声門閉鎖
② 子音舌根音で「Ke」の構え。口と舌の構えだけで音声になっていない。
 この構えで、子音の「Ke」の息の出しかたによる子音のフォームを確認。
 
❸ 母音のフォームを「e」から、本来音声にする「āi」の複合母音に変え
 ます。 

この❸のStepが日本語の発声と違うポイントです! 

日本語では最初の母音「あ」は固定しています。
しかし中国語では子音で構えた母音は「e」から「āi」へ変化します。最初の「e」は構えただけで音にはなっていません。音になるのは複合母音の「āi」です。

④子音「K(e)」のフォームからゆっくり「āi」の複合母音へ母音へ変わりますが、このとき口の形は「ā」から「i」へ滑らかに切れ目なく発音することで、一つの母音として発音します。
 ※ 「ā」が声調の付いた主母音ですから、こちらを「i」よりも明瞭に発音します。

「Kai」のピンインの発音ですが、「k」の舌根音の子音の構え本来の「ke」を崩さずに、発音は始まりますから、この様(さま)を子音優先と表現しています。

この子音法の発音(子音優先の発音)では、「āi」という母音ははっきりと聞こえます。特に声調符号は a に振られていますから、「āi」は高い一声で音が残響のように残ります。

このように母音が残響のように残る発音が、中国語らしい発音ということになります。この子音法発音を図式にしてみました。

开と開の発音の違い

複母音ないし複合母音について

声門閉鎖が複合母音の存在する原因であり、また中国語では声門閉鎖が先にあるため母音が残響のように残ることも理解して頂けたと思います。そしてその母音の特性ゆえに、単母音が組み合わさった中国語ならではの複合母音が存在します。

日本では複合母音と言いますが、中国語では「复韵母」ですから複母音と言っています。

音節の構図

中国語の発音p23:日下恒夫著 アルク

日本で出版される中国語の本では、この介母を区別せずに、介母+韻母を一括りにして母音にしています。

a・o・e の韻母の中心母音 と 介音  i ・u・ ü の 6つが日本では基本母音と呼んでいます。この基本母音を二つで一つのように発音するために組み合わせたものを複母音と呼んでいます。

「子音法の発音で中国人が発音練習を行うときは、介音は別にして発音しています。

パンダの香はXiangの一声ですが、ee!chaiの講師にこの発音を、中国式子音法で発音してもらったとき、その講師も介音「i」は母音「ang」とは別に独立させて発音の確認をしていました。

複合母音の発音の仕方はこのようになります。

この「ピンイン教本」の内容の土台は明治大学の加藤徹先生の教え方が柱になっています。

加藤先生の複合母音の動画もどうぞご覧ください。大学での授業ならではの詳細に踏み込んだ複合母音の授業です。このような教え方を他に見たことがありません。

複合母音は「一つの音として単母音を切れ目なく発音する」その具体的な方法も示されています。なかなかイメージのつかみにくい複合母音ですが、虹の例えもあって、具体的な発音の仕方がつかめます。

主母音と複母音

この授業では、複合母音の発音で最も重要な「どの母音を強調して発音するのか?」のルールです。

どの母音を強調して発音するか?ですが主母音を強調します。どれが主母音になるか?ですが、下記のようなルールがあります。

a ・e・o が主母音になっています。

いみじくも李姉妹達も同じことを言っていました。

このことは声調符号をどの母音に付けるかということと同じことになります。そして複合母音で声調符号をつけるルールは以下のようになります。

これは前回の「教∸9」記述です。

原則はその音節の中で口の開け方が最も大きい母音の上に付けるそうです。そうしますと、優先順位は次のようになります。

1位↬ a  
2位 ↬ o 又は e  ( o と e は一音節では同時に現れない)
3位↬  i ・u (同時に表れたときは後ろの母音に付ける)

この優先順位を整理をすると、声調記号を付けるルールはこうなります。
そしてこの声調記号の振られた母音が主母音として強調して発音する母音になります。

❶ 音節の中に母音が一つの時は、母音の上に!                      ❷ 音節が二つ以上あるときは次のように 
 ‐⑴ 口の開け方の原則に従い "a"があるときは "a" の上に      
 ‐⑵  々          "a"がないときは "o" か "e" の上に  
❸  i と u  が同時に並んで表れたとき ( iu / ui ) は後ろの母音に付ける。

実際の発音の例はこの動画を参考になさってください。

複合母音に関してこの記事で、取り上げることのできそうなすべての内容を網羅しているのではないかという自負があります。

日本人にとって複合母音は未知の世界です。ピンインでもやもやすることの代表的な一つだったとも思います。

それでピンインマスターのポイントは以下のようになります。

パンダ老師

口の開け方の大きな a・o・e の主母音は、特にしっかりと大きな声で発音しよう!

ここまでで、母音発音の重要性に焦点を当ててきました。また子音優先の意味も理解していただけたと思います。

ここで再度、ピンインマスターのポイントゲートを確認してみましょう。Stepで1はまず「通じるために声調が重要」、Step2では「聞き取りやすく話すためには母音をはっきりと話すこと」でした。

子音優先は標準中国語を話すうえで重要でした。ここで、子音優先は話すさいに何に注意を払うか、子音のコツに焦点を当ててみたいと思います。

子音優先とは、「構え」を崩さないこと!

ここからは、次回の「ピンイン教本-11」をご覧ください。

パンダの「シャンシャン・香香」と杉山外務次官の苗字「杉山」を聞き間違えた華報道官の事件をとりあげました。

補足で無気音と有気音

日本語と似ていて、中国語では違う発声の仕方がこの無気音と有気音です。よく紙を口の前に垂らして、bo ・po と発声して紙があまり揺れなければ無気音、思いっきり吹き飛ばすくらい息を吐きながらpoと発声するのが有気音と教えられていると思います。

もちろん、その教え方は正しいし、実際の練習としても適切です。

コツをしっかり掌握できるように、別な切り口で補足の説明をさせて頂きます。説明というよりは紹介をさせて頂きますが正しいかと思います。いつもの加藤先生の動画です。

ポイントはまず皆さんも理解している、息が出るか出ないかの違いです。無気と有気という表現どおりですね。

加藤先生が有気音でもうひとつ加えているポイントがこの発声法ですね。

                                        poの発音

これはもう少し詳細説明を加えますと、まず子音pの口の構え(ポ)の唇+のどをこするホー(ここが息を出す箇所)、ここまでが子音の構えで、これに「オー」の母音の音を入れます。

つまり子音の構えでスタートし、母音で音を加えるという中国語特有の発声法ゆえに、生じる発音ということになります。

ですから構えに有気という息を加えて、最後に「o」の母音を加えるということですから、この点で日本人が意識すべきは「po」を見て、口の構えを日本語流の「ポ」で発音しますと日本語の撥音になってしまいます。

あえて中国語らしくするなら、息を出すことと「0」の母音を遅れ目に、語尾で発声するように意識すると、中国語の有気音らしくなります。

無気音の「bo」では息を押さえますから子音「b」と母音「o」にタイミングのずれが生じませんから、比較的日本語の「ボ」という濁音に近くなります。

なお余談ですが私は大学時代放送研究会で発声練習のトレーニングを行いました。マイクに息が入らないようにして文章を読むのですが、息を出さない方が音声はマイクにしっかり入るんですね。

それで複式呼吸の練習で大きく息を吸い込んで、「あー」と声を長く出し続ける練習をします。これが上手にできるようになりますと、息はほとんど出さずに声を出し続けられますから、長い文章も一気に息を使わずに、無理なく原稿を読み続けることができます。これって無気音の練習と同じだなと思いました。

そうしますと中国人アナウンサーは有気音をどのように発声するのかとおもいました。息を出せばマイクに息が入り耳障りです。母音の音を入れるタイミングを上手にずらすことで、有気音を発声しているのかなと考えたのですがどうでしょうか? お気づきの方がおられましたら、お教えください。