22.04.22の記録「不器用な芽かき」

最近、ベランダでじゃがいもを育てている。
無職でペットを飼う余裕はないが(加えてまだ新しい子をお迎えする精神状態ではない)、軽率に命に触れたく、ベランダで植物を育てることにし、先月から命を育てている。
パセリと、パセリと一緒に育てると良いハーブ(相乗効果のあるハーブをコンパニオンプランツと言うらしい。パセリがキュウリみたいな良い香りがするようになるコンパニオンプランツを育てているのだけれど、肝心の名前を忘れてしまった)、別の鉢でミントを育て、さらにじゃがいものを育てている。
じゃがいもはカルビーが出している、大きな袋の中で育てることができるものだ。プランター等を用意する必要はなく、別売の種芋を土の入った袋の中に埋めて完了。あとは水やりをして収穫を待つ。袋がポテチのそれと同じデザインで、SNSにてバズっており、購入した。
なぜじゃがいもなのか。それは実家で作っていたから。販売用ではなく家で食べる用のじゃがいもである。春になると種芋まきを手伝うことがあり、これが結構好きだった。種芋を半分に割り、腐らないよう灰をまぶし、耕した畝へ等間隔に並べる。あの作業工程が好きだった。また、ある程度ほったらかしにしても勝手にどうにかなる、のイメージもあったから。どちらかといえばこちらが本音である。
という訳でじゃがいもを育てている。で、最近、気にしていたのがじゃがいもの芽かきだ。
ざっくり言うと大きなじゃがいもを育てるため、種芋から伸びている芽の中から、より大きなものを残し、他は摘み取ってしまう、というものである。特に食べることを目的とした野菜を育てるには、必要な工程だ。
これをまぁ、やらなきゃと思いつつ後回しにしていた。理由は簡単。土を掘り返すのが面倒だからである。本当に面倒。畑での作業ならば土に塗れても全く問題ないしむしろその為に畑にいるのだ、という気になってくるが、それがベランダになると、絶対に土を溢したくないの一点でかなり億劫になる。
それを今日、ようやく、土から出てきた5つの芽が力強さをましてきたときに、芽かきを実行した。
なんとなく(やるか)と思い、勢いで始めた。種芋は地中の深くになるので掘り返さなければならない。勢いで始めたので計画はない。とりあえず大きなビニール袋を広げ、その上に芋の袋をひっくり返した。と、そのとき、見事に土はビニール袋の外へと飛んで行き、ベランダの一部にこんもりと土が溢れた。畜生が。実家が農家なので、こういうことがあるとすぐ畜生がと言ってしまう。こうなるならやはりやらなければ良かった。しかも無計画で始めたので、ひっくり返したら芽が数本折れてしまった。畜生が。もっとどの個体を残すか吟味したかったのに、こいつでいくしか無くなってしまった。畜生が。畜生が、の波に溺れながらなんとか土とじゃがいもを袋に戻し、芽かきを終えた。
それを乗り越えると、こうなったらついでにやるか、と溢れた土の片付けと兼ねて長らく放置していたベランダの掃き掃除もやった。以前の私なら絶対に放置していた土だ(放置するな)。しかもそれだけではない。ベランダを掃いたほうきを持って、ついでにと長らく放置していた玄関先の掃き掃除もした。向かいのお宅の玄関前がきれいなのを見るたびに、(共用部分といえどうちも掃除しなければ……)と気にするだけ気にして階段を降りたらすぐ忘れるようなことだったのが、きれいになった。
迷ってる暇があったら行動、だよナ……と大したことはやってないのだが、とっても満足の気持ちになった。それもこれも芽かきをしたからである。不器用ですから、土は溢れてしまったのだけれど、結果オーライだ。ありがとう、芽かきを決めた私。未来の私へ。できれば定期的にベランダと玄関先は掃除するように。

茨城県水戸市内で活動する演劇ユニットこれっきりに所属し演劇をしています。