2020年センター追試倫理 第一問 解説

はじめまして。かいとの公民垢です。

今回はセンター試験2020年倫理追試験の解説を行います。完全初見で解き、新鮮な気持ちで解説を作りたい&自分が解き慣れた形式が良いという理由から、共通テストではなくこちらを選択しました。解説の準備運動ということで、拙い箇所も多いかと思いますが、ご容赦ください。

問題は以下の大学入試センターより引用させていただきます。

令和2年度追・再試験の問題|大学入試センター (dnc.ac.jp)

また、解説と併記して解答を載せているため、自力で解いてから見たい!という方は上記URLより問題をダウンロードしていただけたらと思います。



解説


全体的な印象として、従来の第一問よりも現代思想的な内容が散見された。これまでの現代社会・時事問題要素よりも、デリダやジェームズ、ボーヴォワールのような哲学者の細やかな知識を求められているように思う。


以下解答&解説です!

解答を観たくない方はご注意ください!!!


問1.正解②(ア.正、イ.誤)

ア、イともに「真理の有用性」に対する理解を問う問題。
ジェームズは真理は有用性を持つか否かで判断されるという立場をとり、真理は相対的なものであるとする。アは真理の有用性に対するイメージがあれば〇にできる。イもアが正解であることを踏まえれば×と判断できる。易問

問2.正解①

文章を丁寧に読む必要のある読解問題。こうした問題は当日は後回しにするのが良い(但しマークミスに注意)。そして①を正解と判断するよりは、消去法で解く方が楽である。まず、②から。これは見方を変える=借り物でない=生きがいが生まれるという論旨に対して、見方を変えることが借り物であり生きがいを生まないという文章になっているため誤り。③は心の構造を変えることで生きがいを生まないという趣旨の文章でないため誤り。④は白紙の状態で受け入れないと生きがいは生まれないと書かれており、白紙の状態で受け入れるのではなく選び取るという文章に反する。①は主体的に選び取る、必然性をもって受け入れられる、生きがい、というすべての要件を満たすため正解となる。

問3.略

問4.正解②

知識問題。心理、現代思想、経済史といった様々な分野から出題されているため、少し難しく感じるかもしれない。
①はフロイトの防衛機制の一つ、昇華を挙げている。他にも怪しげな内容が書かれており明らかに誤り。②は「女に生まれるのではなく女になる」と述べた『第二の性』を踏まえての内容である。保留にしても良い。③は教職教養では頻出のペスタロッチだが、受験生にとって馴染みは薄いだろう。ステレオタイプ=リップマンでは?と想起できれば誤りと判断できる。④もウェッブ夫妻=社会主義団体フェビアン協会と気づければ誤りであると判断できる。そうして保留にしていた②が正解である。

問5.正解④

教職教養では頻出だが、これまた受験生には悩ましいであろう問題。
最初に、①を見て類型論なのに類型に属さなくても判断できるの?と疑問を持ってほしい。これは特性論の内容である。②は他者との違いを明確にできないのはむしろ類型論では?と気づければ誤りと判断できる。③は体型と性格を結びつけているのでクレッチマーだと判断できる。ちなみに大学の心理学レベルなら体型と性格を結びつけた類型論にシェルドンがいることも覚えておきたいが、受験生であればそこまで覚える必要はない。

問6.正解④

デリダ=「脱構築」と想起し、二項対立の分解を指すことを知っていれば④と選択できる。特に捻りはないが、注目しておきたいのはベルグソンの「愛の跳躍」が出題されていること。あまり有名ではないが、一橋大学2021年の倫理で出題されている。しかも時系列的にはこちらが初出となる。さらに、用語集や資料集では「生命の躍動(跳躍)」と出てきており、愛の躍動はググっても出てこないのである。間違い選択肢なのでさほど問題はないが、もしこれが正解の肢だとすると怖ろしいことになる……(ちなみに2022年茨城県教員採用試験にも出題されている)

問7.正解①(A=ア、B=ウ)

ホスピスはドラマなどでもしばしば登場するのでAに入るのはアと類推できる受験生は多いだろう。さらに、緩和ケアの例としてホスピスが挙げられているのに、最期まで諦めるな!という内容というのは国語的に考えにくい。また、Bも積極的安楽死という語句があるのに、エの延命措置を中止があてはまるとは考えにくい。よって①。センター倫理は国語力の(というよりも勘の鋭い?)生徒にとっては知識0でも解けるような問題がある……というよりも3~4割を占めている。逆に知識だけでは高得点を取ることは難しい。なかなか怖ろしい科目である。

問8.正解③

文化に関する知識問題。①はカウンターカルチャーがヒッピーのような対抗文化であることを知っていれば誤りと気づける。②は自文化中心主義=エスノセントリズムの説明で、文化相対主義はその対義語。③は一般的に言われるグローバル化の定義にあてはまるので正解。④は同化主義が進められている、というところで誤りとなる。

問9.正解③

こうした「適当でないもの」を選ぶ場合は、明確に「誤り」を見つければ、その選択肢が答えになる。問題をざーっと眺めると、地球サミットとラムサール条約と宇宙船地球号が併存している③の選択肢に、何となく違和感を持ったのではないだろうか。宇宙船地球号は1960年代。地球サミットは1992でラムサール条約は1971である。よって③が正解となる。

問10.正解②

これも読解問題である。④から見ていこう。生きる意味は客観的に決まるというのが明らかに誤り。本文4回目のAさんの発言で「生きる意味って、客観的に一つに決まるものじゃないんだね」とある。③は、年老いたとき、社会的な活動に生きがいを見出してはいけないという内容も誤り。そもそも、本文ではそのような過激な内容は書かれていない。②を保留にしたうえで、①が「仕事や社会的な活動の中にこそ、本当の生きがいや幸せがある」という点で誤り。本文ではさまざまな生きがいを提唱している。よって②が正解。読解問題としても解けるが、改めて全体を俯瞰すると、「生きる意味」に対する相対主義であったり、「生きがい」に対する有用性であったりと、第一問全体に、プラグマティズムや文化相対主義、特性論といった相対的・主観的な考え方が通底している。こうした考え方は実存主義にも繋がってくるが、今回は青年分野なので出題がないのも当然といえば当然か。

ここまで読んでいただきありがとうございます!!

長々と書いていきましたが、いかがでしょうか。
次回以降は更なる改善をした上で投稿していきます!

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