子どもプログラミング教室の講師に実務経験者がほぼいない理由
1.子どもプログラミング教室には実務経験者の講師がほとんどいない
私は自分の教室を開く前に、様々な子どもプログラミング教室でどんなレッスンを扱っているのかやどんな講師が授業をしているのかをかなり念入りにリサーチしていました。実際に教室で働きもしてそこで知ったのは、子どもプログラミング教室ってあんまりプログラミングに詳しくない人が講師であることがほとんどだということです。「えっ、そんな感じなの…?」って思いましたが、よくよく考えるとそりゃそうだよねっていう考察が今回のテーマです。
2.子どもプログラミング教室の講師ってどんな人?(①~④)
①大学生・専門学生
最も多いのが学生バイトです。学習塾なんかもそうですが、あまり高額ではない子ども向けの教室は、利益の上限が低いので大学生のバイトに頼らないと回らない現状があります。情報系の大学生・専門学生であることが多いです。
②学習塾の先生
近年のプログラミングブームで、自分の学習塾にプログラミング講座を設けたり、学習塾を子どもプログラミング教室に転換したりするところが多いです。もちろん先生たちはプログラミングをこれまでやったことがありません。
③プログラミング未経験の社会人の先生
「実務経験あり」と打ち出している講師にありがちです。情報系に含まれる会社で働いた経験があれば名乗れるようです。私が働いた子どもプログラミング教室でも、新しく入った方で「実務経験あり」と打ち出されていましたが、正直プログラミングは初めてという方でした。(熱心に教室の教材を勉強されていましたが…)
④実務経験者
最も少ないです。一から開業された人に多いです。実際に正社員で雇用され開発業務に携わった経験がある人は、ちゃんと経歴や経験を公開していますがあまり見受けられません。ありがちなのは「現役プログラマー」で打ち出している人=フリーで案件を受けている状況の人。未経験者でも、あまりプログラミングに関係のない小さな案件はできますし、案件受付中の人でも「現役プログラマー」と名乗ることができます。
3.なぜプログラミングをほとんどやったことない講師ばかりが授業をしているの?
先ほどのとおり、子どもプログラミング教室の講師には実務未経験者がほとんどということでした。
それではなぜ、プログラミング未経験者の講師ばかりがプログラミングの授業をしているかについて考えます。
【理由①】ビジュアルプログラミングの授業であればハードルが低い
ビジュアルプログラミングは、キャラクターやブロックや音を組み合わせて画面上でゲームなどを作るものです。「マイクラ」「スクラッチ」などが有名です。
反対にテキストプログラミングは、単語や数字や構文など、黒い画面上に打ち込んでプログラムを作るものです。
☆ビジュアルプログラミングには教える側に次のようなメリットがあります。
・子ども用なので大人が理解するのはとても簡単
⇒条件・ループ・変数などの基本的なことが分かれば、あとはマウスで直感的に操作できます。未経験の先生でも短期間で習得できます。
・教材を用意してくれるサービスが豊富にある
⇒教室向けに月額でそのまま使える教材を提供しているサービスがたくさんあります。
・エラー解決に専門知識は必要ない
⇒そのソフトの中でのプログラミングなので何が起きても安心。エラーでプログラムが完全に止まるなどなく、直感的に処理の修正を行えます。
・子どもが楽しく学ぶために大きな工夫は必要ない
⇒画面のキャラクターを簡単に動かしたり音を出したり、楽しめるように作られています。自作ゲームもかんたんに作ることができます。
つまり、プログラミングをやったことのない先生でも始めるハードルが低いんですね。子どもプログラミング教室のほとんどが「マインクラフト」「スクラッチ」でゲームを作る教室なのはそのためです。
【理由②】テキストプログラミングの授業はハードルが高い
(これはテキストプログラミングの授業をする講師が少ない理由になります。)
テキストプログラミングは、単語や数字や構文など、黒い画面上に打ち込んでHP・アプリ・AI・処理プログラムなど、実際の問題を解決するサービスを作るものです。
☆テキストプログラミングには教える側に次のようなデメリットがあります。
・技術や知識を身に着けるのに膨大な時間がかかる
⇒実際のプログラミングの学習は、地道で習得に時間のかかるものです。学べる言語の種類もたくさんあります。
・教材を用意してくれるサービスが少ない
⇒講師や生徒が使える教材を開発するのはビジュアルプログラミングに比べて多くの課題があります。自分で用意するのもとても大変です。(私は数年かけて作成しました。現在も作成中です。)
・エラー解決に専門的な知識が必要
⇒テキストプログラミングは1文字間違えただけで完全に停止してしまいます。構文ミス、バージョンアップによる仕様変更…etcなどへの対応力は一朝一夕ではありません。
・子どもが楽しく学ぶために工夫が必要
⇒楽しいゲームをパッと作れるものではなくエラーも起きるので、地道な学習と忍耐力が必要です。楽しく学べるためには発問や課題に工夫が必要となります。
つまりテキストプログラミングを教えるというのは、年単位の経験と知識がないと難しいです。
最近ではテキストプログラミング用の教材も開発されてきているようですが、エラー解決の困難さなどから、今後もおそらくほとんどが専用のソフトの中でのプログラミングとなります。本物のプログラミングを学ぶようで、結局、疑似的な学習の域を出ないでしょう。
【理由③】現役プログラマーは子どもプログラミング教室をやりたがらない
そもそもの話になってしまいますが、プログラマーの多くは子どもに技術を教える仕事をやりたがらないと思います。実際に働いたり交流した中で身の回りのプログラマーに次のような特性が少なくないと考えます。
(※あくまで私個人の主観であり、実際にいろんな方がいらっしゃいます。)
・他人より自分に集中したい
⇒もくもくと自分に集中するのが好きな人です。中には極端にコミュニケーションがとりづらい人も何人かいました。忍耐強く子どもに教えるのに向かないでしょう。
・技術に対する資産思考
⇒プログラマーにとって、プログラミング技術やIT知識などは長い時間と労力をかけて得た自分の市場価値を決める大切な資産です。積極的にそれらの知識を共有される方もいますが、中にはそうでない人もいるでしょう。
・特定の技術に特化している
会社や業務によって、ある技術に特化することは少なくありません。例えばデータベース知識だけは誰にも負けないとしても、子どもプログラミング教室で教えるのには向きません。子どもに教えるため、まんべんなく広く学びを進める人は少ないでしょう。
4.まとめ
少し注意してざっと周りを見渡してみると、ちゃんとした講師、ちゃんと工夫した学び(フランチャイズや教材のアウトソーシングではない)を提供できる教室はほとんどないです。
私自身はもともとプログラミング教育に関する仕事を目標にしており、業務の経験を積み、教材を一から作り、教室を開きました。すべての教室が同じようにすべきとは思いませんが、もし自分が学ぶのだとしたら、自分の将来に影響しますし、ちゃんと技術力があってサポート力もある先生についてほしいし、安全な専用ソフトで画一的なプログラミングを学びたいとは思わないです。
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