見出し画像

今、改めて『1Q84』

発売された当初に読んで、あんまり好きになれなくて、そのままにしてあった『1Q84』。

小学四年生の時に同級生だった、一人の男の子と女の子が、全く別の人生を歩みつつも、大人になり、超自然的に引き寄せ合う物語。

今、この記事を書くにあたって、さらっとレビューを見たのですが「面白かった」という人が思ったより多くて、実はびっくりしています。

というのも、発売当初に読んだ時、オウム真理教やその他の新興宗教を彷彿とさせる不気味さの中に、全編にわたってかなり暴力的で、歪んだ性行為の描写も多く、全然面白いと思えなかった記憶があって。そのまま読み返すこともなかったのですが、なんの脈絡もなく、「今また読んだら違う感じ方ができるのかも」と突然感じて、手に取ったのが今回。

実際に、前回と違う感じ方ができたかはわかりませんが…人倫にもとる行為の中にある正義に対して、多角的な視点を持つ作品で、現実世界の歪みを引き摺り込んだような小説だなと思いました。

自分のことを正義と思って疑わない人が、一番危ない。

常々そう思っているし、そうならないように気をつけているつもりなのですが、今この本が読みたくなったということは、ひょっとして、片足(あるいは両足)を「自分が正義」に突っ込みかけているのかもしれません。そういう意味で、警笛的に、また何年後かに、きっと読み返すんだろうなと思います。

余談ですが、単行本の装丁より文庫本の装丁の方が好みということは珍しいのですが、文庫版のヒエロニムス・ボスの絵は作品の雰囲気にすごくあっているように感じます。


よりたくさんの良書をお伝えできるように、頑張ります!