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息子、初めて飛行機に乗る。なかなか飛び立てない私~ふくおか日記①

機内のベルト着用サインが消えた。
福岡から成田に向かう飛行機が離陸するとすぐに息子は寝てしまった。
首をぐねっと変な方向に曲げてるのが気になってなんとか楽な姿勢にならないものかと色々試すのだけど、良い方法が見つからない。
結局頭を支え続けることに。
行きの飛行機でも息子のために窓側の席を取ったけど、帰りは必要なかったか?

私だって相当眠いんですけど!
いや、私の方が疲れてるって、絶対。


出発前、目が!目がぁ!

福岡のおばのところへ遊びに行くことになった。期間は3週間。
私一人ならリュック一つで新幹線なり飛行機なり飛び乗れば良いのだけれど、子供を連れてとなるとそうもいかない。
出発前に片付けておかないといけないことが沢山ある。
通院中の小児科へ薬を多めにもらいに行くとかリスケが必要な予定も結構あるし、事前に送る荷物もある。都知事選の期日前投票にも行かなければ。
投票する気が失せる顔ぶれだが(どいつもこいつも)、仕方ない。
そうして慌ただしく過ごしていた出発の前々日、突然目が真っ赤に腫れ上がった!
しかも両目。
涙が止まらないし、痛いし痒い。かなり酷いぞこれは。
流石に眼科に行かねばなるまい。
そう思っていくつか予定をキャンセルして行った眼科では、
人に感染るタイプの結膜炎かもしれないということで、隔離室へ通された。
涙が止まらない私に医師が指先でつまんだティッシュを(ひらひら)遠巻きに渡してくれた。
「両目同時に?」と医者。
はい、同時にと答えると
「珍しいわね。だいたい片方ずつなんだけどね。まあ、いいや。また来週みせに来てくれる?」
いやいや、週末には福岡なのだ。
「東京を離れるので来週は来れないんです」と言うと、抗菌薬を多めにくれた。
「よくならなかったら向こうで診てもらってね」

はぁ、明後日にはよくなっててくれ、、、



当日は遅めの便にしたけれども、

子供を連れての移動は本当に大変。時間がかかってかかってしょうがない。
喉乾いた、お腹すいた、おしっこ、おしっこ漏れちゃった。その度に右往左往することになる。
朝パッキングした荷物が大変に重いのにも理由があって、前日にいただいたメロンがスーツケースに収まっているからだ。
毎年某所からいただくメロンがほんとに甘くて瑞々しくていつも楽しみなのだけど、今回はタイミングが良いのか悪いのかわからない。
持ってく?
入るか?
でもなぁ、3週間も置いとけないし‥
一頻り考えた結果持っていくことにした。
立派な大玉のメロンを‥。

息子とメロンの手を引いて成田へ向かった。
(やっぱ羽田発にすればよかった?)

頼むよ。
走るな。



つ、着いたよ、、ふくおか。

福岡に着いたのは夕方の五時半。
そこから荷物を受け取って六時。
おばが迎えに来てくれていたので息子は任せてスーツケースと手荷物を担いで歩く。

おば「なんでそんなに重いのよ」
私「いや、メロンが…」
おば「なんでメロンなんか入ってんのよ」

おっしゃる通りです。

夕飯はもう外食にしてしまおうとなって息子に何が食べたいか聞くと、

「お皿のやつね!お皿入れるやつね!」

はいはい、くら寿司ね。びっくらポン!ね。

まあでも、ひとまず福岡までは来れた、よかった。
目もだいぶ治ってきたし、点眼続けてれば大丈夫でしょう。
息子もさすがにお腹が減っていたようで、瞬く間に皿を積み上げていく。
しかもこの時くら寿司は「Adoコラボ」開催中で、Adoキーホルダーを手にした息子は今すぐにリュックに付けてくれとうるさい。
(家帰ってからにして)

Adoホルダー

お腹を満たし、熱いお茶も飲んで人心地ついた。
今日は寝よう。一刻も早く。

けれどこの時、ある違和感を感じていたのも事実です。
気づかない振りをしていただけで。



なんだこりゃああ!! 顔が!顔がぁ!

深夜、深い眠りを揺り起こすような不快感に目が覚めた。
(え、なに。)
体を起こそうとすると顔面に激痛が!

痛っっってぇぇぇぇぇ!!!

訳も分からず洗面所へ這っていき鏡を恐る恐る覗いてみると、
そこには四角い顔の女が死んだ目をしてこちらを覗いているではないか!
(ひぃぃ…!)
正確に言うと顔面左側、こめかみの下から耳の後ろ、首にかけて大きな瘤が膨れ上がっていた。
そのために顔の輪郭線が消えて四角く見えていたのです。
(なにこれ泣)

ああ、きっとこれはリンパが腫れているんだろうな。
そのくらいの事はわかりますよ、私だって。
ほんでどうすんのよ。
ひとまず朝まで耐えて、朝一病院に行くしかない。
ない。
けど。


痛い。



痛みが頭の方まで広がって、眩暈がする。
痛み止め飲むか?
あーでも持ってきてない。

普通に考えればおばを起こして痛み止めの一つでも出してもらえばいい話なのだが、激痛のさなかでも起こすわけにいかない理由があったのだ。

というのも昔からおばは「痛みに強い」マウントをする人なので、私が痛いとか具合悪いと言うと
「まったく、難儀な人ね~。あっちが痛いこっちが痛いとか」と言うに決まってます。
まじで痛いのにダルすぎます。


ううぅ、 耐えれるか?
いや、無理かも、、

しかし私は思い出したのでした。
念のために持ってきた息子の解熱剤のことを。
暗闇でゴソゴソとスーツケースをあさり、息子の解熱剤を取り出した私。

17kgの息子が一包飲むのだから、えーと、えーとー、、
ひ、ひとまず2包飲もう。足りなければもう一つ。

粉薬を余さず飲み干し布団に潜り込み、祈るように目を閉じると、
そのまま朝まで眠ることができた。



土砂降りの中、耳鼻科へ 福岡のおじいちゃん先生に診てもらう

次の日は生憎の雨、どころではなく、大雨警報が出ていた。
おばは私の顔を見て、「これでもしとき!」と言って保冷剤をぐりぐりぐりと押し当ててくる。

「痛いたいたいたいたいたいたい!!!!」

「大袈裟やなぁ」

大丈夫。病院に行って薬さえ貰えれば、なんとかなるさ。
目は良くなったんだし。
とにかく一刻も早く診てもらいたい。

Googleマップをたよりにたどり着いたそこは、
新しくはないけれどスッキリときれいで受付のおばちゃんも親切そうな町の医院で、大雨のために患者さんは私以外おらずすぐに診察室へ通してもらえた。

「あんた東京の人?大雨ば降っとうのにどげん、ああぁ…」
目を上げたおじいちゃん先生が
「これは痛かねぇ」と患部を触りながら
「ね。ちょっとひどかね」
と横にいる二人の看護師さんに話を振ると彼女たちも(ええ、ええ。痛そうです)といった目で小さくうなずいた。

私「昨日の夜にちょっと首が痛いかもと思ってたら夜中に痛くて目が覚めまして。(息子の)鎮痛剤でなんとかしのいで…」

うんうんと大きく頷くとおじいちゃん先生は
「薬ば三日分出しときますけん。これでよーなると思います。福岡はまだ」

「いますいます」

「なにかあったらいつでも来てください」(ニコッ)

お礼を言って医院を後にすると、なんだか半分治ったような気になった。
ほら、ねぇ!痛いんだって!
その気持ちを分かってもらえただけで、不思議と楽になった。
結局この後薬が効いて、三日後には完治した。


息子にとっては初めての旅行らしい旅行

今までも日帰りの旅や、パパのいる京都へ遊びに行くことはあったけど、息子にとっては飛行機に乗るような旅は今回が初めて。

私も九州は2回目、高校の修学旅行以来(あんま覚えてない)だから、行ってみたい場所もいくつかある。
リンパ腫らしてる場合ではないのだ。

息子は飛行機をおおいに楽しみ、おばあちゃんにわがままを言い、自分を大開放させている。
スーパーマリオのようにぴょんぴょん跳ねて、なんでも遊んでやる!と言う気概を感じる。

子供時代を子供らしい子供で過ごせるというのは、本当に大事なことだとなんだろう、と思う。
たとえその時のことをほとんど忘れてしまったとしても。

ありのままという言葉はあまり好まないけれど、子供に限って言えば、ありのままでいながら両腕で受け入れらることが必要なんだろう。
痛みに共感してもらえただけで、大人でも楽になるんだ。
自分が嬉しかったこと、悲しかったこと、心地よく眠ったり、時に痛かったりすること、それらを受け止めてもらえたら、記憶としては忘れてしまっても、意識のずっと底の方に温かいものが流れていくに違いない。

子供時代は、
幸福である方が絶対にいいし、そうあるべきだ、と思う。


子供を笑かすなんて本当はそう難しいことではないはずなんだけれど、それができない時もある。
特に自分の体調が悪いときなんかは。
けど今回は、とにかくおばあちゃんを活用してくれ!!

ママは黒子に徹します。

(ようやく私も旅立てたような気がする)


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