「広報」の属人化が加速しそう
今日もリハビリ記事執筆です。参加したオンラインセミナーはこちら。
緊急事態宣言が4月に出されたこともあり、広報初心者なのに会社初のオンライン広報という人もいる様子。広報初心者としての心構えなども含みながら、これからの広報についてスピーカーそれぞれが考えや経験を話しました。
私はトラブルがあって参加するのが遅くなってしまい、谷川耕一さんの話し始めをちょっと聞き逃し。ちなみに、記者時代には私もIT系で活動していたので、谷川さんは会見場でよく見た顔です(※1)。
やっぱりオンライン会議は違和感
谷川さんはオンライン説明会での事例やちょっとした困りごとなどを紹介し、「まずはやってみることが大事」と話していました。萎縮してもしょうがないですからね。
興味深かったのは、「デジタルの時代だからこそ、記者とのウェットな関係性を」というメッセージ。私も何度かオンライン会議で取材したことがあり、「そうかも知れない」と思いました。
ビデオ会議って対面と違って、まず目線が合わないんですよ。通信のラグもあったりして、微妙に会話のリレーがしづらい。一方的にどちらかが話しているのを聞くならいいのですが、会話となるとキャスターと中継先との会話のようにどうもぎこちなくなります。共有する資料がないなら、私は電話の方が楽です。
あと、オンライン説明会などデジタルコンテンツは気軽に配信したり酸化したりと拡散性が高く使えるのですが、リアル会見のようなコミュニケーション性が薄れます。その低下する分を補う程度に、コミュニケーションの質は濃度を高くしたほうが記者としても安心です。
採用やマーケティング用のコンテンツであれば大きく集客して、関心を持ってもらえそうな人に個別対応します。相手が記者の場合は最初から「関心を持ってもらう相手」なので、最初から密なコミュニケーションを心がけるぐらいが良いのかもしれません。
それは(リアル会見でも)そうして
2人目のスピーカーは、ウォンツアンドバリューでトップ広報プレゼンコンサルタントをされている永井千佳さん。リアル会見とオンライン会見(説明会)を比較しながらアドバイスをしてくれました。
ただ、その内容というのは記者からすると「あるある」ネタです。永井さんは「リアルだから許されていた」と表現していましたが、もう少し具体的に言うと「仕事だから我慢していた」が正解な気がします。普通に記者向けプレゼンとしても「そうしてほしいなぁ」という内容がたくさんありました。
例えば、会見のはじめに会社紹介をしてしまうというもの。記者はある程度会社のことを知った上で来ているので、記者向けの会見で社長が会社の歴史を語りだした日には、配布資料に目を通しながら耳からの情報をシャットアウトです。早く本題に入ってほしい。
「時間は最短で」というのも同様です。1時間の会見は、だいたい文字にすると1万5000~2万字ぐらい話しています。では記事はというと、新聞の短報レベルだったら800文字ほど。もっと短い場合もあります。
関係者からの当たり障りない「おめでとうございます」といった挨拶や、なんだかカッコいいけど何が言いたいのか分からない動画も、見向きもせずに配布資料を並べて質問や記事の切り口を考えていたりします。
リアル会見の場合、「来てしまった以上、もったいないから記事を書く」という場合があります。が、オンライン説明会だと気軽に参加できる分、「面白くなさそうだからパス」と次のオンライン説明会に移動してしまうなんてこともあるかもしれません。たしかに、これまで”許されていた”ような振る舞いをオンラインで続けるのは、よくないかもしれません。
永井さんはスライド資料についても言及。画面共有で観る資料では、細かい文字や図は見ずらいので、シンプルで分かりやすい表現をアドバイスしていました。参考としてソフトバンクグループの決算プレゼンを紹介。いわゆる前田鎌利メソッドですね。
60人オンラインアポ打診の衝撃
最後のスピーカーは、パソナ JOB HUB 広報マネージャーの森真紀さんです。4月からご自身がされた広報活動の具体例をいくつか紹介してくれました。
その内容も「やり手広報」を感じさせる工夫や心配りにあふれていたのですが、何より驚いたのがその行動量。オンラインで記者と話す「オンラインアポ」をしようと60人の記者に打診し、30人と面談にこぎつけたというのです。いくつか具体的に記事になった事例も紹介されていました。
多分に記者側も取材できずに時間が空いていたというのもあるとは思います。とはいえ、オンラインの方が気軽に面談できるというのは今後も変わらない事実。私の身近でも、リモート主体になってから社外の人に向かって「1時間後ちょっと話せますか」と会議をする人が出てきています。
オンラインアポならではの工夫としては、例えばバーチャル背景の設定です。記者の好みや世代、関心などをSNSなどで事前に調べておき、アニメや昔流行ったテレビ番組を連想させるような背景に設定してアイスブレークのネタにしているのだとか。
確かに、リアル面談の時は受付から会議室までの案内がアイスブレークの重要なシーンでしたからね。オンライン会議だとそれがないので、バーチャル背景を使うのはよい手です。
ほかにも、気軽に雑談混じりに話してみて記者の関心を引き出せた話なども紹介していました。地方の支局に異動になった新聞記者とも話ができたり、後任の記者を紹介してもらえたりなどもあったとか。確かに、上海にいる記者がリモートで恵比寿の飲食店について取材して記事書いたりする時節。オンラインなら距離関係なくアポ取れますものね。
オンラインアポの取り組みは、会社の媒体でも記事化して紹介しているとのこと。アポも取って、記事化されて、セミナーのネタにもなって、自社メディアにも掲載される。おいしい・・・。
オンラインも使って行きたい
緊急事態宣言の解除が発表され、これからリアルでの経済活動が再開しだします。とはいえ、この「オンラインのみ」で得られた経験は、色々と有益だったのではないでしょうか。
個人的には、「会話」が主体な取材は今後もオンライン化が進んでほしいと思っています。例えば、年1回ぐらい写真撮影してあとはオンラインで済ませれば、海外に居たって定期的に聞き書きの寄稿をしたり、定期インタビューが作れたりします。
隙間時間に打ち合わせもしやすいので、フリーライターと広報担当者がオンラインで企画を練り、メディアに寄稿を提案するなんてこともできるかもやりやすくなるでしょう。
これからリモートワークが普及して、地方で活動する人も増えてくるかもしれません。広報もライターも、配信や収録といったスキルが必要になるでしょう。
そうなると、もともと個人技によって差が大きかった広報対応が、一層属人化するかもしれません。ほんと、広報スキルって業界や人によって全然違いますからね。
さぁて、私も自宅に簡易スタジオ作ろうかなぁ。
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※1:私は人見知りな引きこもり系記者なので、会見場でお声がけなどはしておらず。一方的に知っているだけかも。
※2:ここ17年ほどテレビ無し生活なので、最近も新しい情報がテレビから発信されているのか知らないのだけど。
※3:駅のホーム内とか会社の内部などに勝手に入って撮影した写真は記事にも使えません。
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