RIP プロ冒険家/夢を追う男 阿部雅龍
大切な友人のあべちゃんが3月27日に亡くなった。
「彼はもういない」という事実は受け入れ難く、まだ信じられない。
すごい笑顔でニコニコしながら壮絶な冒険の話をするあべちゃんから新しい冒険の話を聞けないと思うと、何だか大きなものを失った感じがするここ数週間、本当にツラかった。
多田さんが40で亡くなり、あべちゃんも41で亡くなった。僕も今年41だ。
あれだけ屈強でストイックで健康を意識していたあべちゃんでも病気で亡くなるという現実を目の当たりにし、一気に「死」が身近なものになった。
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あべちゃんは、Teach For Japan を創業当時から応援してくれていた。最初は本当に熱い手紙が送られてきて、そこから何度も互いに夢を語り合い、互いの夢を応援してきた。
冒険先からもいつもハガキを送ってくれた。その度に、「あべちゃん、やってんなー。俺も頑張らないとな」という気持ちになった。あべちゃんはこれまで冒険で何度かリアルに死にかけている。アマゾン川を下っている時にマラリアになったり、白くまに遭遇したり、氷河を横断中に氷河が割れて、そのまま凍える海に落ち、緊急搬送もされている。それでもあべちゃんは冒険を続けた。
大事な友人の死、そして「何のために僕は生きているんだろうか」という問いに真剣に向き合ってしまい、精神的に非常に厳しい数週間だった。そんな中、先月は出張でベイエリアに。G1シリコンバレーに参加したわけだが、併せてスタンフォード大学で友人たちとキャッチアップした。15年前のハーバードの学友やベイエリアで挑戦し続けている起業家の親友と語り合い、気候変動問題に取り組む後輩からもエネルギーをもらった。
Stanford GSBのキャンパスは本当にすごい。僕もいくつものキャンパスに足を運んでいるが、GSBのキャンパスはやっぱり別格なのだ。足を踏み入れた瞬間に感じるエネルギー。もはや僕にとってのパワースポットだ。
翌日は、誰もいない土曜の朝の静かなキャンパスで自分と向き合うこととした。GSBを卒業してから6年になるが、僕は歩みを緩めていないだろうか?41で僕の身体に何かがあったら後悔しないだろうか?僕は何のために生きているんだろうか?17年前に出願書類で書いたハーバードのPersonal Statement と8年前に書いたスタンフォードの「What matters most to you and why?」エッセイに目を通しながら、自分の使命と改めて向き合った。
「何も変わっていない」
当時、エッセイに書いていた内容と今の考えが全く変わっていないのだ。僕は一途に自分の夢を追い続けているのだ。ただ、スピードは加速していかないといけない、という危機感は芽生えた。いろんな考えがあって良いと思うが、僕は僕で引き続きがむしゃらに、死に物狂いで教育事業をつくっていこうと、スタンフォード大学のキャンパスで誓った。
僕はこのままじゃ絶対に死ねない。ギアを入れ替えて、さらに加速していかないといけない。インパクトのある事業を作り続けなければいけないし、自分が考える理想の教育を早く形にして世の中に届けていかなければいけない。
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あべちゃんとはいくつかの約束を果たせずに、あべちゃんは逝ってしまった。
「一緒にリアルな冒険しようぜ」
「一緒に学校創ろうぜ」
壮大な南極単独歩行を白瀬ルートでの横断を実現するために、トレーニングを重ねていた矢先に脳の腫が見つかり、その後、闘病の末、亡くなった。
くそ悔しかっただろうな。
あべちゃんの無念はどうにもできないが、少なくとも二人で約束した冒険は僕が引き継いで絶対に形にしていきたいと思う。
プロ冒険家/夢を追う男 阿部雅龍
天国で冒険を続けてっかな。
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