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Valentine D.C.35周年LIVEに想う、俺達の良き“音楽時代”

2024年2月10日、高田馬場CLUB PHASEでValentine D.C.の35周年記念ライブが行われた。
筆者にしてみれば、最初は「あ、Valentineがまたバレンタインデー近辺にワンマンをやる! 嬉しいな! 絶対行かなければ!」くらいの気持ちでスケジュールに書き込んでいたのだが、蓋を開けてみたら35周年記念ライブだったのである。
結成35周年。
その長さに気が遠くなりそうになる。
それでも妙な「重さ」は感じさせず、今なお青春を謳歌しているがごとく笑顔でステージに立つ4人を見て、自分なりにこの35年に思いを馳せてみた。

Ken-ichi(Vo)の詞や歌には、自分も一緒に生きてきたなぁという共感性を強く感じる。
とくに深く分析したわけではない。
ただ、VDCのメロディーに言葉をのせて表現力豊かに歌われた時、そうそう、わかる! あの時代ね、わたしもそう!と、無性に嬉しくなってしまうのだ。
リスナーの多くもそうなのではないだろうか。
Ken-ichiって、高校時代のツレだったっけ? と錯覚してしまうことがよくある。(天性のボーカリストに対し失礼ながら…笑)
本音で話ができ、毒も吐き(笑)、つまり裏オモテがない。

Ken-ichiと初めて会った時のことを、今でも鮮明に覚えている。
わたしは音楽誌「BANDやろうぜ」のぺーぺーの編集者で、当時、勢いのあるインディーズバンドを一堂に集めた特集記事を任された。
遠く大阪から足を運んでもらい、撮影場所に案内するため2人で乗り込んだ宝島社のエレベーターの中でKen-ichiに鋭いツッコミを受けた。
いま思えば普通の会話だったのだろうが、わたしは「ツッコミ文化」が皆無の東北で生まれ育ったため、Ken-ichiの、初対面だろうがなんだろうがお構いなしの言動に面食らったのであった。
そんな毒(?)を吐きながらも、あの整った顔面である。
当時22歳くらいだった若者は撮影でも本領を発揮し、素晴らしい表情の写真が撮れ、表紙にも大きく使われたのが誇らしかった。

社内でも話題になり、のちに先輩編集者をVDCのライブに連れていったことがある。
当初から彼らは演奏が巧く楽曲も抜群で、とにかくボーカルの声、迫力が凄い。
先輩の反応にもワクワクしながらライブを見終え、もらった言葉は意外なものだった。「本格的すぎる」。え???
大流行したテレビ番組「イカ天」や、バンドブームの後だったこともあったかもしれない。不思議と「アマチュアっぽさ」「気楽さ」などが大衆ウケした時代でもあった。

しかしVDCは、流行などに左右されない自分たちの音楽を貫いたからこそ、35周年の今がある。
先日のライブを観ていて当時のことを思い出しもするし、駆けつけた幾つものライブの情景がよみがえってきて、それでもまったく色褪せない楽曲が今現在も聴けることを、本当に嬉しく思う。
VDCをずっと好きでいられて幸せだ。

昨年から、音楽界では悲しい報せが続きすぎた。
なかでも、VDCとゆかりのあったISSAY(DER ZIBETのVo)が8月5日に急逝。
そのDER ZIBETの「深海魚」がVDCによってカヴァーされ、また違った息吹を注がれた名曲が、35周年ライブで会場を埋め尽くしたリスナーに届けられた。
こうして楽曲や魂は語り継がれ、時代を巡っていくんだなと感慨深く彼らの演奏を聴いた。

Ken-ichiもNaoyaも、感極まる瞬間があったという。
Naoyaはオリジナルメンバーのギタリストで、多くの名曲を生み出した天才。近年は指をいためているが、記念すべきライブではステージに戻ってきてくれて往年のファンにも喜ばれている。
以前より少しギターの位置を高く持ち、変わらぬプレイと穏やかな人柄で皆に安心感を与える。
ライブ後、本人は「まったく納得がいかない」と笑っていたが、音源と同様の音色や、Naoyaらしいタッチで弾き続けてくれることこそが尊いのだ。
健康に気をつけて、お互い長生きしましょうね!! と、会うたびにお願いしている。どんなにおじいちゃんになっても、Naoyaの弾くギターを聴き続けたいといつも願う。

Junは35周年の今も変わらない「王子様」だ。
フリルシャツの着こなしやベースを弾きながらのターンが流麗にキマる。
それでいて喋りや、バンドまわりの事務的なこともできる万能な人。
JunやKIBA氏(GARGOYLE)が打ち合わせ、KIBA氏がデザインしたという35th記念Tシャツなどは大好評で、物販に長い長い列をつくっていた。
(トップ画像はそのTシャツ背面よりトリミングして拝借)
またJunはファンのことをよく見て個々を理解し、それを言葉に表してくれる紳士でもある。
JunとTakeshi(ds)のリズム隊は、事前にリモートでリハを重ねたそうだ。
それぞれの場所で画面を見ながら「せーの」で遠隔リハーサルができるという時代…。
結成当初の彼らに「35年後はそうやってリハやってるよ」とか言ったら「ウソやん(笑)」と一蹴されたはずである。
そして預言者のように「2024年もTakeshi氏はパワフルに、やんちゃにドラムを叩いて観客を盛り上げています!」なんて告げたら、でっかく口を開けて笑ってくれただろう。今と同じように。

そんな妄想も(笑)、音楽業界に揉まれた青春時代も、現在も、楽しみながらこうして語れるのは、メンバーが生きて、活動し続けてくれるから。
生きているだけでなく彼ら自身がVDCの楽曲を愛して切磋琢磨し、目の前で演奏するのを見られることは、もはや当たり前のことではない。35年は“奇跡”だ。

いまやわたしなどはめちゃめちゃにライブを楽しんで、感謝することしかできないが、まだ命があって体力がありさえすれば、こうやって言葉に残したいと思う。

Valentine D.C. 35周年おめでとう。
素晴らしいライブを本当にありがとう!!




文=伊藤美保


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