ELLオンラインMEET UP Vol.12 レポート
こんにちは!ELLインターンのトミオカクミコです。
今回は9/8(火)に行われたOnline MEET UP!の第12回レポートをお送りいたします。
今回は「本の魅力と本づくり・川内村ではじめた村おこし」をテーマに、丹治史彦さんと志賀風夏さんをゲストに迎え、トークを展開しました。
1人目のゲストの丹治さんからはまず、これまでご自身が企画された本のご紹介をしていただきました。ロンドンの幽霊のガイドブック、奇妙な音楽をフィーチャーした本、整体や身体のしくみを明るく説明した本など…
中でも、『新耳袋』という本は装丁がワクワクしました。カバーにすでに百物語が書かれているというデザイン。読めば読むほど、いつ自分の身にも不思議なことが起こるか分からない、という仕掛けにもなっているそうです。
朝日新聞出版ではカスタム出版(自費出版)の編集を担当、中には50部しか作らなかった本もあるとか。また、出版社「アノニマ・スタジオ」を立ち上げた経緯についても、詳しくお話しいただきました。
そして、明治5年創業の和菓子屋「たねや」が手掛ける「ラ コリーナ」の広報誌についてのお話をいただきました。
「ラ コリーナ近江八幡」の草屋根の建物は「たねや」の総合ショップだそう。凄い外観。設計は藤森照信さん。
広報誌は春秋の年2回刊行で、時には絵本形式をはさみながら、現在で15号目。お店の広報誌でありながらテーマは地元の行事や暮らし、人々の営みを媒体とした「近江の豊かさ、美しさを地元のお客さまと共有するための冊子」を目的としているとのことでした。
関西圏のクリエイターではなく、東京など離れた地域の人たちと、「滋賀」に対する色眼鏡なしで地域と人に向き合い作っているそうです。これが全国のたねやさんのショップで、無料で手に入るなんて、凄い。
「ラ コリーナ」自体もとても素敵な場所で、菓子製造だけではなく、社内で米作りをしたり、店頭を飾る草花も自社で育てたり。たねやさん自体の経営理念も素敵です。
近江八幡は豊臣秀次の城下町で、有名なのは「左義長祭り」。まちの人皆で作った、全部食べ物でできているお飾りが衝撃!それを山車に載せてぶつけ合うそうです。最後はお飾りを燃やすんだとか。「八幡まつり」でも、葭(よし)で作った巨大な松明を燃やすそう。残すのではなく最後は燃やして自然に返すというのも面白いなと思いました。
こんなに面白いものや環境、歴史がたくさんあるのに、都会に出た若者は出身を聞かれると「京都のほうです」と答えてしまう。自分の地元がもっている価値、豊かさに気付かず、たいした場所じゃないと思ってしまう。そこで、自分たちの住む町を、普段とは違う視点で切り取ることで、もっと地元の人が、地元の豊かさや愛着に気づいてほしい、たねやさんはそのための媒体として「ラ コリーナ」を作ったそうです。
丹治さんは、たねやさんの社長、そして「ラ コリーナ」との出会いで、「メディアとは情報をただ伝えるのではなく誰かが誰かに手渡す行為とセットにならないと意味がない」ということを教わったとおっしゃっていました。
これからは、「信陽堂」としての出版活動を、小さく開始されるそうです。大量部数の出版物をたくさん作ってきたからこそ、ご夫婦2人での出版は小さく始めたいそう。作り手・語り手の温度感のある本づくり、楽しみです。
2人目のゲストの志賀さんは、地元である人口2000人の福島県川内村で、「かわうち草野心平記念館」で管理人をしながら、陶芸家としての活動をされています。
川内村は、少子高齢化に加え、東日本大震災の原発事故の20㎞範囲内に少しかかっていたことからも、人口や若者の流出が激しく、現在では「川内コミュニティ未来プロジェクト」というプロジェクトでオルタナティブ教育に力をいれているそうです。
この村には何も無いかもしれない、でも川内村の環境の豊かさや寛容さを、みんなに知ってもらいたい、川内村に恩返しがしたいという想いがあったそう。
次の写真は、ご自宅の前にある川でくつろぐようす。なんて豊かで贅沢な環境なんでしょう。
そして、村の人の「うちの村なんてたいしたことないよ」というネガティブなマインドも変えたい、と思い、企画された事業がこちらです。
ご両親が購入された、ご実家の隣の古民家をきれいに整備して、「川内村を知り、新しいモノ・コトを生み出していく」活動を始めようとしていらっしゃいます。
現在は若い人の行けるような場所がないため、若者が行けるような、そして地元の食材を使えるカフェを作ったり、コミュニティスペース運営などをこれから目論んでいるそうです。
企業や大学にも貸し出す日替りカフェも、実現したら絶対素敵だなと思いました。
10年後も見据えた事業計画も。
村には何もない。でも「何もできない→村ではなんでもできる」を実現させる。川内村に住んでいることを羨ましがられ、自慢できるようになって欲しいとの願いがあるそうです。コロナで時期はずれこみ、本格始動は来年かも…ということですが、もうすでにこの村に行ってみたいなと思いました。
今回参加してくだった方の中には、福島出身で、志賀さんの大学の先輩!?も…!偶然の共通点や出会いがあるのも、オンラインでの面白さですね。信陽堂編集室でも、福島でお店をされている女性の本を来年の春に出版予定だそうです。今回は、とても東北色の濃い会になりました。
そして、地元の人にもっと自分のまちを好きになってほしいという想いも、全国で共通しているのだなと思いました。これこそ、「地域の編集」の力の見せどころなんだなと。
ゲストの方のお話だけでなく、参加者も含め地域で活動をしている中で出てくる疑問や問題を会員同士で話し合ったりと、回を重ねるごとに話題が色々と出てきて、MEET UP!の意義が深まってきた感じがします。
次回は10月13日(火)19:00~オンラインでの開催です。お楽しみに!
文:トミオカクミコ
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