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渋谷に民衆の芸術の”森”をつくる 〜SHIBUYA valleyの活動の中で〜

清水麻衣

現在、渋谷のビルの屋上で「ひみつ基地」と銘打ったスペースSHIBUYA valleyの運営をしている清水麻衣と申します。この活動を通して、私が大切にしている3つの考え方を共有します。


①民衆の芸術 by ウィリアム・モリス
ウィリアム・モリスは、生活と芸術を結びつけた「アーツ&クラフト運動」を主導し、以下の言葉を残した。
「真の芸術とは、それを製作する人にも、それを使用する人にも、幸福なものとして、民衆により、民衆のために作られる芸術である」
ひみつの屋上SHIBUYA valleyは、ここを使う人たちの手によって、常に変化し続けている。遊園地、公園、劇場、菜園、茶室、ライブ会場、ダンス場…。
こうして、屋上空間が、製作する人、使用する人の手により、唯一無二の幸福体験の積み重ねの場となり、ここを出入りする人々にとっての豊かな日常体験の場となっていくこと。
高尚な空間ではなく、「民衆の芸術」すなわち「日常の芸術」が育まれる場として育っていくことを私は大切にしたい。

②密接錯雑な森 by南方熊楠
南方熊楠は、粘菌の研究で知られる生物学者で、エコロジーの思想を日本に輸入した人物だ。彼の言葉で以下のような思想がある。
「密接錯雑な森があればいい。進化より退化。万物の根源にあるものが『粘菌』」
良くも悪くもミニマムな空間がSHIBUYA valleyだ。熊楠が粘菌を愛でたように、私はここを出入りする小さな1つ1つの小さな命を愛でていきたい。そして、SHIBUYA valleyが、どんな生命も受け入れる密接錯雑な森のような場所になるといいなと考えている。
進化を求めるのではなく、ここで停滞・退化していく生命体も愛でながら、命の根源、もっと言うと人間以外の生態系である自然・空気・空との関わり方も重視していきたい。

③三・五% by斎藤幸平
最後に、ベストセラーになった「人新世の『資本論』」に出てくる、以下のフレーズを共有する。
「ここに「三・五%」という数字がある。なんの数字かわかるだろうか。ハーヴァード大学の政治学者エリカ・チェノウェスらの研究によると、「三・五%」の人々が非暴力的な方法で、本気で立ち上がると、社会が大きく変わるというのである」
街が身体なら、私もSHIBUYA valleyも小さな1粒の粘菌だ。渋谷という街を俯瞰すると、膨張しすぎて窒息死しそうに見えるが、SHIBUYA valleyという屋上で、私は、あえて「余白」を大切に守りながら、人間も人間以外の生物も窒息せず、深呼吸できるような「余白」を楽しめる関係を育んでいきたい。


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清水麻衣
1987年渋谷生まれ渋谷育ち。有限会社好久代表・元テレビ番組ディレクター・2級建築士。身近な「まち・ひと・こと」を面白がり、街を耕し「小さな生態系」をつくる実験を日々実践中。


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