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「移住者」とは誰のことを指すのだろう

半田孝輔

この1年ほど宮崎県のある町の移住支援の仕事に関わっています。私の仕事は支援サイト内のマガジンのライター兼編集長。町外や県外の移住検討者へ向けて、町の日常、暮らし、先輩移住者のお話をお届けする。これまで長年町内で暮らしている方や、近隣地域・県外から移住されてきた方にインタビューをしてきました。そう活動するうちに、私の中で「移住者」という言葉がなんだかよそよそしい、ムズ痒いものに感じられるように。取材や事業の説明で「イジュウシャ」と口にするたびになんだかしっくりこないものを感じています。
移住者という言葉で一括りにしている中にはグラデーションがあります。移住者といっても、最近移住してきた方もいれば、何十年も前に移住してきた方だっている。そして、近くの地域から移り住んだ方もいれば、はるか遠くの地域からやってきた方だっています。移住して日の浅い方は、その話す言葉や身なり、生活習慣の違いから、良くも悪くも浮きがちかもしれませんが、その土地での暮らしが日常となり、生活に慣れたころにはもうすっかり自他ともに認めるその土地の人間になっているわけです。
距離に関係なく、ココとは異なる土地からやってきた方を移住者と呼ぶこと、根付いた生活をしている方をいつまでも移住者として扱うこと。それになんだかしっくりきていない自分がいます。
インタビューをしていると、移住者である前にその土地の生活者としての顔が浮かび上がります。ご本人たちも、移住者としてインタビューを受けているので移住の話をしますが、それはその方の属性を表す一部でしかない。「あなたは移住者ですよね」と呼びかけることが「あなたはよそ者ですよね」と呼んでいるように感じます。
移住者という言葉が引っかかるのは、私の生い立ちも関係しているかもしれません。私が育ったのは宮崎県宮崎市ですが、両親は他県の出身。父は福島県、母は東京都。お互い東京の職場で出会い結婚。私は母の実家近くの病院で生まれたそうです。私が2歳か3歳になるころ、父の転勤のため宮崎へやってきました。ですので、両親は紛れもなく移住者で、私は移住二世のようなもの。生まれは東京ですが、思い出せる古い記憶は宮崎市内の幼稚園のもの。それもあり私自身は宮崎の人間として10代まで過ごしてきました。
そんな環境下で育ち、20代をさいたま市で6年間暮らしたこともあって、移住者とは誰のことを指しているのだろうという疑問があります。答えは出ませんが、ライターとして移住者への話の聞き方が変わってきたことを感じるこのごろです。
■プロフィール
半田孝輔(Handa Kosuke)
宮崎県宮崎市在住。東京都生まれ。フリーのエディター/ライター。宮崎市主宰の地域デザイン系のお仕事で企画・編集・執筆を経験後フリーへ。ZINE製作や写真展に出展など作家活動も行う。

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