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衣食住ぜーんぶ。森ノオトは「わたしの暮らしそのもの」 | めぐる布市スタッフ 山川令美さん

森ノオトにかかわる人たちの声を聞きながら、ローカルメディアのあるまちの現在を描いていくインタビュー企画。9回目は、森ノオトのAppliqué事業部「めぐる布市」のスタッフ、山川令美さんです。実はとっても恥ずかしがり屋で前に出ることが苦手なれみちゃん。「なんでわたしなのぉ〜」と文句を言われつつ(笑)、編集部スタッフの佐藤美加がインタビューしてきました。なぜれみちゃんに話を聞きたかったのか、その理由はきっと読めばわかるはず!

森ノオトってなんだろう?

「れみちゃんにとって、森ノオトってなぁに?」そう直球で聞いてみたら、「そうだなぁ」ってちょっとだけ間を置いて、こんな答えが返ってきました。
 
「暮らしそのもの、かなぁ」。
 
ふふふ、と目を細めて笑うれみちゃんは、めぐる布市のスタッフとして働きながら、その工房にもほど近い鴨志田の家に、家族3人で暮らしています。緑あふれる環境で豊かな生活がしたい、そう思ってここに引越してきたのはコロナ禍のことだそう。
 
念願だったおうちの庭づくりは、森ノオトスタッフの梅原昭子さん(あっこさん)が紹介してくれたスペシャリストのみなさんと、着々と計画が進行中。土に触れて過ごす機会をもっともっと増やしたくて、森ノオト事務所の大家さんから借りた畑で野菜作りも楽しんでいるのだとか。
 
いいかも市 をはじめとしたマルシェでよく買い物もするし、記事で読んだお店にもよく行っているし。めぐる布市で買った生地からお洋服やバッグ、アクセサリーを作ったりもしていて……。
 
「こうやって考えてみたらさ、私の暮らしには、衣食住全てのことに森ノオトが何らかの形でかかわっていて。だから、森ノオトって 私の“ 暮らしそのもの”だなぁ。森ノオトって、この町の“ 御用聞き”みたいなところがあるよね? 暮らしの中で何かに困っても、森ノオトの誰かに聞けば、ちゃんとこの町のスペシャリストにつなげてくれる感じがする。だから、っていうのもあるんだと思うけど、ほんと、どっぷり浸かってるなぁ〜!引っ越してきて鴨志田から全然出なくなっちゃったもん。かえって世界が狭くなっちゃったかも〜」。
 
そういって、れみちゃんはますます笑いました。

インタビューの日はちょうど、寺家ふるさと村の里のengawaで萬駄屋マルシェが行われていました。ベンチに腰掛けて、田植えの終わった青い田んぼを眺めながら、obentokanaさんのおい しいお弁当を食べつつ、さぁ、インタビュー(という名のおしゃべり)開始!

はじまりは子どもの「園選び」

森ノオトとの最初の接点っていつだったの?と聞いてみると「子どもの園選びがきっかけで」との答えが返ってきました。
 
現在特別支援学校に通う息子さんを育てている、れみちゃん。3歳で障がいがあることが分かってからの園選びにはとても悩んだそう。療育(発達支援)にも通っているけれど、少しでも子どもに刺激になるような育児ができたらと願い、親子で通い始めたのが、青空保育ぺんぺんぐさ でした。
 
※青空保育ぺんぺんぐさ:青葉台周辺エリアの緑の多い公園や里山をフィールドとし、園舎を持たない自主保育を行う団体
 
ぺんぺんぐさでの日々は、お子さんにとってはもちろん、思いがけずれみちゃんにも大きな刺激があったようでーー。
 
「ぺんぺんのママ仲間の中に、森ノオトライターをしている人や、のちにAppliqué事業部で活動をともにする 齋藤由美子さんや岡田薫さん(むぎちゃん)がいて。それで森ノオトを知るようになった感じかな。身近な、しかも好きな人たちが森ノオトにかかわっていることを知って、漠然とした憧れみたいなものがあったかも。同年代のママたちが、素敵なことをやっている姿はとてもキラキラして見えた」
 
手芸上手のれみちゃんは、そんな出会いの後すぐAppliquéの縫製スタッフになったのかと思っていたのですが、実際はそうではなかったようで驚きました。
 
「すぐではないのよ〜。実はわたしね、そもそもミシンが苦手だったの!結婚してすぐに 母にミシンをプレゼントしてもらったんだけど開封もしてなかったくらい。でも、ぺんぺんのママには得意な人がたくさんいて。それで簡単なパンツを作るワークショップをしてもらったり、ベビーカー軍団で手芸店めぐ りをしたりしているうちに、どんどん手作りすることが楽しくなっていったんだよね。もともとファッションが好きだったけど、年齢とともに何を着たらいいか分からなくなっちゃってて。でもミシンが楽しくなるにつれて、あ、そうか。それなら作ればいいじゃん!って思って自分の洋服も作 るようになっていったの」。
 
ぐんぐんミシンの腕をあげていくれみちゃんに「Appliquéでマルシェ出店のための商品作りをしてみない?」と声をかけたのは、むぎちゃんでした。「コロナ前はたくさんマルシェに参加していたからね。そのための商品を作る 縫い子になったのが、わたしと森ノオトの最初の接点」。
 
全国から届いた布を使い、手を動かして商品を生み出していく時間は「私の暗黒時代を支えてくれた」と、れみちゃんは言います。子育てで悩んでいる時期に「母でもなく、妻でもない。自分が自分でいられる、自分の居場所だったと思う。やることがある、ということがずいぶんと私の心の支えになってた。自分のための時間、楽しい時間が増えていくと生活がパッと色づいていくよね。孤独な気持ちが少しずつ紛れていくみたいな……そんな大切な時間だったし、居場所だった。今も、だけどね」。
 

「森ノオト、好きでしょう?」

「Appliquéの縫い子」としてお手伝いをしていく中で、れみちゃんは少しずつAppliqué事業部以外の森ノオトのメンバーたちとも交流するようになり、森ノオトの全貌を知るようになっていったと言います。「知るほどに、森ノオトはやっぱりキラキラしてたなぁ」。
 
それからしばらくして、nu:u 国島智子さん と入れ替わるタイミングで、れみちゃんは正式にAppliquéのスタッフ、森ノオトの人になりました。「それまで外から見ていたキラキラの森ノオトの中に入る、というのはドキドキで。私でいいのかな……って思ったし、とっても勇気のいることだったんだけど、智子さんに背中を押してもらったの。『れみちゃん。森ノオト、好きでしょう』って」。

右が、れみちゃんの背中を押した国島智子さん。先日のめぐる布市手芸部で、手縫いのポーチの作り方を教えてもらっているところ。ふたりともハンドメイドの お洋服を着ています。素敵!

めぐる布市の運営の中で日々奮闘しているれみちゃんは、私の目から見ると「キラキラの森ノオト」のまっただなかにいるように映ります。おしゃれで、気が利いて、アイデア豊富な彼女は間違いなくめぐる布市を動かす、なくてはならない存在。今や「憧れの森ノオトの人」そのものです。
 
 そう伝えてみるとちょっと照れて茶化しながらこう言います。「わたしでいいのかな、スミマセン……って今も思いながら森ノオトにいるよ。わたしは、めぐる布市のなかでは“かゆいところに手が届く係”。細かいことに気がつくタイプだと思うし、裏方としてサポートするのが好きだしね。でも、確かに、キラキラと言えばキラキラかもね〜。汗かいてキラキラ、心の汗もキラキラ(笑)」。
 
「でもね」、れみちゃんは最後にニコッと笑ってこう言いました。
「もしかして、これがさ、森ノオトに染まっていく、っていうことなのかもしれないね。森ノオトが好きな人って、みんなちょっとずつ、森ノオトっぽくなっていくもんね」。
 
(おわりに)
 「森ノオト」というNPO、そしてローカルメディアは、なんとも説明のしがたい「よい雰囲気」をまとっているなぁと思うことがよくあります。そして、そう言われることも多いような気がしています。
 
今回、れみちゃんインタビューで私が気づいたのは、その「よい雰囲気=キラキラ」の正体って、実は特定の“ 誰か”なのではなくて、「森ノオトが好きだ」と思っているみんながよってたかって作っているものなのかもしれないな、ということです。
 
衣食住、いろいろな角度から、森ノオトでやっていることが好きだなぁと思ってくれる人が集まってくる。そして集まった人の中から、れみちゃんみたいに、何かをはじめる一歩を踏み出す人が出てくる。そんな人たちがまた「森ノオト」を作っていって……?
 
好きなものが一緒、の楽しさ。
よいと感じたものを共有できる、うれしさ。
こんな暮らしがしたい、の根っこが似ている安心感。
 
そんな心強さの先に、この地域で何かをはじめたり、自分のために自分を生きる人たちが増えていく。そういうお手伝いができる可能性を秘めているのが「森ノオト」だとするなら、なんてうれ しいんでしょう。
 
恥ずかしがり屋だったはずのれみちゃんがいきいきと自分を語る姿を思い返しながら、あらためて「森ノオト」って、いいなぁ、とじんわり思っているのでした。
 
ね。ほら、そこのあなたもきっと、「森ノオト、好きでしょう」?
(取材:佐藤美加)

れみちゃんを表す写真がこちら。「古道具とカゴが好きでコツコツ集めたものたち。気付けば家にあふ れてます(笑)。写真はまだ一部。私の癒しです」。いつかカフェをやってみたいな、息子と働ける場所を作 れたらいいな、その時はこんな古道具を並べたいな。そんな夢を語ってくれました

この連載は森ノオトのNPO法人設立10周年の今年、「ローカルメディアのあるまちづくり」を、森ノオトにかかわる人たちの言葉を通じて描いていく企画です。
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