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闇の帝王の誕生



「おえむん…!君もプリコネを始めたんだね。ようこそ、グライミーグーンズへ。」

 akiが手を差し伸べる。
 使い切れないほどの金、美味い酒、いい女。その手を握ればおえむんには輝かしい未来が約束されていた。グライミーグーンズにはそれを叶える力はまだ無かったが、向上心の高いクラメンと着実に順位を伸ばしている実績はいずれ頂きに届くという確信を与えた。

 だが、皆勘違いをしていた。この男の留まることを知らぬ野心は誰かの下に着くことを良しとはしなかったのだ。

 パシッ

 おえむんはakiの差し伸べた手を払う。

 「な、何を…。どうした、おえむん…?」

 先程まで浮かべていたakiの涼しげな笑顔は、困惑の様子へと変化していた。

 おえむんは邪悪な笑みを浮かべて言い放つ。

「勘違いしてもらっちゃあ困るぜぇakiさんよぉ。さっきまでこの俺様がペコペコ頭を下げてあんたの退屈な話を聞いていたのは、俺様がまだこのゲームに詳しくなかったからさ。今の俺はもう違う。すべて"理解っちまった"からなぁ!」

 隣の女を肩に寄せ、5億の酒をかっくらう。正面に座るakiのことなど目もくれなかった。

「奴隷だ。このゲームは奴隷を29人集めるゲームさ。あんたたちのおままごとクラバトじゃ行けて3桁が限界。栄光になんかとどきゃしない。」

「くっ…!貴様言わせておけば!」

 akiの右腕のDorothyが懐に手を伸ばす。彼にとって尊敬するマスターを侮辱されるのは死に値することだった。

 拳銃を手に取り迷わず引き金を撃つ。

 バァン

「ぐっ!ぐあぁぁぁああああッ!!!」

 しかし銃は暴発し、Dorothyの右腕はお弁当のタコさんウィンナーのようになった。

「Dorothy!おえむん、貴様既に"仕込んで"いたなッ!」

 銃口にはおえむんの小指が詰め込まれていた。この店に来る前に切り離し、銃身に潜り込むよう指示を飛ばしていたのだ。

「気づくのが遅いぜぇakiさんよぉ。俺はここに来る前からこうなることを想定していた。もっとも、お前たちがあまちゃんなのは今に始まったことじゃないがなぁ!」

 おえむんは憎々しげに此方を見るakiと蹲るDorothyを尻目に席を立つ。意地の悪い笑みは相変わらずだった。

「俺様は今から29人の奴隷を集める。馬車馬のように働かせて最強のクランを作るのさ。今はまだお前たちの方が上だが、いずれ抜き去る。これはオナニーを覚えてのガキが週に何回マスターベーションをしてるか聞かれた時に2.3回と嘘をつくくらいには確実な事だ。」

 上機嫌なおえむんはそのまま店を去ろうとしたが、思い出したかのように脚を止め、振り返った。

「おっと、この店の会計は任せたぜ。なんだってこれは……俺様の歓迎パーティーだからなっ!ガハハハハハハハハハハ」

 後に探検同盟を結成し、裏では闇の帝王と呼ばれた男の始まりの話である。

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