リスのリュミエール
リスのリュミエール
爪を立て、木肌を走る
朝日が昇るのを背中であたたく感じる
上へ上へ
上へ上へ
森の向こうに、眩しいのが広がる
じっと眺める
鳥の鳴き声が(まだ始まったばかりの一日の)静けさに溶けてゆく
リスのリュミエール
土を蹴り枝を蹴る
キラキラと光差す小川の方へ
水は荒々しく輝きながら右から左へと急いでる
光ってる何かが水に揉まれてる
こっちに迫ってくるそれは何だろう
彼は両手で掴み取る
地面に引きずりこむとき、それがガラスビンであることがわかった
中には何が入っているのだろう
小石を持ち上げ振り下ろす
頑丈な宝箱
さっきよりも強くぶつける
くすんだ緑のビンに、白い亀裂が入る
もっと強く!
力いっぱい振り下ろし、緑が割れて内側の世界に色がついた
薄い茶色の紙で、そこには文字が書かれてた
賢いリュミエールは、去年キャンプ場の子供達に教わったことを思い出しながら読んでみた
「わ た し は げ ん か い が き て し まったの」
文字を書くように一語一語、頭の中ではっきり読み上げる
「今からすることは、ここまで育ててくれた母と父に対する罪だとわかってる」
「でも、そのことを理解した上で、わたしは命を断ちます」
「これを読んでいるあなたが、わたしの唯一の理解者」
親を見て育ち、ついに子供は愛を知らないことを知る
家族が壊れた夜
次の日には、一つだけ形の違う椅子
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