プロット道具セピア

ご質問と回答(1)

 今までいただいた、プロットや視点に関するご質問の中から、いくつか回答せていただきます。他にもご質問はいただいているのですが、今までの記事そのものが、すでに回答になっている場合もあるかと思いますので、その旨よろしくお願いいたします。
 ではでは、始めましょう。

【質問】キャラクターのせりふを書き出しながら、性格や、歩いてきた道のりとか考えつつ、はじまり、盛り上がり、終わりをおおざっぱに決めて……と、はじめるものの。だんだんと本文になってしまい、時間を費やすことに焦って書き出してしまい。曖昧なところが多いせいか盛り上がりを見失ったり、すごく齟齬がではじめてしまうというのか。少し横道にずれるかもしれませんが、物語がどうしようもなく余分で満ちていく感じになってしまって。プロットの段階でここを押さえておくと書きはじめても構成迷子になりづらい、みたいなものはありますでしょうか。

【答】こちらは記事の内容がすでに回答になっているかもしれませんが、大切なところなのでもう一度簡潔にまとめてみますね。キャラクター小説な場合プロットで意識しなければいけない柱は主に二本です。

●物語の世界観と、その世界で起きる事件
●その中でどんなキャラクターが、どんなふうに変わっていくか。


 世界観は別にありふれた現実世界でもいいですし、起きる事件も大事件でなくてもいいのです。ただ私たちの周りには常に何かしらが起きていて、その何かしらの影響を受けて、人は変わっていきます。それがつまり物語です。プロットがうまくまとまらない場合、どんな事件が起きてどんなふうに解決されるかは思いついても、それによってキャラクターがどう変わっていくかが抜けているのかもしれません。むしろ重要なのはキャラクターであり、その人物をどう物語で活躍させるかがプロットの肝であることを意識して、構成してみてはいかがでしょうか。


【質問】物語の始まりと終わりのイメージが出来上がってる場合のその間の枝分けの仕方が知りたいです。話を盛り込み過ぎるとダラダラしたイメージになりそうですし、少な過ぎると「何でこうなるの?」で終わりそうなので……

【答】物語には山場というものが必要です。つまり盛り上がるところですね。仮に通常の文庫本やノベルス一冊分と考えたとき、私はだいたい三つの山場を用意します。ひとつ目はごく小さな山場でかなり前半に持ってきます。読み手に物語の世界に入ってもらうための山場です。二つ目の山場は物語の中間あたり「これからどうなってしまうの?」と思ってもらうための山場です。そして最後に諸問題が解決される一番大きな山場
 山場が幾つ必要なのかは物語によって違います。探偵ものなのか恋愛ものなのかファンタジーなのか……短編なのか長編なのか。そのあたりを自分でじっくり考え、山場を配置し、さらにそ山場に向かうためのエピソードを配置する。私の場合はそんなふうにしてプロットの枝分けをしていきます。

 またエピソードの数ですが、プロットの段階でいくら用意しておいても大丈夫です。足らないよりは多いほうが、絶対にいいです。原稿に入った段階で不必要なエピソードは不採用にすればいいし、書き終わってからでも、いらないなと思ったら大胆に削ってください。これはあくまで私の個人的な感覚ですが、なにか足らないなと思って書き足した作品よりも、情報量が多すぎると思って削った作品の方が、出来がいいような気がします。


【質問】先生のお話はシリアスとコミカルな部分の配分が絶妙なのですが、その辺りはプロットから考えているのか、書いているうちに自然に出来上がるものなのかをお聞きしたいです。

【答】これはなにも考えずにやっています。おそらく、プロットというか、キャラクターに引きずられて書くのだと思います。前回の人称と視点のところでも書きましたが、たとえ三人称で書いていても、誰かの視点で固定されているわけなので、視点になっているキャラクターがコミカルなタイプであれば文章もコミカルになってくる……という現象が起きます。一人称の時キャラクターが、やたらと自分でボケて、自分でつっこむのは……たぶん私の作風です(笑)


【質問】プロットの画像を見ると、何ヶ所かどちらにしようか悩んでいる部分がありますよね。例えば阿久津の出生の青付箋で父が病死か廃業かなど、これらはやはり、プロットが固まった時点ではどちらにするか決めているものなのでしょうか。あるいは決めていても、ストーリーを進めているうちにやはりもう一つの方が良いなと変更したりする事はあるのでしょうか。

【答】プロットが固まった段階で、決まっています。ただし原稿を書き進めていくうちに、それがまた変更になることもしばしばあります。編集さんに出したプロットと、実際の原稿の内容は完全に一致していないことの方が多いです。というか、必ずどこかしらは変わっています。絶対にプロット通りに書かなければいけないということはありません。原稿を書きながらでも、必要に応じて物語は変わっていってよいと思います。プロでもそういう方は、たくさんいらっしゃるようです。私も時には大きな変更をします。あまりにも大きな変更になる場合は、その時点で担当さんに相談していますが。


【質問】人称と視点について、「章の中で視点を変えない」のは分かりましたが、その章が誰の視点かを読者に理解してもらう決めごとみたいなのはありますか? また、プロットを作る段階で誰の視点がいいか、何パターンか案を出すのですか?

【答】視点が誰なのかは、なるべく早く読者さんに伝えるというのが、ひとつの決まり事です。極端な話、1行目に「●●は思った」と書いてもまったく構いません。または、風景の描写から入ったとして、それが一通りすんだら、では誰が今の風景を見ていたのかを書く必要があります。特別な効果を狙って、あえて視点を明かさないまま、ある程度話を進めてしまう方法もありますが、かなり書き慣れてから挑戦したほうがいいと思います。
 誰の視点で書くかは、書く内容によって、大体最もふさわしい語り手というのが存在します。なので視点を何パターンが考えることは、私の場合はあまりないです。しかし、もし「この章はどっちの視点がいいだろう……」と迷った時には、両方試してみるのもいいと思います。「どっちでも書けるけれど、こっちのほうがしっくりくるな……」というふうに気がつくと思います。


 とりあえず、こんなところでしょうか。
 たくさんご質問をいただき、ありがとうございます。みなさんの、ご自分の物語を創りたいという気持ちに、私もいい刺激を頂いております(^^)