テキサス州ダラスのポーカー事情

初のnote投稿です。2022年の7月半ばから8月半ばまで4週間テキサス州のダラスに滞在しポーカーを打ってきました。

ポーカールームの状況やダラスのポーカーの特異性を背景を絡めて説明します。
私はNLHしかやらないのでPLOや他のゲームについてはご容赦下さい。

ダラスのポーカーの特徴

まず初めにダラスのポーカーの特徴を紹介します。
①カジノではなくポーカーしかできないポーカークラブである
②どのゲームでもタイムレーキ制(プレー時間に応じてゲーム代を払う)
③シャッフルマシーンが導入されていない(ディーラーがハンドシャッフルする)
④30分に一回(ディーラーが交代するタイミングで)ボムポットが行われる

なぜこのような特徴があるのかは主にアメリカのギャンブルに対する規制が背景です。後ほど説明しますので興味がある方は最後まで読んで下さい。

そして最後に最大の特徴…

⑤プレイヤーのレベルがめちゃくちゃ低い(恐らく北米最低?)

これが挙げられます。
なぜレベルが低いのかについても後ほど考察をします。

ダラスの二大ポーカークラブ

ダラスエリアには4軒のポーカークラブがありますが、その内の2つは常時閑古鳥が鳴いている状況です。
その2軒には行く機会がなかったので賑わっている下記2軒に絞り紹介をします。
・Texas Card House Dallas
・Poker House Dallas

Texas Card House Dallas(通称TCH)

最も人気があるポーカークラブです。テーブル数は26で大規模なトーナメントが開催されていた時期は着席までに2、3時間掛かることもありましたが、通常時は15分も待てば確実に席を確保できました。

平日でも24時間テーブルは動いていて、仕事が終わる午後3時から午後9時くらいがピークの時間でした。翌日の仕事の為か午後10時くらいになると帰っていく人が出てきて11時頃になると卓が割れて人数が減った卓同士を統合させる動きが出てきます。

金曜日や土曜日は深夜1時くらいでも卓割れとなるようなことはなかったですが日曜日は家族揃って夕食を食べる文化があり、夕方5時くらいからちらほら帰っていく人が出てくるので平日>日曜日に感じました。

ゲーム設定とバイイン額は下記のPoker Atlasアプリの画面を参照下さい。

8/18木曜日の現地午前3時頃の状況

NLHは1-2と2-5がメインでそれ以上の5-10は週末等で特に盛り上がった時に一卓立つ時があるくらいでした。
2-5のバイインはMatch Stack(テーブルで最もチップを持っている人まで合わせてバイインできる)が特徴でかなりディープになる時があります。

平日で1-2が大体8テーブル 2-5が6テーブルくらいはピークの時間は立っていました。
週末はそれぞれプラス2~4卓くらいでした。

プレイヤー層は1-2は完全にいわゆるレンジがゆるゆるのエンジョイ勢が100%でしたが、2-5になるとダラスのポーカーの緩さを聞きつけて海外から遠征してきた若者が各テーブルに0.5人(ドイツ人、イギリス人がいました)、しっかりとタイトに打つ常連客が各テーブルに2人くらい。残りはVPIP30%超えの緩いギャンブル大好きエンジョイ勢といった構成でした。(テーブルは9人max)

クラブ内部の様子。某ニュースサイトより拝借

前述の通りタイムレーキ制なので参加しないと損と思っているのか、ディープスタックだから一発フロップを当てたら大きく勝てるので広く参加できると思っているのか分かりませんが各人の参加率が大変高く、4Way以上になるのが当たり前な状況。ブラインドチョップは一日に数回しかお目にかかれませんでした。

PFレイザーはどうせコールされるので4BB以上のオープンが当たり前で5BBオープンを採用しているプレイヤーもいました。(それでもどしどしコールが来ます)
自分のハンドの強さに応じて9BBから3BBまで露骨にサイズを変えている人もいました。9BBに対してもKJo等でコールする人もいます。

フロップ後のプレーもボードがヒットしなければそれで諦めるタイプもいれば、チェックを見たらマルチにも関わらずほぼエニハンでブラフを果敢に試す人、ドローができたらとにかく入れてギャンブルしたい人、ワンペアできればナッツのように扱いめちゃくちゃオーバープレーする人など様々でしたがほぼ全員ワンパターンなので観察していればやっつけるのは簡単です。

レーキはプレーするゲームに関係なく$13/時間で固定です。

ダラスの特徴でも書いたように30分に一回ボムポットが行われるのが風習で、1-2ならば参加費$5のダブルボードのNLH、2-5は参加費$15のダブルボードのPLOが行われます。

ダブルボードのゲームというのは通常のポーカーと同じくフロップからリバーまでカードがディールされますがディーラーの前にボードが二つ置かれ、両方のボードで相手より強いハンドを作るゲームです。
両方のボードで勝てたらポットの全てを獲得できますが片方のボードでしか勝てなかったらそのポットはチョップとなります。

全員参加のボムポットでRまで着いてきていればさすがにどちらかのボードでナッツに近いハンドしか残っておらず、ほとんどの場合はショーダウンまで行ったハンド同士はチョップで終わります。

チョップで終わったとしてもプリフロの全員の参加費とRまでに降りたプレイヤーのチップを二分して獲得できるのである程度の金額が動きます。

このようにボードが二つ置かれる。今回は両方とも同じフロップで超珍しいので写真に残した。

このボムポットはカジノが公式のゲームとして設定している訳ではなくダラスのプレイヤーは昔からホームゲームなどでボムポットをやるのが習慣だったので行われているというもので参加しなくとも全く問題はありません。
参加しなくても他のプレイヤーから文句を言われたり嫌な顔をされたことはありません。

地元のプレイヤーでもしっかりタイトにポーカーをプレーしている層はボムポットをやらない傾向にありました。

自分も初めのころはダラスの文化を尊重しようと思って参加していましたが、かなりの金額が動く点、PLOのオッズや戦略がよく分かっていない点、ポジションが良い時だけ参加しているズルいプレイヤーを発見した事等から参加を辞めました。

ボムポットは参加人数も多く大きな金額が動くので1ゲームに大体4分以上掛かってしまいます。30分に二回もやるのでこのボムポットで一時間中8分くらい取られてしまい、タイムレーキのゲームでは損をしてしまいます。
これはダラスのポーカーのデメリットの一つです。

ポーカークラブ内では食事は提供されておらず自分で準備する必要があります。
このクラブはショッピングモール内にあって向かいにはカフェがあるのでそこでテイクアウトのサンドイッチ等の食事を調達するのがメジャーでした。他にもウーバーイーツやピザの出前を頼んでいる人もいました。

自分は毎日お弁当を持って行ってボムポットが行われている時間に被るように調整してサッと済ませていました。
タイムレーキ制なので食事や休憩時間もお金を払っていることになります。
テーブルでは食事が禁止されていたのでテーブルから離れて休憩所でご飯を食べる必要がありますので急いで済ませていました。

Poker House Dallas

二番目に人気があるポーカークラブです。

ダラスにポーカークラブ自体ができたのはかなり最近の話でTCHが二年前に、このクラブは一年前に完成しました。
私がいた時は一周年の記念日だったようで無料のケーキやTシャツを来場者にプレゼントしていました。

テーブル数はTCHより多い30ですが後発なので常連の数に大きく差があり1-2が平日3卓程度、2-5は忙しい週末に1卓立つことがあるくらいの状況でした。
週末は1-2が5卓程度になります。

ウェイティングにある程度の人数が溜まったらどんどんテーブルを開いてくれるので稼働卓数に関わらず待ち時間はほぼありませんでした。

8/18木曜日の現地午前3時頃の状況

1-2のDSと表記されているDallas Straddleのゲームがメインゲームとなります。(これ以外のNLHのゲームはほぼ開かれない)
Dallas StraddleとはBTNだけでできるストラドルで1-2では$5をBTNでストラドルするとプリフロップで何があっても最後のアクションが確約されます。

例、COがレイズ$15→BTNのアクションを飛ばす→SBがフォールド→BBが$55に3Bする→COが$150に4Bする→BTNのアクションは再度飛ばす→BBがアクションする→最後にBTNがアクションする。

ストラドルなのでやるかどうかは各人の自由なのですが7割くらいの人がやっていました。そのせいで実質1-2-5のゲームとなり最低レートのポーカーをプレーしに来た緩いエンジョイ勢がBB$5のゲームに座ってくれるのでこのゲームの方がTCHの2-5よりも魅力的になり最後はここに通い詰めました。

利点が生かせないであろうPFR3%のおじいちゃんでも決まりごとのように毎回ストラドルをして、ストラドルが入っていない時もBBは$5という事がみんなの頭に入っているので$15くらいにレイズしてもガツガツコールが入るおいしいゲームでした。

プレイヤー層はエンジョイ勢が100%、超ルースパッシブで参加率40%以上のプレイヤーが数名テーブルにいるのも珍しくありませんでした。

TCHと同じく30分毎に参加費$5でNLHのダブルボードボムポットが行われます。このボムポットについてはほぼ全員が参加していましたしNLHだったので自分も毎回参加しました。
PLOほど複雑ではないのでゲームは早いのですがそれでも1ゲームに三分半くらい要してしまうので一時間で7分の損となります。

タイムレーキはTCHと同じでどのゲームでも固定の$13/時間。
ただこのクラブはまとめて20時間分を前もって購入すると$10/時間となる割引キャンペーンを行っていましたので、レーキについてはこちらに軍配が上がります。

24時間いつでも頼めるわけではないですがクラブ内でハンバーガーやサンドイッチを注文することができました。
またクラブの駐車場に料理の移動販売車が来ていることもあってそれも選択肢となります。
テーブルで食事することも認められているので食事環境もこちらが優れています。

他にも施設の清潔さや各シートにスマホのワイヤレス充電器(置けば充電されるやつ)がついているテーブルが標準で装備されていて、プレイヤー数が少なくゲームの選択肢が限られている事を除けば圧倒的にこちらの方が良いクラブであると言えると思いました。

特にNLHの低レートで稼ぐならば1-2のDSゲームは魅力的です。
(後述する一点の大きな欠点を除けばですが)


以上をもってダラスのポーカー状況の紹介とさせて頂きます。
次にダラスのポーカーの特徴の背景について説明をします。

ダラスのポーカーの背景

冒頭に書いたダラスのポーカーの特徴をおさらいします。
①カジノではなくポーカーしかできないポーカークラブである
②どのゲームでもタイムレーキ制(プレー時間に応じてゲーム代を払う)
③シャッフルマシーンが導入されていない(ディーラーがハンドシャッフルする)
④30分に一回(ディーラーが交代するタイミングで)ボムポットが行われる⑤プレイヤーのレベルがめちゃくちゃ低い(恐らく北米最低?)

これらの背景は大きく言うとダラスではカジノの営業が法律で認められていないからという言葉で説明ができます。

テキサス州はテキサスホールデムポーカーの発祥の地であるのにも掛からわず、ギャンブルについてはアメリカで厳しい政策を取っている州の一つです。

カジノの営業が一切認められておらず、ポーカークラブができるまではダラスの人たちは、知人や友人とホームゲームを行う(大体的に宣伝して人を集めていない、主に知人同士で行われるゲームは合法)、違法なアンダーグランドカジノに行く、隣のオクラホマ州まで車で行ってカジノに行く、という手段を取るしかなくポーカーをするハードルが高い状況でした。

余談ですがオクラホマ州には州境の町であるChoctowとThackervilleの二つにカジノがあり、両方ともネイティブインディアンの家系の人たちが経営権を持っています。

北米では原住民がかつて住んでいた場所にいるインディアンの家系の人たちにはある程度の治外法権的な特権を与えているケースがあってそれを使ってカジノの営業をしています。
アメリカが建国される前からその土地に住んでいた人たちの権利を尊重しているイメージです。
オクラホマ州のChoctowのようなインディアンにルーツがある独特な名前の場所にカジノがある事が他の州でもちらほら見られます。

他にもカジノが違法な州でも州境にある川の上ではその州の法律が適用されないとして、川の上に船を浮かべてカジノを営業しているケースもあります。

本題に戻ります。そのようにカジノが違法なテキサス州ですがカジノの定義とは客とカジノが直接金銭のやり取りをするゲームの提供やポーカーのように客同士が金銭のやり取りをするゲームを管轄し手数料(レーキ)を得る事を行う事となっています。
よってゲームから手数料を徴収せずにお客さんにポーカーができる場所を提供し、場所代の名目でお金を徴収するだけならば合法である、という解釈が可能となりこれを利用してテキサス州ではポーカークラブがつい数年前から乱立しました。
この法解釈を利用したポーカークラブはテキサス州以外にも最近増えてきています。

ポーカークラブの営業の仕組み

お客さんはポーカークラブへ入場料(Club access fee) 、ダラスならば$10/日か$30/月のどちらかを納めて身分証を登録し、テーブルの席料として$13/時間を払いポーカーができる場所を時間当たりで借りている形をとります。

席料は前払いしかできず、チップで払うとゲームの管轄の手数料としてゲームで動いたお金を徴収したと解釈されるのでNGで、現金かクレジットカードで払います。

ポーカークラブの利益はどれだけお客さんが長い時間ポーカーをしてくれたかに左右されますので、乱暴な言い方をするとゲームの進行を遅くすればするほど儲かる事になります。
よってハンドがたくさん消化できるようになるシャッフルマシーンは導入せず(コストも掛かりますので)、時間が掛かるボムポットは歓迎して行わせる、というスタイルを取っています。

テキサス州のどのポーカークラブでもシャッフルマシーンは導入されていません。
ダラスのディーラーさんの質はとても高いと感じましたが、それでも手作業でシャッフルするとなると1ハンドで13秒前後は掛かってしまい、一時間で25ハンドプレーするとなると5分弱の損、ボムポットの時間と合わせると一時間で13分程度一般的なカジノのポーカーと比べて損をしている事になり、これは見えないレーキと言えます。

ボムポットについてはずっとボムポットだけがプレーできるテーブルもあるのでわざわざゲームを変えて行う意味はない、やりたい人はそこに行ってやればよいと個人的には思いましたが完全に習慣になっております。部外者からしたらなくなって欲しいです。

ダラスのポーカーの落とし穴、低いゲームレベルの背景

ボムポット、ハンドシャッフル、異常なポットへの参加率、この三つの要素が相まって時間当たりで消化できるハンドは少なくなり、
2-5で約27ハンド/時間 1-2だと約23ハンド/時間 程度でした。
参考としてラスベガスの一般的なカジノは約35ハンド/時間くらいプレーすることができるはずです。(私独自の計測に基づく)  

恐らく初めてダラスでポーカーをするとほとんどの人がレベルが低いのでめちゃくちゃ稼げる!と感じると思いますが、ポーカーは小さいエッジを沢山積み重ねるゲームで、ハンド数というのはとても重要です。
この大きなデメリットがあるのでダラスのポーカーはぬるくて楽園、とはいかない事に注意が必要です。
プレー中も暇を持て余す時間が増えたり、収支もハンド数がこなせないと安定しづらくなります。

ハンド数がこなせないデメリットはありますが多くのハンド数がプレーできないからこそゲームのレベルが低く保たれている関係性であるとも言えます。
エンジョイ勢が負けるスピードが遅くなるので負けた分をお仕事のお給料から補填がしやすくなり、経験がつめないのでポーカーの上達スピードも限られる、Zoomポーカーがなぜレベルが高いかの逆の理由で説明できます。
ペースが遅いので暇になってルースに参加したくなってしまうのも言わずもがなです。

またテキサス州では合法なカジノゲームのギャンブルはポーカーだけなのでギャンブルしたい人はポーカー以外の選択肢がなく、ブラックジャック等のテーブルゲームと同じノリでポーカーをプレーするギャンブルエンジョイ勢が多くポーカーに流れ込んでいるというのも大きなポイントです。

以上をもってダラスのポーカー状況の報告とさせて頂きます。
長い文章だったと思いますが最後まで読んで下さりありがとうございます。







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