不安

成田空港を出発した。正直、行きたくなくなっている自分がいる。これがただの旅行だったら良かったのに…と何度も思った。今回は所属する連盟に旅費を負担してもらっての海外派遣だった。

準備の段階でいろんな人に迷惑をかけすぎた。連盟との擦り合わせが上手くいかず、度重なる計画の立て直し。計画書は最後の最後まで迷走し、後悔の残る完成度のまま当日を迎えることとなった。これら全てがプレッシャーとしてのしかかっている。

プロジェクトテーマは「レンズから覗く、北欧の人々の環境意識」。現地での写真撮影、取材やディスカッションを行い、成果を上げなければならない内容となっている。シロウトの僕がどこまで「伝わる」写真を撮れるのか、会話を通してどこまで新たな発見を引き出せるのか。このハードルの高さも響き、派遣終了後、収穫が少なく絶望している自分を想像し、早くも頭を抱えている。

事前にお話ししたフォトジャーナリストの青木弘さんが、「どんな写真を撮るのか、構図や状況まで想定した計画が重要」とアドバイスをくださっていた。それに反して、現状の計画は行った先での行動や出会いに左右される形になっており、具体性の無い計画も残っている。このハードルを運と気力で乗り越えようとしている自分が怖い。

そもそも僕は旅行の準備を事前にやるタチでない。パッキングに関しても前日の夜から朝にかけて行った。その甲斐あって搭乗からの5時間は爆睡して過ごすことができた。

限られた予算で北欧を目指す旅行だ。トランジットのために一時的に入国するタイ・バンコク、ドンムアン空港へ向け移動しているこの席はめちゃめちゃ安い飛行機のめちゃめちゃ安いものである。JALやANAの飛行機と違い、目の前に液晶などはない。めちゃめちゃ暇になるところだった。睡魔を持ってきておいてよかった。

着陸体勢に入った今、目が覚めたこの時間で簡単に今の気持ちを書き留めておこうと思い立った。

そういえば、僕はタイ人だと思われているらしい。FAさんの喋る言葉が全く理解できず、英語が聞き取れないと焦ったが、どうやら違う。どうやらタイ語で対応されている。全く分からないから「日本人だよ」というアピールも兼ねて困った顔をしてみる。が、困った顔をしたタイ人だと思われているらしい。すごく優しげな感じのタイ語で対応された。

FAさんが去ってひと息、隣のタイ人のおじいさんに「君、タイ人みたいに見えるからネ」と日本語でなぐさめられた。

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