パンツが教えてくれたこと。のはなし


お気に入りのパンツ以外は履かない娘ちゃん。
お気に入りのパンツが履けない朝、娘ちゃんはグズる。
パンツなんて、サイズが合っていれば、どれでも大した差はないと思うんだけれど、娘ちゃんにとっては、そんなに大きな違いがあるのだろうか。

娘ちゃんがグズる度に、母親はイライラ。
イライラを隠せない性格で、早くしろ、何をしているんだと、娘ちゃんを叱る。
叱られた娘ちゃんも、悲しくて怒る。
我が家の朝の光景。
疲れる。
今に始まったことではなくて、かれこれ数年に亘っての事。

夜、寝るのが遅くなったりだとか、早々に布団に入ったのに、むしろ何だか盛り上がってしまって眠れなくなったりだとか、寝不足の不機嫌を、些細なパンツの履き心地を用いて表現しているんだろうと、その些細な問題を取り除けばグズる回数も、赤鬼との小競り合いも減るんでしょうと、ピタッとしたのが良いのか、フワッと緩いのが良いのか、はたまたボクサータイプが良いかと、ネット通販やらユニクロやらで買っては試させて、それでもやはり気にいるものは少なくて、お試しのために購入したけれど履いてもらえないパンツ達をよそに、いつも決まった何枚かのパンツのみを履く。

そろそろ身長も伸びて、パンツのサイズも合わなくなってきたかなと「お父さんが新しいパンツ買ってきてあげよっか?」と聞くと、若干浮かない雰囲気で「うん。」と。
あ、自分で選びたいのかなと「それとも一緒に買いに行きたい?」と聞くと「うん!」とニコニコ返事。
じゃあ、学校帰りにユニクロに行こうねと約束。

毎日暑くて外に出るのがシンドイ。
これから2ヶ月もこの暑さと付き合うのかと思うとウンザリだ。
だけど、あのニコニコを見てしまったら、今日は自然と足取りも軽くなる。
パンツと娘ちゃんのお陰で、憂鬱な日常に光が差した。
パンツ。

ユニクロに到着。
パンツはこっちだよーと、手を繋いで連れて行く。
学校帰りで、長い時間の滞在は難しい。
帰りが遅くなると赤鬼の逆鱗に触れかねない。
早めに選んでねーと娘ちゃんに言うや否や「これ。」と即決。
何種類もあるにも関わらず、彼女の目線は真っ直ぐだ。
「これがいいの?」と聞くと即答で「うん!これじゃないとダメなの!」

どうやら見くびっていたようだ。
彼女は立派なパンツソムリエ。
自分などには到底分かり得ない良し悪しを熟知している。
自分が男親だからなのか。
いや、赤鬼も理解できていなかったな。

いつの間にか、しっかりと自分の意思、意見を以って生活をするようになっている。
どうせ寝不足で不機嫌なんだろうと勝手に決めつけて、彼女の考えに追いつけない、理解してあげられないのは親の方だ。

パンツから見えた宇宙。
日々教えられる事ばかり。
パンツ。

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