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「星巡る方舟」と西井さんの手紙

本日BS12のよる7:00からの日曜アニメ劇場で「宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟」が放送されます。ヤマトが宇宙の彼方のイスカンダルから、地球へ帰ってくる途中にあった出来事をつづる完全新作の物語になります。メカニカル・ディテールワークスの役職名でメカニック作画のお手伝いをさせていただいております。よろしくお願いいたします。

26本の航海を経てさらに進化したデザイン、登場人物たちの意外な衣装など、とても見ごたえのある映像ではあるのですが、「2199」全体のスケジュール感と比べると「方舟」の作業時間はあまりにも少なくて。メカニック作画の作業も事前の打ち合わせはなく、素材が準備できたものから順不動で送り込まれてくる、という状態でした。そんなスクランブル状態でも、それぞれのカットには必ずチーフメカニカルディレクターの西井正典さんからの手紙が添えられていました。たとえばヤマトが未知の惑星の巨大浮遊物へと近づく場面。闇の中、右舷の探照灯が動きながらパァッと光るカットにはこんな手紙が。

CGで動くサーチライト以外、ヤマト 全描きにて…。第7話で一度おネがいしたものをうしろ半分は利用して作画して下さい。元の第7話の物はCGからではなく玉盛さんのいちからの手描きなので、CGと多少パーツのサイズ感等ちがいがあります。今回は元のCGをベースに第7話の物、盛りこんで下さい。パーツの位置、サイズはCGあわせで変更になってもいいです。その辺りはなりゆきで調整して下さい。

第7話で、とあるのは「2199」第7話、古代と山本が艦外作業を行う場面で、近しいアングルのカットを担当させていただいたことがあって、その流れでこのカットも。というお話で。3DCGから出力していただいたアタリを元に、第7話でのそのディテールと、このカットのために玉盛さんが部分的に描いてくださった参考をドッキングさせて、CGで動く部分以外、全描き、全部作画にしてくださいという指示になります。「全描きにて…」の「…」部分に、大変なんですけど、ここはやはりね、「2199」なので。という西井さんの微笑む顔が見えるようです。どういう方向で作業すればよいのか、また描くときの基準をどこにおけばよいのか、作業者が迷いそうな部分をやわらかな言葉で、けれど、確実に抑えた指定に、西井さんの経験値の高さと面倒見の良さを感じます。

こうした手紙…作画用紙に走り書きされた、的確な指示があったおかげで、えぇっあの公開日で、いまこの作業!?という日程でもあまり動揺することなく作業ができました。公開時は作業が画面に反映されていなかったり、えっ作業中は作業部分の情報しか送られてこなかったけれど、こういうお話だったのですね。など、むしろ完成後に動揺した部分も多い作品ではあるのですが、先の見えない航海の筋道を照らす探照灯のようだった西井さんからの手紙は、いまでも大切にとってあります。

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