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「新たなる旅立ち -全記録集- 」 に記録されていないもの

「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち -全記録集- COMPLETE WORKS」が発売中です。設定資料集をはじめ、ストーリーダイジェスト、文芸資料から対談まで盛りだくさんの一冊です。担当させていただきました設定画もいくつか掲載していただいています。

そのうちのひとつ、コスモパイソンのコクピットの設定画は、玉盛さんのコンセプトイメージをもとに「2205」的なデザインラインを模索しつつ盛り込みながら作業、パーツのバランスなど、玉盛さんからの監修もいただきながら仕上げていった、思い出深い設定です。

これまでの機体よりも深めに腰掛ける、独特なつくりのこのコクピットのヘッドレストやコンソールパネルには、ギザギザのラインが強めに入っています。角度がつくと雷のようにも見えてくるこのラインは、この機体の企画初期の名前「コスモライディーン」を意識したものだったりします。

コンソールパネルを正面からとらえた設定画は、本編でのメカ作画監督修正がそのまま設定画になっていて、上のほうにカットナンバーも書いてあります。うーむディテールの多い設定だナア、作画するとなると大変だナア、誰が描くことになるんだろうーなどと思っていたらこんなことに…というかたぶん、コスモパイソンのコクピットが映るカットはぜんぶ作画監督作業をしているはずです。

前半のカラーページには、玉盛さんによるコスモパイソンのラフイメージ、各部の機能説明とともにコクピットのコンセプトイメージも掲載されているので、比べてみるのも一興かと。

本を読んだとき、作業からだいぶ時間がたち、久しぶりにみる設定画の数々が、なんだか妙に新鮮に映りました。確かにやったはずだし、こうしてコスモパイソンのコクピットのことをすらすら思い出せるぐらいだし、設定画にいつも入れているサインだってちゃんと印刷されている。だけど、どこか自分の仕事ではない気もするというか。

「ヤマト」の仕事は、デザインをひねり出してゆく設定モード、玉盛さんや石津さんの設定の魅力を伝えるメカ作画監督モード、土門がんばれー、雪さん男前、、と応援するファンモードへと、時と共にフェーズが移行してしまうから、というのもあるのでしょう。

でも、もしかしたら。「2205」では、これが自分の仕事だ!みたいなこだわりをこじらせる隙間もないくらい、目いっぱい、夢中で仕事をしていた、ということなのかもしれません。たくさんの設定画が並ぶ本の中に「自分」が記録されていないことが、そう感じるくらいに、それが作品に対してまっすぐ捧げられていたことが、むしろ嬉しく思えてくるのです。

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