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「ファイブスター物語」最新刊の高すぎるFSS純度

「ファイブスター物語」第16巻を読みました。その大半で描かれるのは悪魔との戦い、そして神々の世界。連載中は、うっわ今月もなんかすごいデザインが1ページまるまる使って出てきた!という、びっくり箱みたいな、デザイナーズハイとでもいうべきワクワク感があったのですが、一冊にまとまってみると、また違った味わいがあって、おもしろかったです。

悪魔との戦いは単行本でいえば第6巻からチョイチョイ入ってくるようになった要素ですが、ラキシスが女魔帝の手のひらに乗っている場面には、第3巻のラスト、クローソーの未来回想の中にある絵を想起させるものもあって。後半の神々の世界に登場する勢力は第5巻の頃から始まった世界とつながっていたり、さらには第11巻あたりから暗躍していた謎の存在システム・カリギュラについての回答もあったり、時を重ね、拡張してゆく設定の総決算のようなエピソードになっていたように思います。

また、「なんかすごいデザイン」の後半戦も、その存在だけは語られていた「ビュランコート」のおひろめはあるものの、多くは「1986 MAMORU NAGANOカレンダー」で描かれていた、ほんとうにむかしのデザインや、扉絵や設定集で発表されていたデザインの最新アップデート版であったりもして、ますます総決算感を感じさせるものがありました。この流れの中に登場するツノのあるロボットは、発表時はほんとうに子どもだった頃なので、ついに来た!喜びをそこまでつよく噛みしめることができなかったのがちょっぴりくやしいところです。

すごいデザインたちをひとつずつ思い返してみると、神々の世界の存在だったり、作中でメインを張っているロボットとは違うロボットだったり、「重戦機エルガイム」からの流れとは別の場所で生まれたデザインばかり。第6巻や第5巻で生まれた設定や概念も、ペンタゴナワールドとは完全に別なるもので。序盤のヨーンやクリスティンといった登場人物のチョイスも含めて、第16巻は「エルガイム」のその先で生まれてきたもの、「ファイブスター物語」のために生まれてきたものが結集した、かつてないまでに純「ファイブスター物語」だったのかもしれない。なんてことを、デザインの大洪水に息切れしつつ、ページをめくりつつ思うのでした。

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