「新たなる旅立ち」の「軍港」のなりたち
「宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち」に参加させていただいております。プロップデザイン、セットデザイン、メカ作画監督を担当させていただいております。よろしくお願いいたします。
TVでの放送もありました第一話では、新人クルーたちの訓練が行われる軍港をデザインしています。お話をいただいた段階で、後ろに山が見える地形や、カモメがくつろいでいるような雰囲気、という、完成映像にもあるコンセプトはすでに決定していました。ただ、打ち合わせをしてみたら、映像の中で何が映るのかというプランニングはだいたいできているにしても、その背景にあるものはまだふわっとしている感じもあって。
いちど滅亡しかけた地球は、コスモリバースシステムの力で甦ったものの、その力は星を復活させるものであって、あまり人間に都合の良い甦りかたをしているわけじゃない、というのは「2202」の設定としてある。緑豊かな軍港も、その風景に至るまでにはいろいろなことがあったのでは。という思いつきから設定を、軍港の背景にあるものを考えてゆきました。
まず、軍港があるのは、コスモリバースシステムの効果で、自然が豊か過ぎる、周囲にはかつて存在していなかった島まで隆起してきているような状態になった土地を切り開いて発展してきた…というか発展途上にある地域と想定。…と、頭の回路をまわしている途中で、あっそういえば1979年版「新たなる旅立ち」の港の場面ではガントリークレーンがちょいちょい映り込んでいたなというのを思い出して。開発じたいが大変だったから、高層ビルの立ち並ぶ都市部に比べると牧歌的だし、ガントリークレーンもあるような、ちょっとローテクっぽい港になっている、ということにしてみました。
港の雰囲気とあわせて、まわりの居住地も、海辺や山あいに、似たつくりの集合住宅が寄り集まったような、取り急ぎな感じにしてみています。それでいて港からちょっと離れると、高めのビルや大型公園があったりもして。きれいに整っているよりもどこかアンバランスなほうが、過渡期にある世界で、いろいろな思惑で物事がつくられている気配が、いってみれば活気、が漂っている気がする、という、日ごろ街をみていて思う感覚も込めてみています。
そうして考えた設定の途中段階、ラフ稿は通常のアニメ制作では監督のかたにチェックしていただいて調整してゆくのですが、この設定画では、福井晴敏さんからもご意見をいただいたのが印象的でした。復興からまだそれほど経っていないので周辺の街はあまり規模が大きくないこと、それから、建物は「2202」の、やはり急場でつくられたであろう第11番惑星の街並みの様式に似ている、という設定案を福井さんからいただきました。その案と、安田監督からのご意見、それから「2199」から続く建物…というか風景のデザインラインのようなものを織り込みながら、設定画は具体的なかたちになってゆきました。
ちなみに現在、公式サイトさんで配布されております「地球 軍港」壁紙は、実際の背景の下描きにもなる絵として作成した設定画に、美術スタッフのかたが色をつけてくださったものになります。山のふもと付近の建物など、小さいのでシルエットのみ、みたいになっていた部分もきっちり立体的に描いていただいていて、感謝です。
じつは最初のラフ稿の段階から、この軍港は現在の世界にもあるとある地域、という前提で安田監督や福井さんとデザインのやりとりをしていて。完成した設定画にも「2205年の〇〇という想定です」と記してあります。それがどこであるのかは、あくまで個人的な場であるここでは伏せておくとして。もしも設定画が公開されることがあったとき、肉眼でご確認いただければ幸いです。
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