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デジタル絵描き2年生

絵を描くツールを鉛筆からデジタルに切り替えてから2年半たちました。アニメの仕事では、発表されているものだけでも8作品、気がつけばそれなりの数の絵を描いてきたことになります。

当初は、デジタルに切り替えたら消しゴムかすも発生しなくなるし、クリーンでクールにプロジェクトをプログレッションしてゆけるのではなどと考えていたのですが、そんなことは全然なくて。消しゴムかすが発生しなくなるということは、消しては直して精度を高めてゆく過程を、これまで以上に積極的にできるということで。むしろいまは、鉛筆を使っていた頃以上に泥くさく、一枚一枚の絵をガシガシと力いっぱい描くようになってしまっています。おかしいな、くーるなでじたるあーてぃすとになるはずだったのにな。さておき、泥くさい絵描きとしては、あるていど描き進めてしまってからミスに気づいたときも、消しゴムで紙がぐしゃっとなったり、消しあとの凹みが残ったりするのを気にせず、ザクっと直せるのもデジタルでの嬉しいところです。

そもそもが、とあるタイトルでいままで鉛筆で作業を進めてきたけれど、この発注量を現在の環境でさばくのは難しい!ならばツールを変えてみては。というひらめきから始めたデジタル作業。自分がやるべき作業を厳選、さばききれないぶんは知り合いや他のスタッフのかたにお願いする、という仕事のやりかたもあったと思うのですが、当時はその選択肢は考えられなくて。思い入れのある作品だったし、その直前のタイトルでの作業で不完全燃焼な気持ちが強かったので、今度はきちんとやり遂げたい。という思いもありましたし。

そんな、どうにかしたい!という願いが出発点だったのもあり、以降ずっと、どう描いたらもっと早くなるか、どうしたらもっと上手になれるのかを考えて、モニターや液晶タブレットに向かっている気がします。鉛筆を使っていた頃「大体このぐらい」だと思っていた作業のもっと先がまだまだたくさんあることが、子供の頃から、また、仕事になってからもそれなりに描いてきてなお、まだうまくなれる余地があることが、嬉しくて。

それまで鉛筆の絵だったのが、ある日突然デジタル仕上げ、しかもまだ不慣れな画稿を提出したとき「これじゃ困ります」とか言わず受け容れてくださった制作会社のかたや監督のかたにはとても感謝しています。その作品、TVアニメ「警視庁 特務部 特殊凶悪犯対策室 第七課 -トクナナ-」は、このときの選択がなければ現在の自分はなかったと思うし、制作中の、この作品好き!やり遂げたい!という気持ちとはまた別の種類の思いもたくさんある、とても大切なシリーズです。

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