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「僕と先輩の100%のアニメnote」第12話
「先輩、その薄い本の中には何が書いてあるんですか?」
先輩が手にした本の表紙には、セーラー服に似た戦闘服を着た美少女の絵が描かれている。「Crystal記念本」という文字も書かれている。美少女の頬は、やけに赤い。胸元もすごく開いている。もしかしたら、熱でもあるのかもしれない。大丈夫かな。
「この本はお前にはまだ早い、とだけ言っておこう、昴。さて、今日の課題のアニメだが。」
「そういえば、
「僕と先輩の100%のアニメnote」第1話
「ばかもの!それはムーンではなくヴィーナスだ。お前はなにもわかっていない。」
「だって先輩、どちらもアタマが黄色いじゃないですか。それから、顔が近いです。」
「キイロではない!あれは美しい、黄金色の髪なのだ、昴よ。」
「近いですから。」
僕の先輩はオタクだ。そして僕のオタクの先生だ。放課後の先輩のこの部屋が教室だ。いまは宿題、つまりこのまえ先輩に借りたDVDの、感想を報告しているところ。セ
「僕と先輩の100%のアニメnote」第11話
「カン違いしないでくださいね、先輩。別に僕、先輩のことなんて、なんとも思ってはいないんですからね。」
「なッ、バカな!?俺の後輩が、俺にだけツンデレすぎてつらいのだが!?…って、おもわずライトノベルのタイトル風味で驚いてしまったではないか、昴。今日はどうしたのだ。俺のよく知る、飲み込みはよくないが、言い換えれば素直ではあるお前は、一体どこへいってしまったというのだ。」
「このドーナツだっ
「僕と先輩の100%のアニメnote」第10話
「先輩!結婚するって、本当ですか!?僕ぜんぜん知りませんでした。」
「ばかもの。その問いに答えるべき時は、今ではない。太陽が沈むまで、残りわずか、俺とお前には、やるべきことが他にあるはずだ、昴よ。」
先輩の言葉が、僕の唇のうごきをふさぐように、重なる。先輩は僕の知りたいことを、いつもはぐらかしてばかり。だけどもう、いつまでもこんな関係をズルズル続けていちゃいけないんだ。聞かなくちゃ。勇気を
「僕と先輩の100%のアニメnote」第9話
「先輩。僕、知りませんでした。先輩が、あんなに甘い声を出すなんて。」
夕方の部屋。ベッドに深々とその身を横たえる先輩に、僕は言う。学校では決してみられない、無防備な姿。放心したような、うるんだ瞳を、夕陽が赤く照らしている。先輩のこんな姿を見ることになるなんて、昨日まで想像もしていなかった。
「昴よ、この部屋で起きたことは、ほかの誰にも言ってはならない。これは俺とお前だけの秘密だ。」
「僕と先輩の100%のアニメnote」第8話
「先輩、このブシの『ブ』みたいな漢字って何て読むんですか。このアニメを観ているあいだ、ずっと気になっていて。」
「ばかもの!これは『二』と読むのだ。本当に、お前はなにもわかっていないのだな、昴。『第壱話』の次の回が『第弐話』と表示されていた時点で、解読できたはずだ。」
「あぁ、アレって『イチ』って読むんですか!なにを『売』っているのかなって、すごくフシギだったんですよねえ。」
「…お前の
「僕と先輩の100%のアニメnote」第7話
「先輩、はっ、はやく…ください!僕、もうガマンできないっ」
「ばっばかもの!?いったい何事だ、昴。部屋に入ってくるなり、シャツのボタンをはだけて。」
学校から数100メートル。もう野球部の声も、校内放送のくぐもった声も聞こえてこない。夕陽のさしこむ部屋には、先輩と僕のふたりだけ。身体が熱い。心臓のリズムが、いつもよりずっと速い。でも、いま、ココロが求めているこの気持ち、もう抑えることはでき
「僕と先輩の100%のアニメnote」第6話
「あっそれってたしか、連邦軍の『白いヤツ』とかいうアレですよね。」
先輩が取り出したBlu-rayの箱には、白くてV字型のツノがついたロボットの絵と、茶色で癖ッ毛の髪の少年の絵が描かれている。どちらも、オタク初心者の僕でさえ、見おぼえがあるキャラクターだ。
「ほぅ。いまや定番となっている『白い悪魔』ではなく、そちらの呼称を使うとは。お前はこのアニメのことをよくわかっているようだな、昴。そ
「僕と先輩の100%のアニメnote」第5話
「先輩!僕、先輩が好きです!」
「ばっばかもの!?いったいなにを言い出すのだ、昴。俺とお前は、アニメの魅力を教え、教えられる関係であるはずだ。その境界のあいだには、いろいろとこう、越えてはならない一線というものがあってだな」
「え。僕、先輩が貸してくれたアニメに出てくる、女の先輩が好きですって言ったんですけど。どのキャラが良かったか、って、聞くから。」
「あ。あぁそうだったな。そういう
「僕と先輩の100%のアニメnote」第4話
「それでは聞かせてもらおうか。今日の『課題』の感想を。あの劇場版の感想を。」
「えぇと、どうして機関車が宇宙空間を走っているのか、よくわからなかったです。あと、どうしてあんなに、色々なところにメーターがついてるんですか?」
「ばかもの!お前はあの劇場版に、なにを観ていたというのだ。少年が大人になる寸前の、青春の光と影。その儚くも甘美な輝きが、たくさん詰まっていたはずだ。本当に、お前はなに
「僕と先輩の100%のアニメnote」第3話
「先輩せんぱい、この本棚にいっぱい並んだ薄い本、背表紙がとてもキレイですよね。いったい中には何が書かれているんですか?」
「・・・・・・・・・・・・宇宙の真理。と、だけ言っておこう。ところで昴よ、『課題』は観てきただろうな?」
「えっあっハイ、もちろんです。ヒーローの着てるスーツに、知ってる会社の名前が入っているのが、おもしろかったです。牛角とかペプシとか。ところで先輩、さっきから机の上に、
「僕と先輩の100%のアニメnote」第2話
「ばかもの!いまはクラリスの話をしていたはずだ。いつ彼女が風の谷にいたというのだ。本当に、お前はなにもわかっていないのだな、昴。」
「先輩、いたいでふ。アゴをつかむ手が。」
「100万歩ゆずって、監督が同じだから、ヒロインが似て見えても、仕方ないとしよう。だが、作品を混同した感想を認めるわけにはいかない。」
「先輩、先輩の目が伯爵みたいにギラギラしてまふ。」
僕の先輩はオタクだ。そして