手放してしまった「アリス」と「ピーターパン」のこと
成長する過程で手放してしまったものが、おとなになってから恋しくなることがある。ふと「あんなものを持ってたな」と思い出して、それまではちっとも惜しくなかったものの不在が、じりじりと存在感を増していく。たとえば今、小学校の4年生くらいのときに持っていた「不思議の国のアリス」と「ピーターパン」が恋しくなっているみたいに。
たぶん両親のどちらかが実家で見つけて、私のために持って帰ってきてくれたものだったと思う。茶色い厚紙のケースに入った、おとな向けの小説本だった。アリスとピータ