退職したいと伝えた夜。

職場でもらった猫のカタチをしたクッキーが可愛くて食べられなくて、持って帰ってきた。

今日はあいにくの雨模様。

という慣用句はあれど、雨はすき。


背中側から降りそそぐ雨を、どうしたものやら、と。
傘の向きを、前に、後ろに。右に、左に。

ちょっと、斜めに。

うん。そうだね。ぜんぜんだめだね。

ちょっと、ふくらはぎらへんが濡れてきた。

つめたい。スーツが張りつく。ぴと。



家に着き、スーツから甚兵衛へ着替えて、換気して。
ひさしぶりにパソコンに向かう。

人生でも数度しかない貴重な夜を、たしかに、自分の胸に置いておくために。


パソコンを開いて、猫クッキーをもってくる。
冷蔵庫をあけて、29円で買った
もーめんとさんだるうっどあんどぶるーべりーをあわせる。

かわいい猫は食べづらくて、
頭か尻尾かなやんで、おなかから食べてみたけど、いちばん可哀想な気もしてきた。

ごめん。


うん。
あまい。おいしい。

やさしい。


ぷしゅっ。


香るフレグランス。

わ、炭酸。びっくりしたー。




ということで。


むかしから、スロースターターでマイペースなのは変わらず。




課長と話して思ったのは、話しやすいなぁ、ということ。

久方ぶりに、有難さに気づく。


最初は話しが通じなくて、互いに苦労した。

だって、決めてくれないんだもんさ。


でも、1年ちょっとくらい経って、向こうのペースがわかって、

2年くらい経って、好き嫌いやこだわりがわかって。

話し方や内容を変えたら、するする動くようになった。

実は、単純な人だった。


最初は表面上で付き合ってただけのあちらのボケは、最近はこちらのツッコミがかみ合ってきて、なかなかおもしろい。
ふたりの世界になる。けっこうすき。


上司は、ふざけてるくらいがちょうどいいらしい。

あのユーモアセンスはほしい。

っていうか、もっといろんなところでもっとふざければいいのに。

勉強させてもらったなぁ。





2枚目の猫クッキー。

今度は頭から、ガブリ。

うん、頭からのほうが可哀想だ。
飛び出た尻尾が目立つ。


何かに困って対応を変えてみたけど、変えないほうがよかったなんて、よくある話し。



キャリアもいっしょで、変えないほうがいいこともある。

それはそうだろうなぁ。


でもその生き方は、つまらない。

つまらないというか、怖い。


変化する怖さと、変化しない怖さ。

このおもしろい矛盾は別の機会に考察するとして、とにかく怖い。

今の仕事を続けていくほうが怖い。


それは、退職理由を聞かれたときに、本音で出た言葉。

今の仕事でマネジメント側のスキルを上げても、自分のプレイヤーとしてのスキルが上がらないなら、そこそこの成果しか出せないマネージャーになる。

それは怖い。

だったら、30代前半のうちに、自分のプレイヤーとしてのスキルを上げたい。

そのためには、スピード感の早い職場でいろいろ経験したい。

教育分野しか知らずに30歳を迎えようとしている。

HRなら、採用、人事制度、HRBP。
あるいは、事業部門に、もうすこし軸足を伸ばしたい。



僕の転職は、

「もう、ここにはいられない」

そう感じたときになされるらしい。


逆に、そう感じない限りは、踏み出せないらしい。

今回は、それだった。



まとまらない中で、急遽お願いした面談。

最初に伝えたときに出た「怖い」という言葉。


人生の選択は、そのまま継続する怖さを感じたときに、それがもう、どう変えようもない状態のときに、つまり、退路が断たれたときに、僕の場合はなされるらしい。


ポジティブな理由で手放して、次のステージに向かう人に憧れるけども、現状の自分はこういう状態。

ならそれを受け止めて、無理に変えようとする必要もない。今の自分のスタイルはそれだから、変わりたかったら、未来の自分が変えるだろう。

今は自分の感覚を信じて、お世話になった方々に最大限の恩返しをして、前に進む。
もうすこし、空気に身を委ねて、力を抜く。そのほうが良い。




「今は退職か残るかの0/1で考えてるから、部署異動も0.2くらい考えてみて」なんて、控えめにいただいたアドバイスを僕は真面目に考えたい。

上司の役割として伝えてくれたのかも知れないけど、表面上で受け取って流すのは、僕のなりたい人間像じゃない。


今の職場に転職してから起きた自分の変化。

・人に正面から向き合えなくなった。相手の背景が考えられなくなった。
・人の話を聞けなくなった。言い聞かせるようになった。
・感情の尊重よりも、ロジックの正しさを要求するようになった。
・同僚や部下のメンタル不調に慣れすぎた。
・個人の人生よりも、会社の正論を話すようになった。
・怒りやすくなった。相手を否定しやすくなった。
・現場よりも、上司を見るようになった。
・表面上のやり取りが増えた。
・感情や感覚が薄くなった。
・感謝がしづらくなった。
・自分は悪くない、という感覚が増えた。
・自分はこんなにやってるのに、という感覚が増えた。
・誰かに見てもらいたい、という感覚が増えた。


こうやって書くとメンタル不調では、と心配されるかもしれないが、たぶん、そんなことはない。
プレイヤーではなく、マネジメント側という立場に適応した変化である。


とはいえ、ブラックな職場だと思われても嫌なので、もちろん良い面もある。

・自分の意見を言えるようになった。
・自分に、やれる感覚が得られるようになった。
・社会全体の視点を持てた。社会的弱者の現状を知った。
・大企業や組織の構造が理解できた。
・あるていど、やり切れた。


と、書き出してみたものの、やはり思考寄りが多いし、数も半分くらい。
まぁそれでも、ひとつ、確実に言い残しておきたい。

・最初は苦手だと思っていた人と、信頼関係を結べる経験がたくさんできた。


今の時代は、付きあう人を選べる。

すぐに繋がれて、すぐに切れる。

そのときその場所で、自分が一緒にいたい人といられる。


でも会社って、そうじゃなくて。

苦手な人も嫌いな人もいる。しかも、長時間。



すると、時間がもたらす変化はすごい。

最初に好きだった人も、嫌なところがみえて嫌いにもなるし、

最初に苦手だった人も、話しがあうようになって好きにもなる。


まぁ、最初から嫌いだった人が、まだマシになったことはあれど、好きになったことはないか。


この体験は、時間をかけなければできなかったことで、それはなんというか、とっても面白い。

最初から好きだった人とでは、出ない奥深さがある。

こういう体験でしか得られない奥行きがある。

ふしぎな関係性。



そんなふうに、一言で表現しづらい関係性のなかで行われた面談は、
課長からの、強い共感を得られた。

「藤枝くんが言っているのは、こういうことだね。それはね、私もね、わかる。毎日のように感じてる。笑」


そこは共感していいのか?
なんて思うけど、まぁ、この人らしいなぁと、ありがたく頂戴する。
たぶん彼の、本当の、心からの、本心だから。笑



課長との会話は、いろいろ忙しい。

真面目なのか、ふざけてるのか、本心なのか、タテマエなのか。

雨に降られているときのように、

前に、後ろに。右に、左に。

相手にあわせて仕事の進め方や表現を変えてみる。

どこかで、ハマる。おもしろい。




猫の尻尾を口に入れて、思ったより長くなった本記事を、ひとまず締めくくりたいと思う。


ずっと抱いていた違和感。

あまり直視しないようにしていた感覚を、上司に話す機会を使って言葉にしてみれば、とうに答えは出ていた。

職場を変えることは、おそらく、もっと早く自分のなかで気まっていた。

それは薄々、ながらも確実に、わかっていたこと。

僕はそれを、もっと早くから行動しておけばよかった、なんて思わないし、
今、このタイミングで良かったと思う。



転職して3年半。

「仕事はできるかもしれないけど、ちょっと嫌なやつ」に成り下がった僕は、過去の自分のnoteをみて驚く。

たまたま2つ開いた記事がいいこと書いてある。

昔のほうがイイやつだったな、と感じるし、
昔に考えたことが確実に今の自分の考えの軸にあるって感じる。

昔の自分に、教わる。



過去をふりかえることは少ない僕だけど、確実に過去から積み上げて、今がある。

有難い。


それなら安心して、今を体験し、自分のなかに落とし込んだら、次に繋げられる。
なるべく落とし込みたいけど、成るべくして成る気もする。



いろいろ変わった僕だけど、
ずっと変わらず抱き続けた言葉でパソコンを閉じよう。


6年前にコーチングスクールに通っていたころ、
ご紹介いただいた言葉。

今のほうが、前よりも身に染みる。


『冒険は最良の師である』

~未知なるものにひるまず困難に立ち向かって進むことこそが、目標に到達する道であり、人としての成長にとって最良である~

好きなことばかりやらず
居心地の良い場所ばかり選ばず
気の良い友達ばかりを作らず
他人事や社会に無関心を決め込まず
嫌なことでもあえて挑戦し
自由のきかない場所にも乗り込んで行き
世話の焼ける友だちを作り
社会の理不尽には怒れ

東京農業大学  大学学生生活訓
https://kbcoach.exblog.jp/25057371/




2024年7月12日
えだちゃん。


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