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国語の授業のネタ 徒然草「猫また」と1970年代に広がった「口裂け女」

「奥山にねこまたといふものありて、人を食らふなる」は徒然草第八十九段の冒頭部分です。「徒然草」は鎌倉時代末期に兼好法師によって書かれた随筆ですが自然や人間について書かれた感性や考えの鋭さがおもしろい。

第八十九段では、このあと「この頃では山奥でなくても、この街中だって、猫が年取ると猫またになって、人の命をとる」と噂が大きくなります。ある法師が会があって夜遅くなった夜道をこわごわと帰っていくと猫またに首のあたりをかみつかれます。腰が抜けた法師は、持ち物ごと小川に落ちてしまいます。近所の人に助けられ、九死に一生を得ましたが、実は法師の飼い犬が、主人の帰りを知って、喜んで飛びついたという落ちが付きます。

SNSがある現代でも昨年の3月頃だったか「トイレットペーパーは中国で作られているのでなくなるのではないか」という噂が全国を駆け巡りトイレットペーパーの買い占めに走った人が大勢いたことは記憶に新しいです。

1970年代後半の昭和の時代に「口裂け女」の都市伝説が全国に広がった話を聞いたことがありますか。

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夜道を歩いているとマスクをした女の人が「私きれい?」と聞いてマスクを外すと女の口が裂けている。追いかけてきて下手すると殺されてしまうという。当時大学生だった私は口裂け女の話を友達と噂し合っていたことを思い出します。

発信源は岐阜の日日新聞の記者だった村瀬 睦さんが書いた「編集余記」というコラム欄です。ネタは当時小学校1年生だった末娘が「怖い。怖い。」と話していた学校中もちきりだった口裂け女の話です。高度成長期に受験競争が激化し塾に通う小学生が増えてきて学区を越えて噂が広がったのではないかと言われています。

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この話は予想を超えて隣接する滋賀と愛知に伝わりそれが2か月余りで長崎に伝わります。当時日本有数のアパレルの街だった岐阜では生産から販売まで一気に引き受けていました。当時の長崎と岐阜は強い結びつきがあり長崎では農閑期に縫子さんが九州中から出稼ぎに来ていて織物工場で働いていたそうです。長崎では九州中に岐阜では全国から買いつけに来るお客人に瞬く間に口裂け女の噂が瞬く間に広まって行き長崎新聞にも載ったほどでした。

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口裂け女の都市伝説が全国に広まったのは社会的背景が影響していてリアルタイムに知っている私は何とも感慨深いです。「徒然草」を学習する時、「実はね。昭和の時代にも本当にこんなことがあったんだよ。」とちょっとした話のネタとしていかがですか。

参考文献;ビギナーズクラシックス日本の古典「徒然草」角川ソフィア文庫  NHKBS 2021年9月28日(月)初回放送 10月7日(木)再放送     アナザーストーリーズ運命の分岐点「口裂け女伝説うわさの”真相"」

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