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【2023年版】株式投資型クラウドファンディング総まとめレポート

2023年も残すところあとわずか。今年は、イークラウドとしても印象的な出来事の多い1年になりました。最大の注目ポイントは、政策動向です。

2022年の11月に作成された「スタートアップ育成5か年計画」の中で株式投資型クラウドファンディング(以下、株式投資型CF)について具体的な方針が示されたことをきっかけに、2023年には金融制度の重要事項について協議が行われる金融審議会でも踏み込んだ議論が行われ、法改正の方向性について検討が進んできています。

2023年の主なできごとを振り返ってみましょう!

■株式投資型CFとは?

はじめに株式投資型CFについての説明です。株式投資型CFとは、個人投資家がインターネットを通じて非上場のベンチャー企業に対して少額から投資できる仕組みです。

現在、日本ではスタートアップに充てられる成長資金は約9,000億円(出所:INITIAL「2022年 Japan Startup Finance」国内スタートアップの資金調達額)とされていますが、アメリカでは約28兆円(出所:CB Insights「State of Venture 2022 Report」米国のベンチャーキャピタル投資総額)と圧倒的な差があります。そこで注目されているのが個人の金融資産です。

日銀の統計によると、2023年9月末時点の個人の金融資産の総額は2,121兆円とされ、1年前と比べても101兆円増加しています。

この個人の金融資産のうち1%だけでも、スタートアップ投資に循環させることができれば、約21兆円の成長資金を創出することができます。この役割を担うのがイークラウドを始めとした株式投資型CF事業者の一つの使命だと考えています。

■2023年の振り返り

株式投資型CF市場総括

日本証券業協会の統計によると、制度開始から2023年10月末までの株式投資型CFの累計取扱件数は618件、調達額は127億6,921万円となりました。

「骨太の方針」および「新しい資本主義」の実行計画改定版に株式投資型CFが追加

株式投資型CFに関する政策の進捗に関しては、以下の資料等でも確認することができます。

2023年5月
自民党・新しい資本主義実行本部スタートアップ政策に関する小委員会「『スタートアップ育成5か年計画』の実現に向けた提言」

◯株式投資型クラウドファンディングの拡充
株式発行者の年間資金調達上限について、米国等の諸外国の事例を参照し、開示等の必要な投資家保護策と併せ、例えば現行の1億円から5億円にする等の拡充を検討すること。また、投資家の投資上限について、現行の50万円から例えば100万円にする等、年収や資産に応じて投資上限の拡充を検討すること。

https://storage2.jimin.jp/pdf/news/policy/205815_1.pdf

2023年6月
内閣官房・新しい資本主義実現本部/新しい資本主義実現会議「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2023改訂版 」

⑩株式投資型クラウドファンディングの活用に向けた環境整備
株式投資型クラウドファンディングは、非上場企業が株式を発行し、インターネットを通じて多くの人から少額ずつ資金を集める仕組みであるが、現在の発行総額上限(1億円)について、米国等の諸外国の事例を参照し、開示等の必要な投資家保護策と併せ、例えば現行の1億円から5億円にする等の拡充を検討する。また、投資家の投資上限について、現行の50万円から例えば100万円の投資を可能とする等、年収や資産に応じた投資上限とすることを検討する。これらについて、来年末までに結論を得る。

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/ap2023.pdf

2023年8月
金融庁「2023事務年度 金融行政方針」

⑴スタートアップ等の成長を促すための資本市場の機能強化
スタートアップの資金調達や、非上場株式の保有者の換金と新たな投資を円滑化するため、非上場株式のプライマリー市場、セカンダリー市場双方の取引活性化に向けた環境整備に取り組む。
プライマリー市場については、株式投資型クラウドファンディングの活性化に向けて、必要な投資家保護策とあわせ、非上場会社による発行総額上限の拡充を検討するとともに、投資家の投資上限額を年収や資産に応じたものとすることを検討する。また、特定投資家私募や少額募集のあり方など、スタートアップ企業の資金調達に係る制度について検討を行う。

https://www.fsa.go.jp/news/r5/20230829/230829_main.pdf

2023年12月
金融庁・金融審議会 「市場制度ワーキング・グループ・資産運用に関するタスクフォース報告書」

②投資型クラウドファンディングの活性化
ア.投資型クラウドファンディングの発行上限等
クラウドファンディング(CF)は、スタートアップ企業がインターネットを通じて多くの人から少額ずつ資金調達する仕組みであり、2015 年に投資型CF制度(少額電子募集取扱業務に関する規制枠組み)が導入された。
我が国においては、企業が投資型CFにより発行可能な有価証券の総額は年間1億円未満とされているところ、諸外国においては、開示等の投資家保護上必要な措置を講じた上で、より高い金額の資金調達を可能としており、米国では500万ドル(約7.5億円)、欧州では500万ユーロ(約8億円)を上限としている。
我が国において、スタートアップ企業における資金調達需要は年々増加しており、年間1億円を超える資金調達、特に、足元では1億円以上5億円未満の資金調達を行うスタートアップ企業が多く存在している。そうした資金調達ニーズの動向を踏まえ、1億円以上の資金調達をする企業が必要な開示を行うことを前提に発行総額上限を引き上げ、5億円未満とすることが適当である。

https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20231212/01.pdf

株式投資型CFが日経新聞1面TOPを飾る!

こうした法改正に向けた調整の進捗を受け、 2023年10月18日、日本経済新聞の1面トップに株式投資型CFについての記事が掲載されました。

記事の要旨は以下の3点です

  • スタートアップの年間調達上限額を1億円未満→5億円未満へ拡大

  • 個人投資家の1社あたりの1年間の投資上限額を年収などに応じて100万円以上に

  • スタートアップの情報開示の負担軽減

▼日経電子版の記事はこちらから

株式投資型CFの国内調達最高額を更新

2023年7月には株式投資型CFを活用した資金調達でアドレスが505名の個人投資家から9,930万円を調達し、国内最高額を更新しました。

▼アドレスとは
全国270か所以上(2023年6月末時点)の拠点を持つ「住まい」のサブスク「ADDress」を展開。「多拠点生活」のパイオニアとして、新しい市場の創出を目指す。売上、会員数、物件数のいずれも右肩上がりの成長を実現させると同時に、空き家活用、地域活性化といった「社会的インパクト」にも向き合う。

これまで、国内の株式投資型CFはシード・アーリー期の利用が中心でしたが、アドレスは、シリーズCラウンドでイークラウドを利用しました。ミドル期のスタートアップの株式投資型CF実施という意味でも非常に大きな意義があると考えています。

また、今回アドレスは、関係者人口を増やすことを目指し「コミュニティラウンド」と銘打った株式投資型CFを国内で初めて※実施しました。(※イークラウド調べ)

株式投資型CFを使ってサービスに愛着を持ったユーザーや企業のファンやコミュニティなどから資金調達することは、海外では「コミュニティラウンド」と呼ばれています。

海外では「コミュニティラウンド」の事例が増え続けており、多くのミドル期・レイター期のスタートアップがファンやユーザーを株主として巻き込む目的で活用しています。

本案件をきっかけに、今後ミドル期・レイター期のスタートアップによる「コミュニティラウンド」を目的とする利用が増えることにも期待が寄せられます。

▼アドレスのコミュニティラウンドの事例を見る

イークラウドのパートナーVCが50社を突破

イークラウドでは、提携するベンチャーキャピタル(以下、VC)から出資を受けた企業がイークラウドを通じて資金調達を行った場合に優遇プランを適用しています。今年、新たに16社のVCがこの取組みに参画し、提携VCの合計が50社を突破しました。

今後、スタートアップが株式投資型CFを使って1年間に調達できる上限額が5億円未満に引き上げられれば、シード期のスタートアップだけでなくミドル・レイター期のスタートアップが株式投資型CFを資金調達の選択肢に入れやすくなり、VCとの連携もこれまで以上に増えていくものと考えています。

イークラウドが特定投資家制度を導入

イークラウドでは、2023年3月に特定投資家制度を導入し、法令等で定める特定投資家の条件を満たし、かつイークラウドが承認した個人投資家について、「特定投資家」への移行受付を開始しました。これにより、特定投資家へ移行した投資家については、1社あたり1年間50万円以内(一般投資家)の投資上限額を超えて投資することが可能になります。

また、FUNDINNOでは、今年、日本証券業協会の特定投資家向け銘柄制度(J-Ships)の取扱協会員として指定を受けたことが発表されています。同社が既に展開している特定投資家向けの投資プラットフォーム『FUNDINNO PLUS+』へ適用することで特定投資家に向けたサービスを充実させていくことが考えられます。

東京都が最大400万円の助成金を開始

東京都による「株式を活用したクラウドファンディングによるベンチャー企業支援事業」では、イークラウドを含む各株式投資型CFプラットフォームが取扱株式投資型クラウドファンディング事業者(以下、取扱ECF事業者)に選ばれています。

これは、東京都内のベンチャー企業が取扱ECF事業者を通じて資金調達を実施した場合、株式投資型CF利用に伴う手数料について東京都が最大400万円をベンチャー企業に対して助成するものです。

■海外動向(VCT)について

米国や英国でも株式投資型CFは成長していますが、ここでは、株式投資型CFとは少し違った形で、個人投資家がベンチャー投資をすることができるベンチャーキャピタル・トラスト(以下、VCT)という枠組みについてご紹介します。

VCTとは
英国で制度設計された枠組み。主に新興企業や成長が見込まれる中小企業に投資を行うことを目的とした上場投資信託の一種で、最大の特徴は個人投資家に対する税制優遇。

個人投資家向けにスタートアップへの投資機会を提供しているイークラウドとして、ベンチャーキャピタル・トラストには以前より注目していました。

2023年、政府の各種経済対策でもVCTについて触れられていたことから日本でも今後利活用が議論される可能性があると考え、本年5月にまとめの記事を作成しました。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

■まとめ:今年の総括と2024年に向けての考察

2023年を総括すると、金融政策の重要な会合において株式投資型CFの方向性に関して議論が活発に行われ、法改正に向けた検討が進んだ1年であったといえます。

2024年には具体的な法改正の時期なども明確になるものと考えています。

株式投資型CFは毎年のように少しずつルールが変化しています。起業家の方は最新の情報をご確認のうえ、資金調達の選択肢としていただければと思います。

株式投資型クラウドファンディングを活用した資金調達についてもっと詳しく聞きたい方は、代表・波多江直彦のTwitter問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

▼イークラウドのサービスサイトはこちら


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