Écristo

Écristoは物事の見方を探求しながら日常を問い直す運動体・WEBメディアです。20代のライター3人がジャンルを問わず各々の見方を提示します。

Écristo

Écristoは物事の見方を探求しながら日常を問い直す運動体・WEBメディアです。20代のライター3人がジャンルを問わず各々の見方を提示します。

マガジン

  • 関東街歩き写真録―〇〇で何が見えるか―

    関東各地を訪れたBelfast @Bell_of_Metro が写真と共に描き出す興味と感性の記録です。

  • 詩集「屋久島」

    屋久島を訪れたTaka @Takatakky49 が経験した出会いと別れ、荘厳な自然などを鮮やかに表現した詩集です。

最近の記事

Écristoとはなにものなのか その1

文責:魚の理  今更だが、読者諸賢にとって「Écristo」という言葉は聞き馴染みのない言葉だと思う。それは単純に造語だからとしか言いようがないが、どのような構成かと言うと、Écritureと-stoを組み合わせたものである。  Écriture(エクリチュール)とはフランス語で「文字・書くこと・書き物」を意味するが、フランス現代思想では非常に重要な概念として扱われる。例えば、ロラン・バルトは作家が「言語(Langue)と文体(Style)の中間に位置する文章形式」や「そ

    • 身体の"芸術"を巡る政治性について―「Santa Fe」を例に―

      文責:魚の理  身体の表象ほど政治性を帯びた芸術はない、とは言い過ぎであろうか。政治が隅々に規範を浸透させようと試みる際に、理想の身体像を流布するのは常套手段である。ミシェル・フーコーは、政治が身体の在り方を規定してきたことを次のように定式化している。近世では「主権権力」により命令される抑圧的な「臣民」であったのに対し、近代は「生権力」により規律化される「生命」として、身体は構築されてきたというのだ(藤田 2017: 1)。例えば、イタリアはファシズム期に「筋骨隆々とした古

      • 関東街歩き写真録―〇〇で何が見えるか― #3 秩父・小鹿野編

        文責:Belfastは19街区のなか。  今回は埼玉県。秩父市から小鹿野町まで向かい、歩いていきます。東京都心から向かうとすれば西武線を使うのが必然。飯能で、ある種の「けじめ」をつけて先に進みますが、日高(高麗)までなかなか煮え切らない。少しすれば「さきたま」という名に相応しくない東吾野地域の山塊の隙間に入ります。この区間は盆地都市・秩父まで輸送してくれる異世界転送装置。夢幻に浸かれるのに、しかし、飯能―西武秩父を40分で走破できることから東京まで通勤通学もできる、この曖昧

        • 静かなるかけら

          文責:特命詩人  混濁する意識を背に、目の前の指揮者が紡ぐ音楽を受ける君。ゲバ棒はためく混沌の時代に、大学の掲示板で目にしたあの溌剌とした姿は、今や過去の話となっている。  東京。山奥の長閑な農家で生を受けた私にとって、その街は刺激的で悲劇的であった。欲望という名の電車に乗ったかのように、次から次へと発せられるシグナルにただ応じるのがやっとの生活を経て、今やしがないコピーライターとして小さな広告会社に籍を置いている。  高校時代、ある小説を読んだ。確か海沿いに住む青年が

        マガジン

        • 関東街歩き写真録―〇〇で何が見えるか―
          3本
        • 詩集「屋久島」
          4本

        記事

          関東街歩き写真録―〇〇で何が見えるか― #2 横浜・鶴見編

          文責:Belfastは19街区のなか。  今日は、五街道のひとつであり、東海道の沿線に発展してきた横浜・鶴見を歩いていきます。一見ただのベッドタウンですが、大都市が連続する地域の一角を担うが故の雰囲気が漂います。それは現在だけではなく過去からも。そして人工物と融合する水面は都会ならではでしょう。なお、#1のときにお伝えするのを忘れていましたが、写真は携帯(Xperia・Galaxy)クオリティです。訪問は2019年6月にしています。 鶴見中央4丁目 京急鶴見駅東口に広がる

          関東街歩き写真録―〇〇で何が見えるか― #2 横浜・鶴見編

          塗り替えられる記憶―ポーランドの国家記銘院が抱える問題点―

          文責:魚の理  国家記銘院(Instytut Pamięci Narodowej、通称IPN)はポーランドの政府機関で、近代史の研究や1917~1990年における犯罪調査・告発を目的として設立された。4つのミッションとして第二次世界大戦中や共産主義政権時代にポーランド国民が被った犠牲や損害に関する記憶の保存、ナチスや共産主義者が犯した人権侵害や戦争犯罪を起訴する義務、ポーランド独立に際して行動した市民に関する記憶の啓発、犠牲者への国家賠償を掲げており、犯罪起訴や犠牲者探索、

          塗り替えられる記憶―ポーランドの国家記銘院が抱える問題点―

          関東街歩き写真録―〇〇で何が見えるか― #1 銚子・犬吠編

          文責:Belfastは19街区のなか。  東京から特急で2時間ほどにある関東地方最東端の都市・銚子。太平洋側に大きく突き出たその陸地は、関東にありながら華美な植生や険しい地形を我々に見せてくれます。ここで出会った自然の雄姿たちを、動画にする場もないので、皆さんに紹介していこうと思います。なお撮影日は、2019年10月・2020年9月になります。どちらも夏日でした。 犬吠埼にて 在り来りではありますが、やはり私が好きなのは犬吠埼から長崎町までに至る海岸地形です。犬吠と言えば

          関東街歩き写真録―〇〇で何が見えるか― #1 銚子・犬吠編

          怯える陽炎

          文責:特命詩人  京王線新宿のプラットフォームに電車が滑り込む頃、夢見心地な私の意識を覚醒したのは車掌の声であった。 「中央線快速電車は、新宿駅での人身事故により、運転を見合わせています」  たった今降りたたんとする場所の数m先で起きた惨劇を前に、目に映ったのは降車ホームの人混みであった。ラッシュ時間帯に上下線が混む京王線を尻目に身体は中央線のホームへと向かった。私の帰り道であるからだろうか、死んだ魚の目をした私は東京方面のホームに誘われた。  「電車がまいります」が

          怯える陽炎

          詩集「屋久島」第二篇

          文責:Taka 涙 その男を語る時 彼はうっすら涙を浮かべた そして信頼という言葉を吐いた いったいどれだけの人間が 亡き友の信頼に 涙を流すのだろうか 森星 森色に切り取られた星空があった 星が瞬いていた 川がさざめいていた 車座 囲炉裏を囲んで 車座になる 最初は6人と1匹 後に3人 2人になって 3人になる 2人になって 最後は炬燵で3人 船出 安房から降っていた雨が宮之浦でも降っていた フェリーに乗り込みデッキで僕は島を見つめてい

          詩集「屋久島」第二篇

          「脆弱」を「きじゃく」と読んでしまうのはなぜか──漢字学習の落とし穴

          文責:Belfastは19街区のなか。  「脆弱」は「もろくて弱いこと」を指す単語であり、正しい読み方は「ぜいじゃく」であるが、これを「きじゃく」と読み間違えてしまうことが多々あるようだ。「脆」は訓読みで「もろい・よわい・かるい・やわらかい」であり、音読みは「ゼイ・セイ」である。  漢字の成り立ちは六書に基づき6つとされており、そのうち今回の問題に関わっているのが「形声文字」である。この文字は意味を表す部分と音を表す部分から成り立っており、それぞれ「意符」と「音符」という

          「脆弱」を「きじゃく」と読んでしまうのはなぜか──漢字学習の落とし穴

          詩集「屋久島」 その4

          文責:Taka 永田にて 男が釣り糸を垂らしている 男が寝っ転がっている 風が吹いている 波がさざめいている ここに立っていると全てがどうでもよくなる 時間がただただ流れている 宮之浦川へ きっと人間は心の内を全て見せられないのだから 僕は川になりたい 言葉が無力であるならば 僕は川になりたい ああ人間様 どうして君たちは理を覆そうとするのか 僕は川になりたい 高きより低きへ流れる 川になりたい ああ川よ 君は何を考えている 何を感じている 僕

          詩集「屋久島」 その4

          詩集「屋久島」 その3

          文責:Taka 雫 山は雨 弾ける音 深まる緑 映す鏡 七千杉 喧噪の中に浮かぶ月 森の中に一本の月 母なる大地よ 哀れな月を照らしてくれよ 父たる森よ か弱き月を守ってくれよ ああ名もなき木々よ さみしい月に寄り添ってくれよ 鹿罠の狸 山に響く音 罪なき狸の鳴き声 哀しい声 何を望むか やがて止む音 山に捨てられる亡骸 君はどこから来たのか どこへ逝くのか 生きてたんだ 死んでしまった めぐり逢い 風が吹いている 山間を走る雲

          詩集「屋久島」 その3

          詩集「屋久島」 その2

          文責:Taka 空思ふ 星空見上げる君の横顔 「綺麗だね」 目が合う 止まる息 ねぇ一番星 月が目をそらした空で証人になってよ この愛がたとえ刹那だとしても 惑星に持ち帰って何億年何兆年語り継いでおくれ さぁ誓いのキスをしよう 証明しよう 流星 きっと君が見ない流星 だから僕は願う 明日も君が健やかであれ 世間を騒がすニュース 誰が彼のために願ったか 彼は誰のために願えたのか 切り取られた星空 温泉に浸かりながら星空を眺める 遠く水平線まで延びる

          詩集「屋久島」 その2

          日本の再生産領域における男性性―福祉制度における政策と実態の乖離―

          文責:魚の理 序論 最近、再生産領域に従事する男性を扱ったテレビドラマが日本においても散見される。例えば 2020年に日本テレビ系で放送された『極主夫道』では専業主夫として働く男性を主人公としていたり、2021年からTBS系で放送されている『俺の家の話』では第 1 話で父親を介護する男性が描かれていた。長きに渡って家事や育児は女性の領分と見なされてきた日本において、男性が積極的に再生産領域に参入する場面が描かれるようになったのは、性別役割分業に対する問題意識が世間に浸透して

          日本の再生産領域における男性性―福祉制度における政策と実態の乖離―

          詩集「屋久島」 その1

          文責:Taka 再びの島 迫る島 暗い島 太陽は雲の裏 今日ぐらい照らしてくれよ きっと鬼ヶ島 行こうか鬼退治 お天道様に首級掲げよう 春田浜にて 寄せては返す波よ どうか僕を取り込んではくれないか その大いなる不完全性に その偉大なる非再現性に 空に浮かんだ一番星 愛を届けてはくれないか 没世界 人は語る 人は歌う 人は生きる 僕は焦がれる ああ 世界よ 僕に分けてくれよ ああ 世界よ 俺を赦してくれよ ひとみ 大人の責任 語る彼の瞳

          詩集「屋久島」 その1

          『鶯姫』における昔話の構造──『竹取物語』との比較考察

          文責:Belfastは19街区のなか。 昔話『鶯姫』について 物語とは私たちにとってとても身近である。なにも小説だけでなく、漫画やテレビドラマも物語であり多くの人々を魅了してきた。私たちが物語に触れるその入り口は、幼少期に読んだ絵本、そして童話ではないだろうか。その童話の起源とも言うべき興味深い話がある。ここでは『日本の昔話』(柳田 1983)で日本全国から集められた昔話のひとつ、『鶯姫』について論じていこうと思う。  『鶯姫』は有名な『竹取物語』と内容が類似しているどこ

          『鶯姫』における昔話の構造──『竹取物語』との比較考察