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原田マハ『たゆたえども沈まず』(2017)

■2020年10月の読書

■こちらも2018年本屋大賞ノミネート作品。

■ポスト印象派の中でも日本人が愛してやまないゴッホ。フィンセント・ファン・ゴッホを献身的に支えたもう一人のゴッホ 、すなわち実弟で画商のテオドルス・ファン・ゴッホと、同時代に生きた日本画商の林忠正、そして忠正の後輩でテオの盟友の加納重吉が主な登場人物。加納重吉以外は実在する人物たちで、19世期のヨーロッパ美術界を揺さぶった浮世絵、ジャポニズムの流れの中で「たゆたえども沈まず」に生き、あるいは生きようとした様子が描かれる。

■パリ、印象派、ジャポニズム、という私個人の嗜好要素が含まれていたのも大きかったが、とても面白かった。

■ゴッホの生涯に関してはなんとなく知っていたけれど、テオの存在は忘れていたし、林のことは全く知らなかったから、フィクションだとしても、のちに日本人から「国賊」と呼ばれた彼の、パリでの活躍やゴッホやパリのアート界に影響を与えていく様も興味深かった。

■原田マハ作品を読むのは初めてだったのだが、良かった。節々から絵画を愛してやまない作家さんなんだろうなぁということが伝わってくる。と思ったら、美術関係の様々な経歴を持ち、作家兼キュレーターでもあることが判明。造詣が深いはずである。

■この後、続けて、同作家の『楽園のカンヴァス』(2012)『いちまいの絵:生きているうちに見るべき名画』(2017)を読んだが、読みながら美術館独特の匂いがしてくる感じがして、今すぐ美術館に行きたくなるような2冊だった。

■美術館巡りができるようになる日はいつになるかな。コロナ禍の今日、目の前のことを頑張るしかないな。たゆたえども沈まずに。


『たゆたえども沈まず』 https://www.gentosha.co.jp/book/b11220.html


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