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経済学解説① 需要の価格弾力性

 閲覧ありがとうございます。経済学習スタジオです。
 本回は、経済学の内容を1つ取り上げて、解説をしていきます。
取り上げるのは、ミクロ経済学の消費者理論で出題が定番の「需要の価格弾力性」です。
 出題が定番とは、大学編入試験などの進学用、公務員試験などの就職用、中小企業診断士や経済学検定などの資格用のいずれにおいてもよく出るということです。
 内容は、①定義と算出式、②問題例、③値が意味することとなります。こちらを基本事項として、学習が進めば幸いです。


1.需要の価格弾力性とは?~定義と算出式~

(1)定義

 需要の価格弾力性(εDと置きます)とは、「価格が1%変化したときに、需要量が何%変化するか」を、一般的な需要関数においてプラスの値になるように表したものを意味します。
 例えば、お菓子のグミが100円で売られていたところから80円になったとします。このとき、価格の変化率は-20%ですね。もちろん、%扱いしないなら×100をせず、-0.2としてもOKです。
 

↑ 求め方の詳細

 また、100円のとき、グミの需要量は500個でしたが、80円になって750個になったとします。これは、需要量が+50%です。こちらも、%扱いしないなら、×100をせず、0.5です。

↑ 求め方の詳細


 では定義通り、価格1%あたりどのくらい需要量が変化するかを出しましょう。すなわち、需要量の変化率を価格の変化率で割りますから、50%÷(-20%)=-2.5となります。ただ、定義にあるようにプラスの値で表記したいわけですので、マイナスをとって、需要の価格弾力性は2.5となります。

(2)算出式


 以上の過程を踏まえて、算出式を言葉で表現すると、
εD(需要の価格弾力性)=-需要量の変化率÷価格の変化率
です。
 さて、これを文字をつかって表していきましょう。最初の価格をP、価格の変化分をΔP(Δはデルタと読みます)、最初の需要量をD、需要量の変化分をΔDとします。以下は算出式の出し方となります。


↑ 需要の価格弾力性の算出方法

 上式が需要の価格弾力性を求める式として、何らかの試験で経済学に挑む場合は覚えておくことになります。
 この式で覚えておく理由としては、ΔD/ΔPの部分が、「需要関数D(P)をPで微分したもの」を意味することから、計算問題を解く上で便利といえるからです。
 ちなみに、「えっ、微分ってなに?」という方には、以下の記事を推奨します。微分も経済学ではよく使いますので、この機会に知っておきましょう。
       https://ask-koumuin.com/keizai-bibun/
 

2.問題例


 それでは、公務員試験と大学編入試験問題からそれぞれ取り上げて解いてみましょう。

(1)特別区2004年の問題(改題)

ある財の需要量をD、価格をPとすると、その財の需要関数がD=180-4Pで表される。いま、この財の需要量が100のとき、需要の価格弾力性を求めなさい(本来、公務員試験は、選択肢がありますが、数値を出すことが目的ですので、割愛します)。
 
それでは、需要の価格弾力性の算出式に代入して解いていきましょう。以下が流れです。

↑ 特別区2004改題の解答解説

ということで、需要の価格弾力性が0.8と求まりました(答え 0.8)。

(2)横浜国立大学編入試験H27(改題)


 ある財の需要関数がX=5-Pだとする(Xが需要量、Pが価格)。需要の価格弾力性が0.25となるときのこの財の価格を求めなさい。その後、その価格より財価格が上昇したとき、需要の価格弾力性はどのようになるかを答えなさい。
 
 それでは解いていきましょう。

↑ 横浜国立大H27解答解説その①

 さて、本問は、Pの値を出すだけではなく、価格上昇が受ける需要の価格弾力性の影響についても答える必要があります。
 そのため、式*(上の0.25=P/5-Pのことです)に戻って考えていきましょう(下の「このとき」とは「式*のとき」ということです)。


↑ 横浜国立大H27解答解説その②

3.需要の価格弾力性が意味すること


 需要の価格弾力性が1のときは、価格の変化率と需要量の変化率が等しいわけです。
 これに対し、需要の価格弾力性が1を超える場合は、価格の変化率よりも需要量の変化率が大きいことになります。このような状態を弾力的といいます。
 逆に、需要の価格弾力性が1を下回るときは、価格の変化の割には需要量に変化がなかったということで、非弾力的となります。非弾力的になりやすい財は、生活必需品です。どのような価格でも一定量を買わないといけないからですね。
 他方、弾力的となる財は、奢侈品や競合が多く値段を上げられたら別のところで買えるようなものだといえます。

4.おわりに


 本回は需要の価格弾力性について、定義と算出式、計算方法をお伝えし、求めた値からどのようなことが分かるのかを解説しました。
 経営者の方にとって需要の価格弾力性は、自社商品の価格の変化や新商品の価格設定をする際に考慮する事柄といえます。なぜなら、自社の既存製品がどのような弾力性の財なのか、あるいは新商品がどのような弾力性の財になり得るのかを見極めることが大切だからです。
 そのせいか、経営学部系の大学編入試験で経済学を課すところなどでも需要の価格弾力性は頻出問題となります。
 なお、中小企業診断士試験では、グラフで考える需要の価格弾力性の問題が多く出題されます。その辺りは、また機会があれば解説していこうと思います。
 本回はここまでです。お読みいただき、ありがとうございました。

〜執筆者紹介〜


経済学習STUDIO
 公務員試験・経済学検定・各種資格試験・大学編入の経済学系科目の情報発信をします。中の人は、大学や資格予備校で経済学を教えてきたミヤンです。2024年1月に出版した電子書籍はこちら。今後も、様々な学習ツールを整備していこうと思っていますので、どうぞよろしくお願いします。


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