見出し画像

しつこい女と娘の正義

6年生2学期。
気にしていないようで気にする娘。
クラスメイトは良い子ばかりだから
体調さえ戻れば学校に登校できる。

Aさえ何もしなければ。

私は9月にある修学旅行のことで頭がいっぱいだった。
楽しい思い出がいっぱいある修学旅行。
娘にもいい思い出を作って欲しかった。

とにかく体調を崩さないように
生活リズムを整え
夏休み中は気分が少しでも上がるように
近場だったが旅行に行ったり
娘が笑顔になれるように努めた。

そんな私の心配をよそに
Aは休んでいた間に
頭の中から娘の存在が少し遠くなったせいか
しばらくおとなしかった。

9月下旬にある修学旅行。
担任と薬を服用するタイミングを打合せしたり
起立性調節障害は乗り物酔いもひどくなるから
酔い止め薬も飲むように連絡したり。
色々と心配したが
娘の体調はすこぶる良く修学旅行へ出発。

そして無事に参加出来た修学旅行。
しかし帰ってきた娘から
「Aがものっっっすごい見てくる。」
「Aが見てるよ、ってみんなに言われる。」

ストーカーのような行動が出始めた。
これには私も驚いた。
睨んでるのとは違う。
とにかく見てくる。
目が合っても見てくる。
どういう心理なんだろう
と少し興味が沸いたが
娘が見られてるぐらいなら大丈夫と言ったので
少し様子を見ることにした。

この時点でAと会話をすることは
ほとんどなかった娘。

10月に入った日。
娘が真っ赤な顔で
”とにかく怒ってます”
という分かりやすい顔で帰ってきた。

「どうした?何かあった?」
「Aが私の友達とあいつの友達を交換しろ
って言ってきた!!」

Aの友達、私の友達。
この2人は娘にとって大事な友達。
Aの友達と書いたが
ただ同じクラスでその時に
隣にいたというだけらしい。
後にこの子もAに楯突くことになる。

「人をモノのように言う態度が気に入らない!」
「信じられない!!」

と言ってランドセルを投げた。
モノに当たる娘を初めて見た。
ソファをバンバン叩いたり
部屋中で暴れだした。

「キライだと思ってたけど
やっぱり大っ嫌い!!!」

もうこの怒りをどうしたらいいのか
分からない様子だった。

私は使っていないノートを取りに行った。
「とにかく落ち着こう。
このノートに嫌なこといっぱい書いて
ぐっちゃぐちゃにしたり
破ったりしていいから。
好きなようにしていいから。」

そう言われると娘は
鉛筆をグーで持って力を込めて
ノートにムカツクやらなんやら・・・。
ここには書けない暴言をたくさん書いて
言われたとおりにぐっちゃぐちゃにして
ビリッビリに破いた。

ノートの原形はもはや無く
これ以上破れないというところまで
細かく破っていた。
リビングは紙だらけ。
さらに破った紙を集めて投げる。
息が上がっている娘。
まだ落ち着いてはいないようだ。

絶対泣かない。
あんなやつのために泣かない。
目には涙が溜まっていたけど
流れるまで涙を出さないように我慢している。
悔しいという気持ちがヒシヒシと伝わってきた。

この子は正義感が強いんだ。
でもこの正義感のせいで
まだ心は子供なのに辛いんだな。
自分のことは適当にできても
友達のことは絶対に許せない。
かわいそうだけどまだ心のバランスが取れていない。

「交換してって言われて何か言い返したの?」
恐る恐る聞いてみた。
「それは酷いと思う、BとC(友達)に謝って
って言った。」
なるほど。言い返したのね。
「で、Aはなんて?」
「あいつはいつも都合が悪くなるとはぁ?って
言うだけ。あームカつく!!!!」

はぁ?って言っただけか。
反省してないね。
あんまり人の気持ち分かる子じゃないね。
残念だね。

そんな言葉しかかけてあげられなかったけど
話を聞いていくうちに
時間が経って少しだけ落ち着いてきた娘。
いつも通り過ごして就寝したが・・・。

次の日。
娘は寝込んだ。
39度の熱を出して。
感染症ではないことは明らかだった。
熱以外の症状は何もない。
鼻水も咳もくしゃみも何も出ていない。
病院に連れていったが
感染症の疑いは無し。
解熱剤だけの処方。

精神的なものからくる発熱は
私自身、経験したことが無かったから
とても心配した。

こうしてAと娘の溝はさらに深くなり
本格的に娘がAを避けることになってしまった。
そして
Aが原因で体調を崩すことになることが
はっきり分かってくるのも
これからだった。

つづく



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?