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歳を重ねるということ:林真理子『成熟スイッチ』を読んで

昨晩、林真理子『成熟スイッチ』を読了。

社会人となってからは、日常生活を生きるのが精一杯で、心が疲弊して、中々本を読み通す余裕がなかったのですが、23日から4連休をいただき、金曜日に行きつけの書店へ足を運んだ際に、『成熟スイッチ』が新書ランキング上位にあり、少しめくると興味を引いたので購入しました。
目当ては芥川賞作品だったのですが、実際に本屋に行くとこうした、偶然の出会いがあって良いものだなと思います。
私は恥ずかしながら、林真理子さんのことを存じ上げなかったのですが、昨年にはあの日本大学の新理事長となり、作家としても未だに活動されている著名人でした。
やや、前置きが長くなりましたが、本書は、要するに彼女の自伝的自己啓発書に当たると思います。
本のタイトル、帯、目次、まえがきから、
「何かこの本には具体的な教えがたくさんある」ような気がしたのですが、個人的な感想としては、ほとんど彼女の自伝であり、そこに彼女が大切にしてきたことや、振り返ればこうだったという結果論等が書かれているに過ぎないと思います。
かといって、さすがは直木賞作家の書く文章であり、人生を書いているので面白さもあるし、感心する内容もあります。
こう書きながら、多くの本が自己啓発書と自伝の合わせ技であるような気もしてきましたが、それはさておき、林真理子さんは、70年近く生きてこられて、マンモス大学の理事長に就任するなど、アグレッシブな人生を生きておられます。本書を通じて彼女は、若い頃は、アルバイトですらろくにこなせず、信用もなかった自分が、晩年は見違えるように「長」タイプへと変わっていったと述べています。これはとても素晴らしいことだと思いました。思うに、『成熟スイッチ』において、筆者が最も伝えたいことは、「人は変われるよ。」という一点に尽きるような気がします。それは、徐々に失敗や成功を繰り返し、自らを客観視するサイクルを積み重ねて、「父親のように自由奔放いい加減」だった筆者が、晩年は「母親ゆずりの勤勉さ、真面目さ」を自らの内に芽吹かせ、「今、とても楽しく生きている」という本書の一連の流れをみるとわかると思います。
また、この「父」と「母」もそうですが、「夫」、「娘」、後半には「弟」の存在もクローズアップされており、「家族」というものに対しても強い想いが込められ、意味付けがなされているのも本書のポイントになるのではないでしょうか。
私はまだ若いですが、それでも、歳を重ねるに従って「自らの内に何が影響を与えているのか」をより深く切実に考えるようになりました。「目は母親譲りだな」とか、「歯並びは父親そっくりだ」とか、「この短期な性格は…」とか、挙げればきりがないくらいです。
そういう、自らの内に「血のつながり」を感じる経験というのは多くの人にあると思います。そうした点を、林真理子さんの前向きな文章の中に重ね合わせて読んでみるのも良いでしょう。
当たり前のことですが、年配の方が読むとより共感することは多い内容で、若年層になればなるほど、「遠いもの」「自分の未来」として読むことになると思います。そのうえで、私と著者の間にある「隔世の感」は否めないのですが、それは筆者もわかって、後輩へ色々と書いている部分も多いと感じました。筆者は、娘さんに「生活に必要なお金のために無理して働くのではなく」「自由に生きるために、好きなことをするために働き、お金を稼ぐ」ということを伝えてきたつもりだというようなことを書いていて、感心しました。
好景気の華やかな日本を生きていたという部分はあるにせよ、老年期に入った今でも溌剌と働き、遊んでいる筆者に学ぶことは少なくないですね。
たしかに、同じお金を手にしても、今と昔(バブル景気頃)ではできることに差があり、今の若者には真似できない部分はありますが、私もどうせ働くなら「自らの自由のために」働きたいものです。
そろそろ間延びしてきたので、締めたいと思いますが、これまで知らなかった林真理子さんは、本書を読む限り、とても潔い人で、ケチケチせず豪快でした。綺麗事を書かない姿勢も良いなと思います。私も、その辺、学ばせてもらって自分なりの「成熟スイッチ」を探して、一つ一つ押していけたらいいなと思います。
ではでは、最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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