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Vol.2 人生は一度きり:日銀出身の起業家が語るキャリア選択

「組織の方針に沿って仕事をするのではなく、自分のしたいことに挑戦したい」と思う人は多いのではないでしょうか。起業に関する皆さんの疑問に答えるべく、この記事では実際にご自身で会社を設立された株式会社アスソラの代表取締役である山崎智広さんへのインタビューをお届けします。

〈プロフィール〉
山崎 智広 (やまざき ともひろ)
日本銀行にて経済動向の分析などを担当。その後、2014年より、株式会社レノバにて、再生可能エネルギー発電の新規事業を開業。また、国内最大級のバイオマス発電事業、国内で初めてプロジェクトファイナンスによる資金調達を行った地熱事業などをプロジェクトマネジメント。この間、JETROのプログラムにて、インドの現地資本のコンサルティング会社(SKP Crossborder Consulting、現Nexdigm)にてインターン。困難を打開する実行力を鍛えられる。
株式会社ウェイストボックス 社外取締役
東京大学法学部卒業、スタンフォード大学ロースクール修了

「株式会社アスソラHP」 2023-08-02


山崎さんの学生時代について


──まずお聞きしたいのですが、山崎さんは学生時代はご自身のキャリアについてどのように考えていましたか?

 学生時代は環境と経済の両立に興味を持っていて、当時は環境に関する仕事はあったのですが、ぴったりくる仕事がありませんでした。将来性があるか自信がありませんでした。社会人のキャリアとしては一つの企業に勤め続けなければならないわけでもないし、いろいろなステップがあると理解していたので、まずは経済活動や市場がわかるところに入社して、そのうえで経済的なアプローチから環境問題を解決していこうという風に考えていました。今との考え方の違いでいうと、キャリアを考える中で企業は視野にはあったんですが、どちらかというと元々は政策に関心があったんです。企業を介すことはあっても、最終的には政策的に解決するべきなのかなと思っていました。
 結果的にはその後留学したり色々な企業で働いたりして、政策は政策でいいけれどやはり会社が世の中を変えていると感じました。
 であれば会社を興すことができれば世の中に貢献できるのではないかと思い、会社を設立しました。なのでそこは学生時代に思い描いていたこととは違うところですね。当時は実は起業なんて欠片も考えていなかったんです。

再生可能エネルギーへの情熱


──続いて、山崎さんが再生可能エネルギーに興味を持たれたのはどういった理由でしょうか?

 資源があるんだけど使われてない、それを使えるようにできるという手段だから面白いと思うんですよね。例えば太陽光とか風力ってその辺にあふれているんだけれども、今十分に使えていない。それをエネルギーという形に変えることによって使うことができる。世の中で今使われていないものを資源に変えることができる、そういう意味ですごく面白いなと思いますね。

──それではいよいよ本題ですが、起業された経緯を教えてください。

 まず、私は再生可能エネルギーを普及・拡大していきたいと考えていました。特に、私は経済活動の中だからこそ再生可能エネルギーを拡大できると考えていて、今の日本社会は拡大ができるような素地が整ってきていると思ったので起業しました。これまでは再生可能エネルギーはコストとして高かったので、固定価格買い取り制度という政策的な需要を作り出して増やしてきていました。ですが今は政策的な需要が無くても事業ができるような環境が整いつつあるという状況なんです。なので、会社という新しい主体で再生可能エネルギーを拡大していきたいというのが経緯ですね。
※固定価格買い取り制度…太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーで発電した電気を、国が定める価格で一定期間、電気業者が買い取ることを義務付ける制度。

──起業そのものに興味を持ったきっかけなどはありますか?

 二つ大きなきっかけがあります。一つは留学ですね。留学でスタンフォードに行っていたのですが、大学に色々な起業家の方が来て話をしてくれるという機会があったんです。そこで皆さん一様に、自分のやっている分野に将来性を感じていて、その分野で会社を作って世界を変えていきたい、とお話されていました。私はもともとはどちらかというと政策に関心があったんですけど、「起業をしてゼロから会社を作って世の中を変えている人たちがいる」ということを感じたのが留学時代ですね。二つ目は、留学から帰ってきてからはレノバという再生可能エネルギー事業の会社で働いていたのですが、そこでは創業者の方が引き続き経営をしておられました。ご自身で会社を経営をされている方と実際に一緒に仕事をする中で、やはり自分でゼロから会社を作って世の中に貢献するということが意義深いことだと感じました。人生一回しかないし、自分もチャレンジしたいなと思ったのが経緯ですね。

現在の仕事について


──再生可能エネルギー事業に携わる中でどのような時にやりがいを感じますか?

 発電所からクリーンな電気を供給できて、そこで作られたエネルギーで世の中が動いていると実感できる時です。起業してからはまだ発電所をつくる段階までは至っていないのですが、前職では発電所を作って実際に運転を開始し、電気を生み出すところまでもっていけました。その時はすごくやりがいを感じましたね。

──現在働くうえで大切にされている価値観などはありますか?

 しっかり最後までやり抜くことです。というのも、仕事をする上では課題もたくさん出てきますが、それらを一つ一つクリアして初めてゴールに辿り着くからです。

──ご自身のこれからのキャリアや今後どのような社会をつくっていきたいかについて、展望などあれば教えていただきたいです。

 まだまだ会社としてはこれからなので、事業を回して世の中に貢献できる会社にしていきたいです。具体的には、発電所を実際に作って運転開始する段階まで行くことです。来年くらいにはそういう形まで持っていけるのではないかと考えています。ちなみに今は、最近脱炭素などの流れもあって企業さんの方で再生可能エネルギーを使いたいという需要が高まっているので、そのニーズに答えていきたいと思っています。

おわりに


──最後に、環境問題に関連するキャリアを目指す学生に向けてメッセージなどあればお願いします!

 まず、環境問題は世の中でこれからも取り組み続けなければならない重要な課題だということですね。あとは、環境分野においては色々な考えやバックグラウンドを持った人が取り組むことによって課題を解決しなければいけないということです。というのも、環境分野はある程度確立された産業とは違って新しいことが常に生じるような分野だからです。だからこそ色々な人に来ていただきたいという風に思いますし、それは学生の方も含めてです。ぜひ一緒に頑張りましょう。

環境ロドリゲス、EcoNEXTメンバーとアスソラ山崎様

編集後記

 将来のキャリアの選択肢として起業を考えている人にとってはもちろん、そうでない人にとっても起業が身近に感じられるようなお話を伺うことができて大変有意義な取材でした。
 お話を聞いていて感じたのは、やはり自分のやりたいことをやりたいという気持ちが一番大事なんだなということです。またキャリア選択においては一般的な選択肢に縛られず、様々な可能性を考慮することも大事だと感じました。いただいたアドバイスをもとに、私たちも学生のうちに色々な経験をして、やりたいことを見つけていきたいです。

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