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#Autumn 2024-2

The Skill’s Marketingとでも呼ばせてもらおうかと思う。

どうもフランスの人は、良くも悪くも”個”としての在り様をこれでもか、とあからさまにしなければ気が済まない傾向があるように思う。
私個人の感想であって、気分を害されたら申し訳ない。
フランスの国民性をディスるつもりは毛頭無く、ネガティブな感情を持って
いるわけでもなく、ただそんな気がする、というだけなのだが。

先週のローズステークス、単勝1.7倍の1番人気レガレイラで道中最後方を
いき、直線に入ってから追い出し、全出走馬中No1の上がり3ハロン33.1秒
という驚異の末脚で5着に敗れ、「レースで調教をやるな!」と
大ブーイングが上がる中、気炎を上げていたアンチ達からはセキとして
声も聞かれず、有力馬主達は『やっぱり彼に乗ってもらおう』と
今頃決意を新たにしているのではなかろうか?

9月16日、祝日の月曜日、薄曇りの中山競馬場で行われた
第78回朝日杯セントライト記念(GⅡ)、芝2200m。

1番人気(2.9倍)、コスモキュランダは鞍上ミルコ・デムーロ騎手。
ゼッケン8番の黄色い帽子。
2番人気(3.1倍)がクリストフ・ルメール騎手のアーバンシック、
ゼッケン1番、白い帽子。

牡馬クラシック最後の王冠、菊花賞(10月20日京都競馬場)への優先出走権
(3位まで)をかけたこのレースで、一分のスキもない100%完璧な騎乗を
クリストフ・ルメール騎手はやってのけた。

まだ開幕2週目の中山、芝が荒れていない”内”に徹底的に拘って乗った、
と私には見えた。

スタート後、最初の第1コーナー。内をいくルメール騎手の1番アーバンシック(赤丸)。
ミルコ・デムーロ騎手のコスモキュランダ(青丸)はこの時点から外を走っている。
向こう正面、荒れてない内を悠々とマイペースで位置を上げ、もう先団にとりついた
アーバンシック(上段赤丸)。対するコスモキュランダ(上段青丸)はまだこの位置。
向こう正面半ばあたり、終始外を走りながら追い出しにかかるコスモキュランダ。
前をいくアーバンシックとは7、8馬身の差がある。
3コーナーを周る所、終始内をいくアーバンシックに並びかける所まで来たコスモキュランダ。
さすが今年のダービー6着にきた瞬発力。
最終4コーナーで前をいく馬に乗り上げる勢いの1番アーバンシック、だがまだルメール騎手は
手綱を緩めず、前の馬を壁にして末脚の温存を図る。その横、まだデムーロ騎手がさほど追って
いない状態のまま、ほぼ馬ナリで大外をまくっていく黄色い帽子、コスモキュランダ。
最後のコーナー、4コーナーを周る一段。白い帽子アーバンシックはなおも内で末脚をためる。
大外黄色い帽子、本格的な追い出しにかかろうと、コスモキュランダのデムーロ騎手は
鞭を左手に持ち替えている。
直線入口、追い始めた一番外の黄色い帽子は早くも先頭に立つ勢い。前の馬が壁になったまま行き場を失くしてるかに見える白い帽子アーバンシック。しかし、前の青い帽子と黄色い帽子コスモキュランダがスパートすれば、そこにポッカリと道が開くのをこの時点で既に予見しているルメール
騎手は、少しづつ馬を追いながら鼻歌でも唄っていたのではないか、と思われる。
ルメール騎手「ほ~ら開いた♪」
ルメール騎手「じゃあ、そろそろ行こうか?アーバンシック君♪」
ルメール騎手「最後の最後まで内を走ってきた・・・」
ルメール騎手「その答えが・・・」
ルメール騎手「これだよ~ン♪」
ゴールした時の着差、1馬身と3/4、時計にして0.3秒

スタートしてから前半の登り坂のラップタイムが、1ハロン目12.8秒から
2ハロン目ちょうど坂の登りが一番急な所で11.0秒、これはゆっくりした
スタートから先行のポジション取りでかなりやり合ったと考えられる。

そこから12.4-12.0-12.3、前半1000メートル通過が60.5秒、時計的には
ペースはスローだが中山の登り坂が続くコース形態を考えるとあながち
スローとも言えない気がする。
むしろ平均ペースと言っていいのではないだろうか?

問題はその後、下り坂に入り、最後の直線の急坂まで平坦なコースが続く
のだが、12.2-12.3-12.0と緩いラップが続いており、ここでかなりゆっくり
としたペースを刻んだ事が、逃げたヤマニンアドホックとエコロヴァルツ
がそれぞれ4着(1着から0.8秒差)と3着(1着から0.7秒差)に残った結果
に繋がったと思う。

直線に入ってコスモギュランタと共にスパートした青い帽子が3着にきた
エコロヴァルツで、その2頭が必ずスパートすると読んでいたからルメール
騎手は進路が開くのを待てたわけだが、歴史や競馬にタラレバを持ち込む
のは愚かとわかった上で、それでももしも、もしもこの下りから平坦となる
所でペースが緩まなかったら?

12秒を切るようなハイペースの早いラップでレースが進んだとしたら?
それでもルメール騎手は内を走り続けただろうか?
多分、そうしただろう。
やはり内をいったと思う。
そしてハイペースでもアーバンシックは、リラックスして追走できたと
思う。

しかし途中のペースが上がれば当然、最後の直線でスパートのスピードは
鈍る。楽に追走できても今回のように前がすんなりと開いたであろうか?
コスモギュランタの伸び脚は鈍る事はなかったと思うが、先頭で逃げ争い
をしながら走ってきたエコロヴァルツが、今回のようにスパートできた
ろうか?

外に持ち出さず、コースの内側、エコロヴァルツの右横を、つまりはさら
に内にコースを取ればいい?
多分、そこには脚が上がったヤマニンアドホックがいると思う。
となればエコロヴァルツの左横、外へと進路を移行する為、アーバンシック
を横かあるいは斜めに走行させ、外側へと一旦持ち出す必要がある。

その間、0コンマ数秒。
今回よりワンテンポあって一呼吸置いてから追い出す事となる。
そうなったとしたら、果たしてコスモギュランタを捉えられたろうか?

今回のアーバンシックの上がり3ハロンは34.0秒、内でためまくったあげく
の末脚だっただけあって上がりでも全出走馬中1位である。
2位のコスモギュランタは34.2秒。
もしも坂の下りからラップが早くなっていた場合、ルメール騎手が進路を
取る為アーバンシックを外に持ち出す展開になっていたとしたら、
この0.2秒差は私は逆転不可能だったと見る。

コスモギュランタは向こう正面半ばからロングスパートしている。
それでいて最後の3ハロンを34.2秒、しかも道中は常に外、外を周っている。

ネット競馬民の中には、”見ろ、ルメールが勝った、騎手の腕の差だ。
開催終盤でもないのにレース序盤から外外を走ったあげくゴール前で
差された。デムーロはもうオワコンだ。2200メートルのレースだって
のにコスモギュランタは1頭だけもっと長い距離を走らされてあげく
負けている。一体何メートル走らせる気だったんだ?デムーロは?”
という声もある。

確かにこのレースは2200mだが、本番の菊花賞は3000mである。
デムーロ騎手は3000メートルにより近い距離を走らせておきたかった
のではないだろうか?
そしてロングスパートで上がりをどれくらいの時計でまとめられるのか、
それを試したかったように私には見えた。

無論、ルメール騎手の今回の騎乗が見事だった事に異論はない。
彼の腕で勝ったといっても言い過ぎではないと思う。
ところで今回のアーバンシックの騎乗はスポット騎乗だというのが
大方の見方である。

スポット騎乗とは、主戦ではない、という事で、主戦とは継続してその
馬に騎乗する事である。(いわゆる”主戦騎手”などと呼ばれたりする)

例えば先週ローズステークスで見事な”調教”をやってのけたレガレイラの
主戦騎手はクリストフ・ルメール騎手だ。
ルメールに対してレガレイラを”お手馬”などと言う事もある。

アーバンシックをお手馬としている、いわゆる主戦騎手は、今回の
朝日杯セントライト記念の前のレースまでずっとアーバンシックに騎乗
していたが、今回は馬主と調教師が、ルメール騎手にスポット騎乗を
依頼し、引き受けてもらったようだ。

なぜ、今回だけスポット騎乗となったのか?
ルメール騎手がうまいからである。
そして陣営は菊花賞を勝ちたいのだろう。
(もっとも勝ちたくない陣営などいはしないが)
逆に言えば、主戦騎手では菊花賞を勝てない、と陣営は考えている、
とも言える。

今回のレース、主戦騎手の方はルカランフィーストという馬に乗り、
1着の自分のお手馬、アーバンシックから2.2秒遅れた14頭中12番目に
ゴール板前を駆け抜けている。
ルメール騎手とアーバンシックを遥か後方から、彼はどんな思いで
見ていただろうか?

(ルメール、るめぇ~(うめぇ)なァ)
とでも思っていたのではなかろうか?

ダービーでも彼はアーバンシックに騎乗し、4番人気と結構な支持を集めた
が、あの東京競馬場の広いコースを2400m(ダービーの距離)ずーっと
外外をぶん回したあげく11着となっている。
その1.1秒先にゴールし、今年のダービージョッキーとなったのが
彼の親父である。

ダートでは時折いい典(乗り)っぷり魅せるんだけどな。
そう言えば去年、ドウデュースが勝った有馬記念でも彼は1番人気の
ジャスティンパレスで届かずの4着、とやらかしてくれたっけ。
あの時、中山の向こう正面半ばを過ぎた時のウィンズ(場外馬券売り場)
の怒号はすごかったなぁ。

”早く行けよ武史!何待ってんの?遅いって!今追い出したんじゃ!”

横山武史さん、天然っぽい所とか、嫌いじゃないんすけどネ。

話を戻すが、さすがのルメールさんもスポット騎乗の時にレースで
”調教”はしない。
主戦の場合は、継続して乗る手前、色々教え込んだり、試したり、
体調が悪いと思えば流して走る事もある。
それが主戦騎手の仕事であって、スポットでは、特にルメール騎手
ほど腕のある騎手には、”勝つ”事を求められる場合が多い。

ルメール騎手の方も、その馬の主戦騎手や調教師、馬主との関係を
無碍にしたくない事は多々あると思われる。
今回、その多々あると思われる場合にきっちり該当すると踏んだ。

真面目に騎乗する時のルメールは恐い。
全盛期の武豊に逆らうようなものだ。

実際その武に逆らって、かなりの財産を巻き上げられ、今回は別だが
今、それ以外の全レース馬券を買う事もできなくなった奴を知っている。

そして有力馬のスポット騎乗で、その馬の関係者との繋がりが重要と
思われる時のルメール騎手はねらい目なのだ。
(もちろん馬自体のポテンシャルが高く、かつそのポテンシャルを発揮
できる状態である事が一番重要だが)

実を言うと今回だけ、久々に馬券を買った。
それもまだ今月半分以上残っているにも関わらず、手持ちの3分の2くらい
いってしまった。
ゴール後、手足が震えたのも久しぶりだった。
(ざまぁ見さらせJRA!まだまだこんなもんやないで?
1000分の1も返って来てへんからのぉ。覚悟しぃや?
またしばらく馬券買えんけどナ・・・)

馬というのは、夏から秋にかけて急激に成長するケースが多い。
アーバンシックの今回の重賞初制覇もその成長によるところが大きいと
思うが、その勝利は成長が全てで”騎手の腕”という要素は皆無だった
とは到底私には思えない。

しかし、スポットはスポットである。
本番の菊花賞では誰が騎乗するかはまだ不透明のようだ。
主戦の武史さんに戻すのか?
(そうなった時は陣営は菊花賞をあきら・・いやなんでもない)
それともルメール騎手に再度依頼するのか?

アーバンシックの父スワ―ヴリチャードは明らかに長距離を避けていた。
母系は問題無いようだが、血統的に長距離向きとはとても思えない。
コスモキュランダの父アルアインも長距離向きとは言えない。
こちらも母系は長距離でも問題は無さそうだが。
どちらも血統的には長距離向きでは無いと思う。

菊花賞、京都競馬場、淀の3000メートルは3コーナーに3の字型の登り坂が
あって、4コーナーに向かって下っていくというトリッキーなコースだ。
”淀の坂越え”と言われるその坂を2回越えなくてはならない。
4コーナーへの下りで勢いがついてしまうと、直線で脚がなくなってしまう
ケースが結構ある。
勢いのつく所で抑えなくてはならないわけで、ただでさえ3000メートルと
いう距離に加えコース形態も馬たちに負荷をかけてくる。

今回の朝日杯セントライト記念、終始外外を周りながらのロングスパート
という負荷がかかりながら、上がりを道中脚をためていたアーバンシック
の0.2秒差でまとめたコスモギュランタの方に、本番では分があると
私は見る。

ただし、クリストフ・ルメール騎手が菊花賞での騎乗馬にアーバンシック
を選択した場合は、要注意だと思う。
(思うが、それでも本番の菊花賞ではコスモギュランタ優位という見方
は変わらない)

まだ今週、菊花賞のトライアルレースとしては神戸新聞杯(例年阪神競馬場で芝2400mだが、今年は中京競馬場で芝2200mとなる)がある。

菊花賞の有力馬はこの中にもいる。

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