King Crimson『The Elements 2020 Tour Box』全曲解説

2014年の活動再開から毎年リリースされたツアーボックスの7作目である。

2020年は6~7月にアメリカツアーが予定されていたが、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で2021年に延期となった。本ツアーボックスは延期が決まってから発売されたものであり、ブックレットにもその旨が記載されている。

本ツアーボックスは2020年3月24日に亡くなったBill Rieflinに捧げられており、ブックレットにはRobert FrippがBill Rieflinについて綴った6月15日の日記が掲載されている。

収録曲

Disc 1

  1. Wind (extract)

  2. I Talk To The Wind (Alt. mix)

  3. Moonchild inc. Cadenzas

  4. In The Wake Of Poseidon (Greg Lake)

  5. Peace - A Theme

  6. Cat Food

  7. Last Skirmish

  8. Prince Rupert's Lament (Alt. take)

  9. The Letters (Bill Rieflin)

  10. The Letters (Robert Fripp)

  11. The Letters (Bill Rieflin)

  12. Ladies Of The Road (Alt. mix)

  13. Easy Money

  14. Fracture

  15. One More Red Nightmare

  16. Starless (Mark Charig)

Disc 2

  1. The Sheltering Sky

  2. San Francisco

  3. Frame By Frame (pre-tour demo)

  4. Running DAT 17 (edit)

  5. Exiles

  6. North Star (extract)

  7. Breathless

  8. The Errrors

  9. Ian, Boz & Robert (extract)

  10. Disengage

  11. Guts On My Side

  12. Doctor Diamond

  13. 21st Century Schizoid Man

  14. Trees (extract)

  15. The Sheltering 'scape

全曲解説

Wind [extract]

1stアルバム『In The Court Of The Crimson King』(1969年)のレコーディングセッションより。ツアーボックスは毎回「21st Century Schizoid Man」のイントロのノイズ音が1曲目に収録されているが、本ツアーボックスに収録されているのはノイズ音収録時の会話のみである。

I Talk To The Wind [Alt. 2019 mix]

1stアルバム『In The Court Of The Crimson King』(1969年)収録曲のリミックスバージョン。Steven Wilsonによるリミックス。『In The Court Of The Crimson King』50周年盤(2019年)に収録されている"2019 Alternate Mix"と同じだが、本ツアーボックス収録バージョンのほうが13秒長い。その理由は次のトラックの演奏前のお客さんの拍手が本トラックの末尾に追加されているからである。

Moonchild [inc. Cadenzas - Levin, Fripp, Stacey]

1stアルバム『In The Court Of The Crimson King』(1969年)収録曲のライブバージョン。2019年9月23日にアメリカ、ペンシルバニア州、フィラデルフィアにあるTHE METで行われたライブで録音された。スタジオ・バージョンの弱音インプロヴィゼーションの代わりに、カデンツァ(独奏による短い即興演奏)を演奏するパターンは2021年ツアーではやらなかったので、2019年ツアーが最後となった。DGM Liveからmp3が無料ダウンロードできた。現在はmp3/FLACともに有料ダウンロードできる。

In The Wake Of Poseidon [Greg Lake isolated vocal]

2ndアルバム『In The Wake Of Poseidon』(1970年)収録曲の別バージョン。マルチトラックテープからGreg Lakeのボーカルを抜き出したもの。完全にボーカルのみというわけではなく、間奏になるとメロトロンとギターが聞こえる。オリジナルバージョンは7分57秒であるが、本バージョンはイントロとアウトロがないため5分9秒である。Mr Stormy's Monday SelectionとしてDGM Liveで配信された。YouTubeのKing Crimson公式アカウントで聞くことができる。

Peace - A Theme / Cat Food

2ndアルバム『In The Wake Of Poseidon』(1970年)収録曲のライブバージョン。1973年10月26日にイギリス、ロンドンにあるレインボー・シアターで行われたライブで録音された。アンコールで演奏されたメドレーが本ツアーボックスでは2曲続けて収録されている。

Last Skirmish

3rdアルバム『Lizard』(1970年)収録曲のライブバージョン。2019年6月10日にドイツ、ザクセン州、ライプツィヒにあるハウス・アウエンゼーで行われたライブで録音された。DGM Liveからmp3が無料ダウンロードできた。現在はmp3/FLACともに有料ダウンロードできる。

Prince Rupert's Lament [Alt. take]

3rdアルバム『Lizard』(1970年)収録曲の別バージョン。Godon HaskellのベースをバックにRobert Frippがギターを弾いている。Mr Stormy's Monday SelectionとしてDGM Liveで配信された。

The Letters [Bill Rieflin isolated] [RF guitars] [Bill Rieflin isolated]

4thアルバム『Islands』(1971年)収録曲の別バージョン。2018年7月19,20日にイタリア、カンパニア州、ナポリ県、ポンペイにある円形劇場で行われたライブからBill Rieflinのキーボードのみを抜き出したものと、『Islands』のレコーディングセッションからRobert Frippのギターのみをメドレーでつなげている。"Bill Rieflin isolated"はBill Rieflinが亡くなった際にDGM Liveから無料ダウンロードできたもの(現在も無料ダウンロードできる)を編集して2つのトラックに分けている。"RF guitars"は2021年12月に著作権切れ対策でダウンロード販売されたものと同じだと思われる。

Ladies Of The Road [Alt. mix]

4thアルバム『Islands』(1971年)収録曲のリミックスバージョン。ボックスセット『Frame By Frame』(1991年)のためにRobert FrippとDavid Singletonがリミックスしたものの当時は採用されなかった。のちに『Islands』40周年盤(2010年)およびボックスセット『Sailors' Tales』(2017年)に収録された。2019年にデビュー50周年を記念して50週に渡り毎週レア音源を配信する企画"KC50"が行われた。その第7弾として本リミックスバージョンが配信された。YouTubeのKing Crimson公式チャンネルで聞くことができる。

Easy Money

5thアルバム『Larks' Tongues In Aspic』(1973年)収録曲のライブバージョン。2019年9月5日にアメリカ、カリフォルニア州、オークランド、フォックス・シアターで行われたライブで録音された。2018年にJakko Jakszykが書いた新しい歌詞で歌われている(2018年末の来日公演もこの新しい歌詞で歌われた)。DGM Liveからmp3が無料ダウンロードできた。現在はmp3/FLACともに有料ダウンロードできる。

Fracture

6thアルバム『Starless And Bible Black』(1974年)収録曲のライブバージョン。2016年9月23日にデンマーク、コペンハーゲンにあるファルコナーセンターで行われたライブで録音された。『Live in Vienna』(2018年)の海外盤に収録されている(2017年に発売された日本盤には収録されていない)。YouTubeのKing Crimson公式チャンネルで聞くことができる。

One More Red Nightmare

7thアルバム『Red』(1974年)収録曲のライブバージョン。2019年7月4日にスイスにあるアウグスタ・ラウリカ遺跡で行われたライブで録音された。DGM Liveからmp3が無料ダウンロードできた。現在はmp3/FLACともに有料ダウンロードできる。

Starless [Mark Charig featured]

7thアルバム『Red』(1974年)収録曲の別バージョン。始まりはオリジナルバージョンと同じだが途中で入るMark Charigのコルネットが大きめにミックスされている。Mr Stormy's Monday SelectionとしてDGM Liveで配信された。YouTubeのKing Crimson公式アカウントで聞くことができる。

The Sheltering Sky

8thアルバム『Discipline』(1981年)収録曲のライブバージョン。2019年7月18日にイタリア、ペルージャにあるサンタ・ジュリアナ・アリーナで行われたライブで録音された。「The Sheltering Sky」は2019年6~7月のヨーロッパツアーでセットリスト入りしたものの7回しか演奏されなかった。この音源はその7回目である。Lineup VIIIによる「The Sheltering Sky」のライブ音源は本ツアーボックスが初出。本記事執筆時点(2022年10月)でも本ツアーボックスでしか聞けない。

San Francisco

1983年1月に行われたセッションから。コレクターズ・クラブから発売された『Champaign - Urbana Sessions 1983』(2003年)が初出。のちにボックスセット『On (and off) The Road』(2016年)にも収録された。

Frame By Frame [pre-tour demo]

8thアルバム『Discipline』(1981年)収録曲の別バージョン。「Frame By Frame」は2019年6~7月のヨーロッパツアーでセットリスト入りし28回演奏された。本音源はツアーに先立ってJakko JakszykとGavin Harrisonによって録音されたデモ音源。クレジットによれば2本のギターは両方Jakko Jakszykが演奏している。Bassの音も聞こえるが誰が演奏しているかはクレジットされていない。この音源は本ツアーボックスが初出。本記事執筆時点(2022年10月)でも本ツアーボックスでしか聞けない。

Running DAT 17 [edit]

11thアルバム『THRAK』(1995年)のレコーディングセッションより。Tony LevinとTrey GunnによるStickの二重奏。Mr Stormy's Monday SelectionとしてDGM Liveで配信されたバージョンは5分37秒であり、本バージョンは2分38秒に短縮されている。

Exiles

5thアルバム『Larks' Tongues In Aspic』(1973年)収録曲のライブバージョン。2017年6月13日にアメリカ、ワシントン州、シアトルにあるムーア・シアターで行われたライブで録音された。「Exiles」は2017年にセットリスト入りしたものの3回しか演奏されなかった。この音源はそのうち2回目の演奏である。Lineup VIIIによる「Exiles」のライブ音源は本ツアーボックスが初出。本記事執筆時点(2022年10月)でも本ツアーボックスでしか聞けない。

North Star [extract]

Robert Frippのソロアルバム『Exposure』(1979年)のレコーディングセッションから。Robert Fripp(ギター)、John Wetton(ベース)、Phil Collins(ドラムス)の3人による演奏。「North Star」のリハーサル音源は複数あるが、聞き比べたところDGM Liveでダウンロード販売されている1977年12月1日の音源と同一だと思われる。ただしDGM Liveでダウンロード販売されている音源は3分25秒、本ツアーボックスに収録されている音源は2分29秒である。本ツアーボックスのブックレットには当時発売予定だったボックスセット『Exposures』から先行して収録と書かれているが、この音源は結局ボックスセット『Exposures』(2022年)には収録されなかった。

Breathless

Robert Frippのソロアルバム『Exposure』(1979年)収録曲のライブバージョン。『Meltdown: Live In Mexico』(2018年)から。「Breatheless」は2017年7月のメキシコシティ公演では演奏されておらず、2018年のヨーロッパツアーからボーナストラック扱いで収録されている。具体的に何日のテイクかクレジットされていないが、2018年6~7月のヨーロッパツアーで「Breathless」を演奏したのは6月12、14日のポズナン公演、16日のクラコフ公演の3日間であり、このいずれかの公演で録音されたと思われる。YouTubeのKing Crimson公式アカウントで聞くことができる。

The Errors

スタジオ録音されなかったLineup VIIIの新曲。2017年11月13日にアメリカ、ニューヨーク州、ロングアイランド、パラマウントシアターで行われたライブで録音された。「The Errors」は2017年1月から2018年1月にかけて計25回演奏された。この音源はそのうち21回目の演奏である。『Audio Diary 2014-2017』(2018年)および『Audio Diary 2014-2018』(2019年)に収録されているものと同じ音源。

Ian, Boz & Robert [studio jam]

4thアルバム『Islands』(1971年)のレコーディングセッションから。Robert Fripp(ギター)、Boz Burrell(ベース)、Ian Wallace(ドラムス)の3人による演奏。Mr Stormy's Monday SelectionとしてDGM Liveで配信された。2021年12月に著作権切れ対策でダウンロード販売された『Islands』のレコーディングセッション音源のうち、1971年8月25日の「Band Jam」が同一の音源だと思われる。本ツアーボックスのブックレットには1971年7月22日とクレジットされているが、どちらが正確かは不明。

Disengage

Robert Frippのソロアルバム『Exposure』(1979年)のレコーディングセッションから。Robert Fripp(ギター)、John Wetton(ベース)、Phil Collins(ドラムス)の3人による演奏。「Disengage」のリハーサル音源は複数あるが、聞き比べたところDGM Liveでダウンロード販売されている1977年12月1日の音源と同一だと思われる。当時発売予定だったボックスセット『Exposures』(2022年)から先行して収録された。ボックスセット『Exposures』(2022年)ではベース奏者のクレジットがJohn WettonからTony Levinに変更されている。正確な記録が残っておらず、Alex 'Stormy' MundyはJohn Wettonのベースだと判断したが、Robert FrippはTony Levinのスタイルに近いが確信は持てないと書いている。

Guts On My Side

未発表曲。1974年3月19日にイタリア、ウーディネにあるパラッツォ・デロ・スポルトのライブで録音された。ブートレグ由来のこの音源がこの曲の現存する唯一の音源である。2010年にDGM Liveでダウンロード販売された。のちに『Starless And Bible Black』40周年盤(2011年)およびボックスセット『Starless』(2014年)に収録された。

Doctor Diamond

未発表曲。1973年6月16日にアメリカ、カリフォルニア州、バークレーにあるコミュニティシアターで行われたライブで録音された。2013年にDGM Liveでダウンロード販売された。

21st Century Schizoid Man

1stアルバム『In The Court Of The Crimson King』(1969年)収録曲のライブバージョン。1972年2月18日にアメリカ、ミシガン州、デトロイトにあるグランド・ボールルームで行われたライブで録音された。2013年にDGM Liveでダウンロード販売された(このときは2月17日とされていた)。のちにボックスセット『Sailor's Tale』(2017年)に収録された。

Trees [extract]

未発表曲。1969年10月17日にイギリス、クロイドンにあるフェアフィールド・ホールのライブで行われたライブで録音された。ブートレグ由来のこの音源がこの曲の現存する唯一の音源である。コレクターズ・クラブから発売された『Live At The Marquee 1969』(1998年)のボーナストラックが初出である。海外盤は18分41秒のフルバージョンだったが、1999年に『The Collectors' King Crimson Volume One』の1枚として発売された日本盤は4分6秒の短縮バージョンだった。本バージョンは3分46秒である。日本盤の短縮バージョンとの違いは演奏前のMCの有無である。また日本盤の短縮バージョンはカットアウトで終わっていたのに対し、本バージョンはフェイドアウトで終わる。本ツアーボックスのブックレットには当時発売予定だった(そして2020年に発売された)『The Complete 1969 Recordings』ボックスセットから先行して収録と書かれている。

The Sheltering 'scape

Alex 'Stormy' Mundyが複数の時代の録音を編集した音源。Mr Stormy's Monday SelectionとしてDGM Liveで配信された。具体的には……

  • 1981年5月にロンドンにあるベイシング・ストリート・スタジオで録音されたBill Brufordのドラムス

  • 1997年6月19日にアメリカ、コネチカット州、ハートフォードにあるメドウズ・ミュージック・シアターで録音されたRobert Frippのサウンドスケープ

  • 1981年7月にアメリカ、ニューヨーク州、ニューヨークシティにあるワシントン・スクエア・チャーチで録音されたRobert Frippのギターソロ

……の3つを組み合わせている。Bill Brufordのドラムは『Discipline』に収録されている「The Sheltering Sky」と同じだと思われる。1981年のワシントン・スクエア・チャーチ公演は7月27日から8月2日にかけて8公演行われている。本ブックレットには7月とクレジットされているが、何日の演奏かまでは特定できなかった。

まとめ

  • DGM Liveからダウンロードできる音源

    • 1973年ツアーから:3曲

    • 2019年ツアーから:4曲

    • Mr Stormy's Monday Selectionから:6曲

    • Bill Rieflin追悼音源:1曲

  • 発売済の商品から

    • 『Live At The Marquee 1969』(1998年)から:1曲

    • 『Champaign - Urbana Sessions 1983』(2003年)から:1曲

    • 『Islands』40周年盤(2010年)から:1曲

    • 『Starless And Bible Black』40周年盤(2011年)から1曲

    • 『Sailor's Tale』ボックスセット(2017年)から1曲

    • 『Live in Vienna』(2018年)から:1曲

    • 『Meltdown: Live In Mexico』(2018年)から:1曲

    • 『Audio Diary 2014-2018』(2019年)から:1曲

    • 『In The Court Of The Crimson King』50周年盤(2019年)から:1曲

  • 発売予定の商品から先行して収録

    • 『Exposures』ボックスセットから:2曲

  • 本ツアーボックスが初出となる未発表音源:3曲