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山下瞳月は櫻坂46の新時代をいかにして切り拓いて行くのか?


私は、櫻坂46に関するnoteを書き留める時、ライブや新譜発売時などグループの動向に沿ったその時々の感想を備忘録的にまとめることが多い。
また、メンバー一人ひとりにスポットをあてて取り上げる事もある。そして今までそれは、二期生が対象になるのが殆どであった。
いずれ、三期生の誰かを取り上げる機会が訪れるだろうとは思っていたが、そろそろ、その時期が来たのかも知れない…と意識しだしていた。

では、最初に誰を?
私は、三期生の場合一人だけを突出して見ることはほとんどない。
藤吉夏鈴は、3rdアニラの現地リハの時、スタジアムの片隅から三期生を見つめながら「集団として良くないですか?三期ちゃん…めっちゃ思います」と語っている。そのシーンが3rdアニラ円盤に収められているが、なるほどな〜と思った。
それだけキャラクターが豊富で、ポテンシャルの高い逸材が、奇跡的に揃っている状況だからこそ、もう少していねいに一人ひとりを把握していきたいと思ってきた。

そんな状況で、9thシングル表題曲『自業自得』のセンターに山下瞳月が抜擢された。
率直に言って彼女について語るのはとても難しい。
どこかミステリアスであり、なぜか不思議な存在、そしてどことなく危うい…と、感じている。
これまでもそんなメンバーがいなかったわけではなかろうが、彼女の場合は、また違う空気感をまとっていて、独特の雰囲気を醸し出している。
そんな彼女〜山下瞳月を、この機会にみてみたい。


7月3日夜に、突然、公式You Tubeチャンネルに於いて【期間限定】として『自業自得』の東京ドーム公演でのパフォーマンスの模様が公開された。
恐らく初日の初披露時のものと思われるが、その時私は現地で、暗転した薄暗がりのメインステージに、山下を先頭にメンバーがスタンバイ〜位置につく様子を「これは来るぞ!」と確信し興奮しながら、固唾をのんで見守っていた。
MVでは椅子に座った演出であったが、当然、ライブでは序盤から彼女がメインとなっている。
そして、初披露とは(しかもドームで!)思えないほどの堂々とした姿だった。

思えば、23年3月、横浜ぴあアリーナMMで開かれた
三期生おもてなし会にて『五月雨よ』のセンターとして、初めて公式の場で彼女の歌声を聴いた。
やや細い声質とは言え、とても“まろやかな”歌声は他のメンバーにはないものだった。
村井優とともに、直前で披露されたばかり〜とは言え、既に、ダンスメンとして認識されていた彼女がスローな『五月雨よ』を受け持つのは、少々意外だったが、その動きが実にしなやかなのは一目瞭然だった。
それからの日々を追って振り返りつつ、その三期生から初の表題センターとして、彼女が選ばれたことを考えると、ある意味「順当」なものであったと言っていいだろう。

正直に言うと、三期生を基軸にした新体制が早晩来ることは予測しつつも、そのセンターに誰がなるのか?と言った場合、山下瞳月の確率は高いとは認識していても、そのセンターのイメージはそんなに強くなかった。
しかし『自業自得』のMVを視て、ライブパフォーマンスも観て、TV各局の音楽番組も視て〜となると、疑いようもなく、彼女の放つオーラに魅了されてしまった…と、いうところだ。



以前、卒業直前の小林由依が「そこさく」の番組企画内で山下に対して「心配なのよ〜あなたのことが…」と気にかけていたのが、何とも印象的だった。
小林の鋭利なセンサーが山下の抱えている”何か“を敏感に感じとっていたのは明らかだった。

ダンスに関しては、全くの素人だから的外れなことを言っているのかも知れないが、そこはご容赦いただいて、私の印象を話していきたい。
ダンスメンもう一人の雄〜村井優のダンスは「正統派」と私には映る。
対して山下は、野球でいうところの本格派に対する「技巧派」と感じる。
ダンスシーンのトレンドなどは知る由もないが、素人目からしても「上手いなぁ…」と唸らされるものがある。一頃、話題になった『承認欲求』の“デフラワー”などはその典型的な例だ。
中高を通して、ダンスに打ち込んできた彼女は、そのダンスについて聞かれると、「私ごときが…」と言わんばかりの反応をする。インタビューでは「自信がない」と繰り返し答えてきた。
それは、いわゆる”謙虚さ“とは、また少し違うニュアンスが感じ取れた。これまでの経験から、自身に蓄積させてきた、ある種の「諦観」と言ったものに近いと思わせた。

━━(略) おもてなし会のときは「五月雨よ」でセンターに立ちました。ボーカル始まりの曲ですけど、いかがでしたか?
終わったなと思いました(笑)。私が歌がヘタなことも苦手なことも三期生は理解しているので、みんなから「大丈夫?」って言われました(笑)最終的にはみんなすごく褒めてくれたんですけど、レッスンとかで最初にアカペラで1人で歌うときは、このうえない緊張というか、すごく声が震えてました。本番も。
(略)
━━Buddiesのみなさんは、櫻坂46の代表曲を三期生がやることを果たして受け入れてくれるのかと。
みなさん優しいので受け入れてくださいますけど、やっぱりちょっと批判的な意見も一部で出てくるかもしれないじゃないですか。それをみんな怖がっていて。でも私たちはそうならないように練習するしかないので。中途半端なものを見せて批判されるならそれはそうだけれど、完璧なものを見せたいという気持ちがあったので、みんなで頑張りました。完璧なものというか、自分たちの納得のいく、いいものを踊ることができたらと思ってました。
━━では、今後どんなアイドルになりたいかですけど、理想像とか、あの人みたいになりたいという目標の人はいるんですか?
それがなくて。私は理想像を作らない人なので。この方のようなアイドルになりたいというよりは、自分が思うようなアイドルでいたいなと思います。
━━それを言葉にすると?
「あたたかいアイドル」です。誰からも愛されるというか。ファンの方からもですけど、普段お会いするスタッフさんとかからも「山下は話しかけやすいな」と思っていただけるような、人としてあたたかい人になりたいなと思っています。

『IDOL AND READ 035』(2023年8月10日発行)

冠番組『そこ曲がったら櫻坂?』の9thシングル『自業自得』ヒット祈願として、三期生が権現岳登山に挑んだ。上の画像は配信元のLeminoのサムネだが、山下だけ”9“のサインが違っている。
意図したものか偶然なのかは不明だが、仮に偶然だとしても、こちらが勝手に深い理由づけを考えてしてしまうほどに彼女が放つ“何か”を感じとってしまう。
三期生初の表題センターとして、番組企画をリードしていこうとする姿と、抑えきれない恐怖心やプレッシャーから思わず感情があふれる姿。向井純葉とのかけ合いなど、二十歳前の一人の女性としての自然体な言動が新鮮で輝いたものだった。


ちなみに私は高校時代、(弱小)山岳部に所属していた。
当時の私の経験では、隊列(パーティ)を組んで登山•下山•縦走する際、体力に不安のある者は二番目に置く。逆に余裕のある者は後方に回る。二番目は前にいる先頭の者についていくことに集中すればいいのだが、後方の者は、全体の進む(止まる)ペースにその都度合わせなければならないので、心身ともに負担が大きいからだ。
今回、さらに後ろには、スタッフが付いているとは言え、後ろにゆーづとりかたんが、自ら回ったのは流石と言ったところか…ここにも三期の「強さ」をみた。


櫻坂46として、リ・スタートした彼女たちだが、その先頭にいたのは森田ひかるであったろう。
絶対的エースとして、その地位は今も揺らぎはないと思っている。
先のドーム公演で魅せた『Dead end』の”シグナるんるん“〜『承認欲求』での彼女にしては珍しい煽りのシャウト。
山﨑•藤吉とともに切り拓いて来た櫻坂の道〜だったが、彼女はことさら自分個人を前に出す言動は取らない。常に「グループファースト」である姿勢は一貫している。
その姿が、時に山下と重なる場合がある。

おもてなし会後のインタビューでは、上記のように答えていた山下であったが、『承認欲求』で選抜メンバー、そしてフロントメンバーになった後では、発言(意識)に変化があったようだ。

━━では、現在フロントメンバーとしてセンターの森田ひかるさんの隣で学ぶことも多いのでは?
『承認欲求』期間に入ると森田さんの方から歩み寄ってくださって。歌番組に出演した際に告知写真を撮る場面があったりすると、森田さんから手を握ってくださったりするので、この期間で少し距離が縮まったんじゃないかなって思うことも増えてきました。森田さんはさらっと気遣いをしてくださるんですけど、それもかっこいいというか、優しさがこもっていて。自分がどういうアイドルになりたいのかわからなかったんですけど、森田さんのような方になりたいんだなと思いました。
━━森田さんとコミュニケーションを取るようになったことで、自分が変わるきっかけになったと。
そうですね。森田さんのパフォーマンスを間近で見ると、スイッチが入ると目が変わるというか。一言で表すとプロだなって思います。ヒット祈願の時もそうでしたけど、絶対に決めなきゃいけないところで決めてくださるのがかっこよくて。自分もこういう人になりたいなと思いました。

『blt graph vol.96』(2023年11月17日発行)


現在発売中のB.L.T.8月号の巻頭特集でのインタビューが山下瞳月の現在地を理解する上で、とても参考になるものだった。
発売直後なので、具体的引用は今回も避けるが、敢えて一つだけ〜
「いろいろな人を見てきて、『こういう人のようにはなりたくないな』と選択する気持ちがいつしか強くなって、そうやって生きてきたら今の私になりました(笑)」
山下瞳月〜お前いい奴だな…(笑)
私には、その気持ちがとてもよくわかるw
これからの人生、もっともっとそんな人間と関わらざるを得ない場面があることでしょう…

『静寂の暴力』『自業自得』で魅せてきた山下が、これから立ち向かうであろう『もう一曲 欲しいのかい?』が、今からとても楽しみだ。
エフェクターをかけまくって、小型拡声器を片手にアジテートするがごとくの歌声には強い興味しかない。

森田ひかるらとともに、そして三期生たちと一緒に櫻坂をリードしていくことになるであろう山下瞳月の今後が、彼女のキャラクターから却って予測しづらいことも含めて、期待感がより高まっている。

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