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増本論

【櫻坂における増本綺良の状態】         

ヨーロッパに幽霊が出る。共産主義という幽霊である。〜とはマルクス・エンゲルスの『共産党宣言』冒頭の有名な一文である。
そのマルクスの『資本論』とエンゲルスの『イギリスにおける労働者階級の状態』をもじってタイトルをつけてみた。特に意味も他意もない。

さて、我々の界隈で言えば、ホニャララの亡霊などと揶揄される(する)ことも、ままあったりするのだが、それはさて置き、ある時期から幽霊ならぬ“怪物”が出現した〜と言ってもいいほどの人物が登場してきた。
そう「増本綺良」その人である。

このnoteの場ではグループ全体のことはもちろん、メンバー個々人もピックアップして私の拙い見方を開陳してきた。
けれども、私の一推し増本綺良についてはなかなか真正面から採り上げるのを敬遠してきた節がある。それだけ彼女について語るのは、結局自分自身を語ることにもなり、少し気恥ずかしさもあり、文章化も何気に難しいからとの思いで慎重にならざるを得なかった。
ただ、昨年末からの彼女へのターンをみるにつけ、さすがにここで一度まとめるべきでは…との思いに至った。




そもアイドルとは何ぞや⁉



アイドルとは文字通り「偶像」であり、アイドルを応援するとはある種の「偶像崇拝」であろう。○○信者という表現もそれからすればそう間違ってはいない。
ただ、櫻坂メンバーが「アイドルとして〜」といった表現を使う度に、私は少し違和感を抱く場合がある。
男性アイドルならカッコよく、女性アイドルなら可愛らしくといった定形の枠組みがあった時代を通過してきたおじさんには、どうにもしっくりこないのだ。
今の時代のアイドル像の定義は承知していないし、それをガチガチに固めた見方をしても意味がないとは思うが、少なくとも私は、櫻坂を「アイドルであってアイドルではない」グループとして見ている。

私は音楽を聴くのも、ダンスを観るのも大好きだから、芸能界にはずっと関心を持って見てきた。
秋元康について深く語るのは、この稿の主旨ではないので別の機会に譲ることとしたいが、ただ、いわゆる「秋元グループ」あるいは「秋元商法」には当初から嫌悪感を抱いていた。
芸能という世界は伝統的なものでありながらも、時代の消費材であり続けるものでもあることは重々承知している。しかし、不愉快なものを露骨に見せられると(錬金術的なもの、性的趣向の強いもの…) どうしても反発してしまう。
だから、おニャン子クラブにしてもAKB48にしても私は少し冷めた目で距離を置いて見てきた。
乃木坂46についても「おいでシャンプー」の振付け問題など「またやってるわ〜」ぐらいの見方しかしてこなかった。

そして欅坂46である。
私は当初「乃木坂のオルタナティブなもの」という認識であったが、それはあながち間違ってはいなかったとは思う。結果的に3つとなった(途中経過は色々あったにせよ) 坂道グループが、営業戦略上それぞれに差別化を図るのは当然のことであろう。
(もし乃木坂と似た様なアプローチだったとすれば、恐らく特別意識はしてこなかっただろう)
また、握手会などは芸能界ではずっと以前から存在していたファンサービス、ファン獲得の方法ではあるが、それをより拡大化、細分化させて一つのパッケージ〜ビジネスモデルとして提示してきた事実は、やはり“秋元商法恐るべし…”の感を強く持っていた。
そして、そんな世界には決して関わるまいと思っていた自分が、結果的にハマっているのだから人の世というか世の中わからんもんだな…と自嘲している。
まぁ秋谷にあるという秋元康の別荘のコンクリートのいくつぶて分、あるいは鉄筋の何センチ分かは貢献しているのだろうという自負は持っているw

増本綺良とは何者なのか⁉

今回も前置きが長くなったが、そろそろ本題に入っていこう。
過去のnoteにも記してきたが、増本綺良がいなければ、あの時期の欅坂46、そして続く櫻坂46により強い関心は持っていなかっただろうと断言できる。
そんな増本綺良に引き寄せられる彼女の持つ魅力とは一体何なのだろうか?

人が人に好意を持つ時、さらに言えば恋愛感情を抱く時とはいかなる時か〜
自分にはない何かを持っている、あるいは自分と共通の何かを持っていると認識し、共鳴したと自覚的になった時ではなかろうか?
ただ、その意識は過敏で、時に鈍感で、裏腹かつ、とてもセンシティブなもので、反発や嫉妬心、嫌悪感を持つ場合もあり得る。
「とても魅力的で素敵な人だな…」と思う一方で、
「あぁこの人とは一生わかりあえないな…」と思う場面もあり、その繰り返しこそが哀しいかな人の世の常であると思っている。

若い時分から、いわゆる好みの異性のタイプというのは、漠然とではあれ頭の中で思い描いてはいた。
ただ実際に好きになった相手というのは、その思いとは別のタイプであった…というのは今振り返ってみても、ままあった。
自分のテリトリーでの現実社会と、アイドルを混同するのはいささか違うものと理解はしているが、増本綺良もこのケースに当たるのでは…と思っている。

「大不思議」という括り方をされる増本ではあるが、いわゆるキャラ付けとして「不思議ちゃん」を演じるケースというのはこの世界ではよくあることだ。でも、彼女にはそんな芝居じみた素振りは微塵もない。また、よく言われる「天然」とも違う。
強いて言えば彼女の場合は、自身の気持ちのあり様を心のままに間髪入れず言動に移す能力が、異様に高いのではないかということだ。
「あっこの子頭いいな…」と思わせる場面が多々ある人はそうそういるものでもない。

増本 「変わってるね」と言われているうちに、「確かに人と違うかも」と思うようになったけど、私はこれまで自分のことを普通だと思って生きてきたから。みんな違ってみんないいじゃないですか。だって、世界に私と大沼さんと松田さんしかいなかったら、少数派の松田さんが変わり者じゃないですか。私と大沼さんは少数派の人間というだけのことだと思うんです。

『BUBKA』2022年8月号  
 

欅の世界観を体現している人物が、その組織の中に加わっていく〜
不思議な偶然の答えは、ある意味必然だったのか…


私が彼女をより認識し出したのは坂道研修生を経て、欅坂46配属発表時のSHOWROOM配信からであったと思う。
その頃の私は、欅坂で起こる色んな出来事に嫌気がさしていた時期だったのでグループとは少し距離を置いていた。新二期生加入も事実経過確認程度の意識しかなかったのが実際のところだった。

その配属SHOWROOMで増本は「伝達」と言う言葉を色紙に書いて決意表明をしている。
欅坂配属当初からのブログをあらためて読み返してみても、配属以降のインタビュー記事をみても、彼女が綴る文章や発する言葉には「伝える心と力」が読み取れる。

渡邉理佐さんの目が、本当にすごかったんです。その日の目は、遠くを見つめているというか、前を見てるというか、一点だけを見つめていて迷いがない感じ。その目を見て、自分も早く気持ちを切り替えて、先輩たちと同じ方向を見なければいけないなと思いました。

『別冊カドカワ』           総力特集 欅坂46/櫻坂46
カドカワムック№810 2020年11月18日発行号

私が特に注目したのは上記インタビューだ。
『KEYAKIZAKA46 Live Online,but with YOU!』(20年7月16日)での渡邉理佐の凄さを伝えると共に、彼女が渡邉理佐を選び捉える視点に感服した。

そしてもう一人…

(略) それでライブ当日になったら『黒い羊』の時はスモークがぶわーってなって、それがモワモワしてるなかを出ていくっていう。そしたら、尾関(梨香)さんが、私の近くにいました。それで、『黒い羊』は最初にみんなでぎゅっと固まるんですけど、その時に尾関さんが私の腕を震えるぐらいの強い力で握ってくれたんです。尾関さんは、誰の腕かは気にしていなかったかもしれないんですけど、とにかく本当にすごい力で私の腕を握ってくれたんです。それで私の(欅坂46から櫻坂46に改名して再スタートする)
覚悟も本当の意味で決まったというか、『黒い羊』をパフォーマンスするのも最後かもしれないと思いながら全力を出しました。

同上

『欅坂46 THE LAST LIVE』(20年10月12~13日)での尾関梨花について触れている。

まさに目の前でその場面が展開するのを実感させるような言葉の綴り方で描写していく。
増本はその後もこの二つのエピソードを話す機会があり、本人にとって強烈なインパクトを与えたものと思われる。

その後、この二人をはじめ何人かの卒業していく先輩を見送る度に、ブログで思いのたけを文字にのせてきた。櫻坂メンバーのみならず増本がアイドルを目指すきっかけとなったという乃木坂の大園桃子卒業に際してのブログなど、その実直で飾り気のない言葉が、多くのBuddiesの感動と共感を呼んでくることになるのは周知の通りである。

なぜにこんなピュアな人間が育ってきたのか?
兵庫時代のエピソードを披歴する度に、おおらかな環境(家族・自然・社会)が、彼女の人格形成に多大な影響を与えているであろうことは想像に難くない。

人はなぜ増本綺良に惹きつけられるのか⁉

ー 増本さんて、女性のファンが多いですよね。その理由って自己分析できますか?
増本 オンラインミート&グリートで女性の方が多いって感じることはあります。美容について聞かれたこともないし、なんででしょうね。ただ、「好きになった理由を教えて」と聞くと、男女問わず「笑顔」と言われることが多いんです。

『Top Yell NEO』 2022 SPRING号


21年6月16〜18日の三日間、舞浜アンフィシアターにて開かれたBACKS LIVEで、増本は「Buddies」のセンターを務めた。
初日、守屋茜や齋藤冬優花らと並んでのMCの時、突然涙した彼女に驚くと共に、後の「Buddies」での満面の笑みに心打たれた。またアンコールで「バディーズ!」と、はにかみながら曲名を告げた時の笑顔は、私にとって、かつて見たことがないとても純粋で輝いたものであった。人がこんなに素敵な笑顔ができるのだろうかと…

増本は自らを「お調子者」と評しているが、先輩の懐に臆せず飛び込んでいく姿勢と、人への距離感の絶妙さ(時に接近しすぎるキライもあるが 笑) に、そして時折見せる弱気な心情の吐露に、彼女の魅力を感じてしまうのだ。
場合によっては誤解やハレーションを生んだこともあったに違いない。それ故運営側もなかなか彼女を前面に出す機会を躊躇させて来たのか〜と詮索もしてきた。
表題選抜を外れた場面でも「キラのナカマ」に対して彼女の素直な気持ちをその都度表してきていた。
そんなところにも彼女ヘの思いを集中させる大きな要素であったのだろうと思う。

そんな忸怩たる思いを重ねながらも、いよいよ彼女にも「時」が訪れる展開となったのだ。
遂に悲願の5th表題選抜入り、更にはラヴィット!23年1月〜3月のシーズンレギュラーを勝ち取ったのである。
ところで選抜入りを果たした時に、メッセージアプリなどで、すぐにでも嬉しい報告をしたかったに違いないと思うのだが、彼女は一日置いて報告と感謝の言葉を述べた。おそらくは、非選抜メンバーヘの配慮があったのだろうと私は思っている。
実際の処はもちろんわからないが、色んな場面で心配りが出来る人であるという認識に変わりはない。


5th『桜月』の映像特典として「マネージャーのスマホに眠るメンバーの秘蔵動画集」が収録されている。特典映像として収める必然性はあったのかとの疑問もなきにしもあらずだが、内容そのものは大変興味深いものであった。
中でも、増本が『流れ弾』の藤吉夏鈴、『五月雨よ』の山﨑天をデフォルメして真似るシーンは何度みても笑みがこぼれてくる。
ラジオ番組で小池美波や藤吉夏鈴の『流れ弾』でのセリフを採り上げてきた増本ではあったが、映像で観ると彼女の様がよくわかる。

かつて徳永英明が(徳永幕府ではないw) が関西の「いちびり」という言葉のニュアンスを伝えるのはとても難しいと、とある番組で言っていたことがあったと記憶する。
私も関西人ではないので、そのドメスティックなニュアンスはわからないが、まさに増本のこの場面は「いちびった」顔でふざけていたと言えるのではないか。しかも左手にお好み焼きとおぼしきパックをつかんだままで(笑)
そんなところも私をはじめ多くのBuddiesが彼女に惹かれるところではないかと思う。



ラヴィット!シーズンレギュラーを務め終えた日に際して、色々と綴ってみた。

次なるステージも用意されている。
そして、いよいよ3rdTOURのリハも始まっているやに訊く。
増本をはじめ(もちろん三期生を含む)メンバーに会う機会があることを楽しみにしながら、その日を待ちたい。











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