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『収縮性心膜炎』 心エコー図検査の時に、いつも難しいーって思う。毎回検査時に悩む。えーい、今日は覚えるぞ!え?そうなの?いやいやそんなにねー。

数々の疾患の中でも、収縮性心膜炎はその進行が早く、危険性も高いとされています。本記事では、収縮性心膜炎の症状や原因、治療法について詳しく解説します。まず、収縮性心膜炎の主な症状としては呼吸困難や胸部痛、体のむくみなどが挙げられます。さらに、ウイルス感染や薬剤の副作用、胸部外傷などが原因で発症することもあります。治療法としては、炎症の抑制や心臓の負担軽減が主な目的となりますが、重症の場合には移植手術が必要となることもあります。収縮性心膜炎の正しい知識を持ち、早期の発見と治療を行うことが重要です。

病態

心膜の繊維性肥厚、石灰化、癒着などで心臓の進展性が失われ、心室の拡張障害が起こる。これにより、心拍出量が低下し、心不全の症状を引き起こす可能性があります。早期に治療を行わないと、生命を脅かす事態につながることもある。

病状が進行すると、心筋が硬くなり、心拍出量がさらに低下します。これは、心筋の収縮力が低下するためです。これにより、体への血液供給が不足し、様々な臓器に影響を与えます。特に、腎臓と肝臓は血液供給が不足すると機能が低下し、体内の毒素を排出する能力も低下します。

さらに、収縮性心膜炎は、呼吸困難、胸痛、脚の腫れなどの症状を引き起こす可能性があります。これらの症状は、心臓の機能が低下することにより引き起こされます。そのため、これらの症状が現れたら、すぐに医療機関に連絡する必要があります。



症状と治療

収縮性心膜炎の進行に伴い、全身の浮腫や体重増加などの症状も見られることがあります。これらの症状は体内の液体バランスが崩れることにより引き起こされます。特に、脚や足首の腫れ、体重の急激な増加、短気や息切れなどが見られる場合は、収縮性心膜炎の可能性があります。これらの症状が現れたら、すぐに医療機関に連絡する必要があります。

奇脈は、心拍のリズムや速度が不規則になる状態を指します。これは、心臓の電気的な活動が乱れることにより引き起こされます。収縮性心膜炎では、心膜の硬化や肥厚により心室が正常に拡張できず、心拍のリズムが乱れることがあります。

頸静脈怒張は、首の静脈が膨張する状態を指します。これは、心臓からの血液が適切に体に送り出されず、静脈内の血液が逆流することにより引き起こされます。収縮性心膜炎では、心室の拡張障害により心拍出量が低下し、血液が体に適切に送り出されないことがあります。これにより、首の静脈に血液が溜まり、頸静脈怒張が起こる可能性があります。

Kussmaul兆候は特定の病態において観察される呼吸パターンで、呼吸が深く、一定のリズムで続く状態を指します。この呼吸パターンは、体内の酸素供給が不足し、二酸化炭素の排出が増えることにより引き起こされます。つまり、体が必要とする酸素量が確保できないときや、体内の二酸化炭素が過剰になると、このような呼吸パターンが現れます。これは体が、酸素をより多く取り込み、二酸化炭素をより効率的に排出しようとする調整反応の一部です。

収縮性心膜炎の患者さんにおいては、心室の拡張障害が心拍出量の低下を引き起こすため、体全体への酸素供給が不足します。その結果として、体は酸素の取り込みを増やし、二酸化炭素の排出を促すために、深くリズミカルな呼吸、つまりKussmaul兆候を示す可能性があります。

Kussmaul兆候は、収縮性心膜炎だけでなく、他のいくつかの病状、特に代謝性アシドーシス(体内の酸化が進む状態)を伴う病態でも見られます。この兆候が見られる場合、必ずしも収縮性心膜炎を意味するわけではありませんが、心臓の病状を含む様々な可能性を考慮に入れる必要があります。

心エコーは、超音波を利用して心臓の構造や動きを映像化する検査方法です。心膜の厚みや硬さ、心室の拡張能力など、心臓の物理的な状態を詳しく観察することができます。この検査は非侵襲的で、患者さんの負担が少ないのが特徴です。

一方、心臓カテーテル検査は、血管を通じてカテーテル(細長い管)を心臓に進め、心臓内の血液の流れや圧力を直接測定する検査方法です。これにより、心室の拡張障害や心拍出量の低下など、収縮性心膜炎の機能的な影響を詳しく調べることができます。ただし、この検査は侵襲的であり、患者さんの体調や状態によっては行えない場合もあります。

これら二つの検査を組み合わせることで、患者さんの心臓の状態を全面的に把握し、最適な治療法を選択することができます。

右心室の圧力波形は一般的に「dip and plateau」と表現される特徴を持っています。これは、心室収縮期において、急速に上昇した後、一定のプラトー(平行)期間を経て再び下降するパターンを指します。この特性は、右心室の機能と血行動態を理解する上で重要な役割を果たします。

具体的には、心室収縮期に心臓が血液を体全体に送り出す際、圧力は一時的に高まります。この時点での圧力のピークが「dip」に相当します。その後、心臓が一息つく間(心室弛緩期)、圧力は一定のレベル(プラトー)を保つことができます。このプラトー期間は心室が再び血液を充填する時間となります。最後に、次の心拍に備えて心室が再び収縮を始めると、圧力は再び下降します。

この「dip and plateau」のパターンは正常な心臓機能の一部ですが、心臓病の存在下では異常な形状やパターンを示すことがあります。たとえば、右心室の圧力が異常に高い場合、プラトー期間が長引くか、あるいは「dip」のピークが異常に高くなることがあります。これらの変化は、右心室の拡張障害や収縮障害、肺高血圧など、さまざまな心臓疾患の存在を示唆する可能性があります。

したがって、「dip and plateau」のパターンは、心臓の機能的な状態を評価し、特定の心臓疾患の診断に役立つ重要な指標となります。心エコーや心臓カテーテル検査などの心臓機能評価ツールを使用して、「dip and plateau」のパターンを観察し、他の臨床的な指標と組み合わせることで、より正確で包括的な診断を行うことが可能です。

CPのE/e’について、僧帽弁輪逆転
収縮性心膜炎においては、左室の充満圧を推定する際にE/e’を使用することは推奨されません。E/e'は通常、左室の拡張機能を反映する指標として使用されます。Eは心房収縮期の血流速度を、e'は早期拡張期の僧帽弁輪運動速度を示します。この比率は通常、左室の拡張圧、すなわち、心室がリラックスして血液を受け入れる能力を反映します。

しかし、収縮性心膜炎の場合、心膜の硬化や癒着により、心室の拡張機能が障害を受けます。この結果、心室が適切にリラックスし、心房からの血液を受け入れる能力が失われます。これにより、E/e'の値は高くなる可能性がありますが、これは心室の拡張機能の障害を反映しているのではなく、心膜の硬化や癒着による物理的な制約を反映しています。したがって、収縮性心膜炎ではE/e'を使用すると、誤った解釈を導く可能性があります。

さらに、収縮性心膜炎では僧帽弁輪逆転が減少するという現象も観察されます。僧帽弁輪逆転とは、心拍周期中に僧帽弁のリングが下向きに移動する現象を指します。通常、この動きは心室の拡張と収縮に連動しています。しかし、収縮性心膜炎では、心膜の硬化や癒着により、この僧帽弁輪の動きが制限され、逆転が減少します。これは、心室の拡張機能の障害と密接に関連しており、心不全の症状を引き起こす可能性があります。したがって、収縮性心膜炎の診断と管理には、これらの特異的な現象を適切に理解し、評価することが重要です。


CPの原因

  • 特発性:原因不明 

  • 感染性:結核、ウイルス、細菌

  • 非感染性: 心膜切開後症候群、放射線治療後、腫瘍性、自己免疫性


心エコー図検査

心エコー図は収縮性心膜炎の診断と管理において非常に重要なツールです。心エコー図は、超音波を利用して心臓の構造や機能をリアルタイムで視覚化する非侵襲的な検査方法です。これにより、医師は心臓の異常や疾患を早期に検出し、適切な治療計画を立てることができます。

収縮性心膜炎では、心膜が厚く硬化し、その結果心臓の拡張能力が制限されます。この状態は心エコー図を用いて明確に観察することができます。具体的には、心膜の厚みや硬さ、心室の拡張能力の低下などを評価することができます。これらの情報は医師が患者の状態を理解し、適切な治療を選択するために非常に重要です。

さらに、心エコー図により心室の収縮力や心拍出量も評価することができます。これにより、収縮性心膜炎が心機能にどのような影響を与えているかを理解することが可能となります。また、心エコー図は治療の効果を評価し、治療計画を調整するための有用なツールでもあります。治療が進行するにつれて、心膜の肥厚や硬化が改善し、心機能が改善することが視覚的に確認できます。

しかし、心エコー図には限界もあり、限定的な情報しか提供できません。そのため、他の診断ツールと組み合わせて使用することが一般的です。例えば、心臓カテーテル検査を行うことで、心室内の圧力や心拍出量を直接測定し、より詳細な情報を得ることができます。これにより、より正確で包括的な診断と治療計画の作成が可能となります。

また、心エコー図は、心臓の動きに関する情報を提供します。これにより、医師は心拍のリズムや速度、心臓の大きさ、心室や心房の形と大きさ、僧帽弁や三尖弁の動き、心室壁の運動などを評価することができます。これらの情報は、収縮性心膜炎の診断と治療を補助し、患者の心臓の健康状態を監視するのに役立ちます。

心エコー図のもう一つの重要な役割は、治療の効果をモニタリングすることです。治療が進行するにつれて、心膜の肥厚や硬化が改善し、心臓の拡張能力が向上するかどうかを確認することができます。これは、治療の効果を評価し、必要に応じて治療計画を調整するために重要です。

結論として、心エコー図は収縮性心膜炎の診断と治療を補助する重要なツールです。しかし、心エコー図だけでは限定的な情報しか提供できないため、他の診断ツールと組み合わせて使用することが一般的です。これにより、医師は患者の状態をより正確に評価し、最適な治療計画を立てることができます。

収縮性心内膜炎の血行動態の特徴 呼吸による胸腔内圧と心腔内圧の乖離

収縮性心内膜炎の血行動態の特徴は明確であり、呼吸による胸腔内圧と心腔内圧の乖離がその証拠となります。

収縮性心内膜炎では、心膜の厚化や硬化により、心臓の拡張機能が制限され、血液の流れが阻害されます。これは呼吸によって胸腔内の圧力が変化すると、正常な状態では心臓もこれに追従して拡張し収縮しますが、収縮性心内膜炎ではこの動きが制限されます。したがって、呼吸による胸腔内圧と心腔内圧の乖離が生じ、これが収縮性心内膜炎の血行動態の特徴となります。

心エコー図の特徴的な所見

1. 拡張障害が起きていため、小さい左室と代償性に拡大した左房
2. IVCの拡張と呼吸性変動の減弱
3. 心膜の肥厚と石灰化
   ( 個人的にこれははっきりわからない、高輝度エコーをなんでもCPとすると大失敗する)
4. 心膜癒着サイン
5. septal bounce
6. 心室中隔の拡張期dip
7. 左室後壁の拡張中期〜後期の平坦化
8. 左室および右室流入血流速度波形の呼吸性変動
9. 肝静脈血流波形の呼吸性変動
                                         など

心エコー図の特徴的所見についての詳しい説明


1. 拡張障害と左室の縮小

収縮性心膜炎では、硬化した心膜が心臓の正常な拡張を阻害します。これにより、特に左室の拡張が制限され、左室内の容量が減少します。心エコー図では、以下の所見が見られます:

  • 左室内径の減少:左室の拡張期における内径が正常よりも小さくなります。

  • 心膜肥厚:心膜が厚くなり、エコー図上で高エコーとして観察されることが多いです。

  • 左室壁の運動低下:左室壁の運動が制限され、特に拡張期に壁運動が低下していることが確認されます。

2. 左房の代償性拡大

左室の拡張障害により、左室への血液充満が制限されるため、左房に血液がうっ滞しやすくなります。これにより、左房は代償的に拡大します。心エコー図では、以下の所見が観察されます:

  • 左房径の増大:左房の内径が拡大し、通常よりも大きくなります。

  • 左房圧の上昇:左房内の圧力が上昇し、これが肺静脈圧の上昇を引き起こすことがあります。

  • 左房壁の肥厚:左房の拡大に伴い、左房壁が厚くなることがあります。

Oh, J. K., & Tajik, A. J. (2016). The Echo Manual (4th ed.). Lippincott Williams & Wilkins.

Klein, A. L., & Garcia, M. J. (2017). Diastology: Clinical Approach to Diastolic Heart Failure (2nd ed.). Elsevier.

Schaff, H. V., & Orszulak, T. A. (2019). "Pericardial Diseases" in Mayo Clinic Cardiology. Oxford University Press.


3. IVCの拡張と呼吸性変動の減弱

収縮性心膜炎(Constriction性心膜炎)は、心膜の肥厚および硬化によって心臓の正常な収縮・拡張が制限される疾患です。この病態においては、下大静脈(IVC)の拡張と呼吸性変動の減弱が重要な診断所見となります。以下にその詳細をまとめます。

1. IVCの拡張

収縮性心膜炎では、心膜の硬化により右心系への血液の流入が妨げられ、右房および右室の充満圧が上昇します。この結果、IVCにおける血液の逆流および圧力が上昇し、IVCが拡張します。

2. 呼吸性変動の減弱

通常、IVCは吸気時に陰圧の影響で径が減少し、呼気時に径が増加します。しかし、収縮性心膜炎ではこの呼吸性変動が減弱または消失します。これには以下の理由が考えられます:

  • 右心系への圧力伝達の阻害:心膜の硬化により、右心房および右心室の圧力変動が制限されるため、IVCの呼吸性変動が抑制されます。

  • 静脈還流の制限:吸気時の静脈還流が増加しても、硬化した心膜が右心室の拡張を阻害するため、IVCの変動が少なくなります。

血行動態の影響

IVCの拡張と呼吸性変動の減弱は、収縮性心膜炎の診断および病態理解において重要な手がかりとなります。具体的には:

  • 右房圧の上昇:IVCが拡張し、右房の圧力が上昇していることを示唆します。

  • 全身静脈圧の上昇:IVCの拡張は全身静脈圧の上昇を反映しており、末梢浮腫や肝うっ血などの症状と関連します。

  • 右心系の充満障害:呼吸性変動の減弱は、右心系の充満が制限されていることを示します。

診断と治療への応用

IVCの拡張および呼吸性変動の減弱は、収縮性心膜炎の診断において重要な所見です。これらの所見は、心エコー図検査によって非侵襲的に評価され、診断の確定および治療方針の決定に役立ちます。

心エコー図による評価

  • IVCの評価:IVCの径および呼吸性変動を観察します。吸気時および呼気時の径の変化を計測し、その変動幅を評価します。

  • 右心系の評価:右房および右室の内径、壁運動、充満圧を評価し、収縮性心膜炎に伴う変化を確認します。

Oh, J. K., & Tajik, A. J. (2016). The Echo Manual (4th ed.). Lippincott Williams & Wilkins.

Klein, A. L., & Garcia, M. J. (2017). Diastology: Clinical Approach to Diastolic Heart Failure (2nd ed.). Elsevier.

Schaff, H. V., & Orszulak, T. A. (2019). "Pericardial Diseases" in Mayo Clinic Cardiology. Oxford University Press.

4. 収縮性心膜炎における心膜の肥厚と石灰化

収縮性心膜炎(Constriction性心膜炎)は、心膜の肥厚および石灰化が心臓の正常な収縮・拡張を阻害することで発生します。このセクションでは、心膜の肥厚と石灰化の詳細、およびこれらの所見が心エコー図検査でどのように評価されるかについて説明します。

1. 心膜の肥厚

収縮性心膜炎では、心膜が異常に厚くなり、心臓の動きを制限します。心膜の肥厚は、通常、慢性的な炎症や感染、外傷などが原因で発生します。心エコー図検査では、以下の所見が観察されます:

  • 高エコー反射:肥厚した心膜はエコー図上で高エコー(明るく)として現れます。

  • 心膜の二重層:肥厚した心膜が二重層のように見えることがあります。

  • 肥厚の均一性:肥厚が局所的である場合もありますが、一般的には心膜全体にわたって均一に肥厚が認められることが多いです。

2. 心膜の石灰化

石灰化は、心膜の硬化とともに進行することが多く、心臓の柔軟性をさらに低下させます。石灰化は、長期的な炎症反応の結果として生じることが多いです。心エコー図検査では以下の所見が特徴的です:

  • 高輝度エコー:石灰化した部分は非常に高輝度なエコー(白く輝く)として見えます。

  • 影(アコースティックシャドウ):石灰化によってエコーが後方に透過しにくくなるため、石灰化の後方に影が生じることがあります。

  • 不均一な心膜:石灰化の分布は不均一であり、局所的に強い石灰化が観察されることが多いです。


5. 収縮性心膜炎における心膜癒着サイン

収縮性心膜炎(Constriction性心膜炎)は、心膜が肥厚・硬化し、心膜と心臓の間に癒着が生じることで、心臓の拡張が制限される病態です。心膜癒着サインは、この病態を評価するための重要な診断指標の一つです。ここでは、心膜癒着サインについて詳しく説明します。

1. 心膜癒着とは

心膜癒着は、心膜と心臓表面(特に心外膜)が異常に接着し、正常な滑動運動が制限される状態を指します。これにより、心臓の正常な拡張が妨げられ、心機能に影響を及ぼします。

2. 心膜癒着サインの評価

心エコー図検査は、心膜癒着サインを評価するための重要な非侵襲的手段です。以下に、具体的な評価方法と所見を示します:

  • Mモードエコー図

    • 心膜と心外膜の異常接着:心膜と心外膜の間に正常な滑動が見られず、固定されているように見える。

    • 吸気時の異常な運動:吸気時に右心室壁が引き込まれるような運動が観察されることがあります。

  • 2Dエコー図

    • 異常な心膜運動:心膜の動きが制限され、正常な滑動が見られない。

    • 局所的な肥厚:心膜の一部が異常に厚くなっている場合、その部分で癒着が生じている可能性があります。

    • 心房および心室の変形:癒着により心房や心室が異常な形状をとることがあります。


6. 収縮性心膜炎におけるSeptal Bounce

収縮性心膜炎(Constriction性心膜炎)は、心膜の硬化と肥厚により心臓の正常な収縮・拡張が制限される病態です。この状態では、特有の心エコー図所見として「septal bounce(中隔バウンス)」が観察されます。ここでは、septal bounceについて詳細に説明します。

1. Septal Bounceの定義

Septal bounce(中隔バウンス)は、心室中隔(心室の間に位置する壁)が心臓の収縮・拡張サイクル中に異常に動く現象です。特に収縮性心膜炎においては、この異常な動きが顕著に観察されます。心エコー図で確認できる典型的な所見です。

2. Septal Bounceの原因

Septal bounceの主な原因は、硬化した心膜が心臓の拡張を制限し、心室間の圧力バランスが異常になるためです。この異常な圧力バランスにより、心室中隔が左右に不規則に動くことになります。

  • 吸気時の影響:吸気時には静脈還流が増加し、右心室への血流が増えるため、右心室の拡張が促進されます。しかし、収縮性心膜炎では心膜が硬化しているため、右心室の拡張が制限され、心室中隔が左心室側に押し出されます。

  • 呼気時の影響:呼気時には静脈還流が減少し、右心室への血流が減少します。このため、心室中隔が右心室側に戻されます。

3. 心エコー図での観察

心エコー図は、septal bounceを観察するための最適な方法です。以下の所見が特徴的です:

  • Mモードエコー図:心室中隔が吸気時および呼気時に振動するような動きを示します。この動きが「バウンス」と呼ばれます。

  • 2Dエコー図:心室中隔が左右に動く様子をリアルタイムで観察できます。この異常な動きは、通常の心臓サイクルとは異なる不規則なパターンを示します。

血行動態の影響

Septal bounceは、収縮性心膜炎における心室間の異常な圧力バランスを反映しています。これにより、以下のような血行動態の変化が生じます:

  • 心拍出量の変動:吸気時および呼気時の心拍出量が大きく変動することがあります。これにより、全身の血行動態が不安定になります。

  • 静脈還流の影響:吸気時に右心室への血流が増加し、左心室への血流が減少するため、全身の静脈還流が影響を受けます。

  • 呼吸性変動の増強:心室間の圧力バランスが異常なため、呼吸に伴う血流変動が増強されます。

  • 診断の確定:septal bounceの存在は収縮性心膜炎の強力な指標であり、他の臨床所見と合わせて診断を確定するのに役立ちます。

  • 治療方針の決定:心膜の硬化と収縮性の程度を評価することで、手術の適応や他の治療法の選択を検討するのに役立ちます。


収縮性心膜炎におけるseptal bounceは、心室間の圧力バランスの異常を反映する重要な診断所見です。心エコー図検査を用いることで、この異常な動きを詳細に評価し、収縮性心膜炎の診断および治療に役立てることができます。

Oh, J. K., & Tajik, A. J. (2016). The Echo Manual (4th ed.). Lippincott Williams & Wilkins.

Klein, A. L., & Garcia, M. J. (2017). Diastology: Clinical Approach to Diastolic Heart Failure (2nd ed.). Elsevier.

Schaff, H. V., & Orszulak, T. A. (2019). "Pericardial Diseases" in Mayo Clinic Cardiology. Oxford University Press.


7. 収縮性心膜炎における心室中隔の拡張期dip

収縮性心膜炎では、心膜の硬化と肥厚によって心臓の拡張が制限され、心室間の圧力バランスに異常が生じます。この状態を評価する際に重要な所見の一つが「心室中隔の拡張期dip(dip-and-plateau現象)」です。

1. 心室中隔の拡張期dipとは

心室中隔の拡張期dipとは、拡張期の早い段階で心室中隔が急激に内側に落ち込む(dip)現象のことを指します。続いて、拡張期の後半に心室中隔が平坦化する(plateau)状態が続きます。この現象は、心膜の硬化によって急速な心室拡張が妨げられた結果生じます。

2. 心エコー図での観察

心エコー図は、心室中隔の拡張期dipを評価するための重要なツールです。以下の所見が特徴的です:

  • Mモードエコー図:拡張期の早い段階で心室中隔が急激に内側に移動する様子が観察されます。この動きは、拡張期の後半では平坦化します。

  • 2Dエコー図:リアルタイムで心室中隔の異常な動きを観察できます。拡張期の早い段階での急激な落ち込みとその後の平坦化が確認されます。

3. 血行動態の影響

心室中隔の拡張期dipは、心室の早期充満が制限され、拡張期の血流動態が異常になることを示しています。この現象は、以下のような血行動態の影響をもたらします:

  • 心室充満圧の異常:心室中隔の急激な動きにより、心室の早期充満が制限されます。

  • 心拍出量の変動:心室の拡張が制限されるため、心拍出量が安定しないことがあります。

  • 静脈圧の上昇:心室充満の制限により、静脈還流が妨げられ、静脈圧が上昇します。


心室中隔の拡張期dipは、収縮性心膜炎の特徴的な所見であり、心エコー図検査を通じて観察されます。この現象は、心膜の硬化によって心室の早期充満が制限されることを反映しており、収縮性心膜炎の診断および治療の評価において重要な役割を果たします。


8. 収縮性心膜炎における左室後壁の拡張中期〜後期の平坦化

収縮性心膜炎では、心膜の硬化と肥厚により心臓の拡張が制限されます。この制限は特に拡張中期から後期にかけて顕著であり、左室後壁の動きに特徴的な変化をもたらします。

左室後壁の拡張中期〜後期の平坦化とは

左室後壁の拡張中期から後期にかけての平坦化は、拡張期の初期に急速に動いた後、中期から後期にかけてその動きが平坦になる現象を指します。これは、心膜の硬化による物理的な制限が原因です。

心エコー図での観察

心エコー図は、左室後壁の動きを評価するための重要なツールです。以下の所見が観察されます:

  • Mモードエコー図:拡張期の初期に左室後壁が急速に後方に動きますが、その後、中期から後期にかけて動きが平坦化します。

  • 2Dエコー図:リアルタイムで左室後壁の異常な動きを観察できます。拡張期の初期に急速な動きが見られ、中期から後期にかけて動きが制限されて平坦化します。

血行動態の影響

左室後壁の拡張中期〜後期の平坦化は、心臓の拡張障害を示し、以下のような血行動態の影響をもたらします:

  • 心室充満圧の異常:拡張中期から後期にかけての充満が制限されるため、心室充満圧が異常になります。

  • 心拍出量の低下:心臓の完全な拡張が妨げられるため、心拍出量が低下します。

  • 静脈圧の上昇:左室の充満が制限されることで、左房および肺静脈圧が上昇し、全身静脈圧の上昇も引き起こされます。


左室後壁の拡張中期〜後期の平坦化は、収縮性心膜炎の特徴的な所見であり、心エコー図検査を通じて評価されます。この現象は、心膜の硬化によって心臓の拡張が制限されることを反映しており、収縮性心膜炎の診断および病態評価において重要な役割を果たします。

9. 左室および右室流入血流速度波形の呼吸性変動、肝静脈血流波形の呼吸性変動について

収縮性心膜炎(Constrictive Pericarditis)は、心膜が硬化して肥厚することにより心臓の拡張が制限される病態です。このため、心臓の機能や血流に特徴的な変化が現れます。以下では、初心者にもわかりやすいように、左室および右室流入血流速度波形の呼吸性変動、ならびに肝静脈血流波形の呼吸性変動について詳しく説明します。

1. 左室および右室流入血流速度波形の呼吸性変動

基本概念

心臓の左室(LV)と右室(RV)には、それぞれ血液が流入します。この流入血流の速度波形は、呼吸に伴って変動します。正常な心臓では、吸気時と呼気時において血流速度の変化が見られますが、収縮性心膜炎ではこの変動が異常になります。

呼吸性変動のメカニズム

  • 吸気時:胸腔内圧が低下し、静脈還流が増加します。これにより、右心室への血流が増加し、左心室への血流はやや減少します。

  • 呼気時:胸腔内圧が上昇し、静脈還流が減少します。これにより、左心室への血流が増加し、右心室への血流はやや減少します。

収縮性心膜炎における変動

収縮性心膜炎では、心膜が硬化しているため、心室の拡張が制限され、以下のような異常な呼吸性変動が見られます:

  • 左室流入血流速度:吸気時に著しく減少し、呼気時に増加します。

  • 右室流入血流速度:吸気時に著しく増加し、呼気時に減少します。

これらの変動は、心エコー図のドップラー検査で確認することができます。

2. 肝静脈血流波形の呼吸性変動

基本概念

肝静脈は、肝臓から心臓へ血液を運ぶ静脈です。正常な状態では、肝静脈の血流波形も呼吸によって変動します。

呼吸性変動のメカニズム

  • 吸気時:静脈還流が増加し、肝静脈からの血流も増加します。

  • 呼気時:静脈還流が減少し、肝静脈からの血流も減少します。

収縮性心膜炎における変動

収縮性心膜炎では、肝静脈の血流波形にも異常な呼吸性変動が見られます:

  • 吸気時:肝静脈の血流が増加し、逆流(逆流性波形)が強調されます。

  • 呼気時:肝静脈の血流が減少し、逆流は弱まります。

これらの変動は、心エコー図やドップラー超音波検査で観察されます。

実際の検査と観察

心エコー図による評価

  • 左室および右室流入血流速度波形:ドップラーエコーを使用して、左室および右室の流入血流速度を測定し、吸気時と呼気時の変動を観察します。

  • 肝静脈血流波形:同様にドップラーエコーを使用して、肝静脈の血流波形を測定し、呼吸に伴う変動を観察します。

所見の解釈

  • 異常な呼吸性変動:収縮性心膜炎では、吸気時と呼気時で血流速度の変動が通常よりも大きくなることが特徴です。この変動は、硬化した心膜が心臓の正常な拡張を制限するために生じます。

まとめ

左室および右室流入血流速度波形の呼吸性変動、ならびに肝静脈血流波形の呼吸性変動は、収縮性心膜炎の診断において重要な手がかりとなります。心エコー図とドップラー検査を通じて、これらの変動を評価することで、収縮性心膜炎の診断を確定し、適切な治療方針を立てることが可能です。



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