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竜の鱗【句帖2024-14】

悲哀のままそこを動くな夏に入る 夏帽子並ぶ東屋静かなり 億万の羽音水音風薫る 風青し見知らぬ街の陰歩く 歌詞を追う画面の隅に夏の月 柏餅三つ渡され鄙び旅 遠いよなぁそっと粽を開く時 山側へ傾く一色朱の緋鯉 新緑のどれが正しい帰り道 伸び上がる額の上に緑さす

    • 竜の鱗【句帖2024-13】

      右の手に紫雲英かかげて訴える 高く飛ぶ燕分離する燕 つばくらめ屋上は闇噴き上げり 水の深さパーレンパーレン柳絮舞う 枝垂柳うたたねの中に音楽 やけに近い月を道連れ藤の花 「おかえり」と藤棚の下へ入り行く 春惜しむ野の雨萌黄水浅葱 行く春を四角い部屋の隅々に 島豆腐の沈む器や春暑し

      • 竜の鱗【句帖2024-12】

        見せばやな光る悦び春落葉 春落葉覆う地球の踏み心地 仄暗く無音のニュース黄砂降る 連蝶や寺の大門開くとき 裂け目より薄紙剥がす蝶の昼 デイパックに凭れ人待つ花薺 花なづな片時眠気這い上る 螺旋ごと花束にして豆の花 陽炎のロータリーここで咲いてる 陽炎へ高速バスは低く吠え

        • 竜の鱗【句帖2024-11】

          一足毎笛の音する春深し 春闌けてシュークリームが選ばれる いや青し細目に歩む花の闇 春日傘ひかり無数に垂れ下がり 奥庭の躑躅の中に置かれてる 白躑躅うらうら気まま波飛沫 クローバー両手に掴むみんな嘘 ここに人がいますよ白詰草あげる 窓枠とくすんだ硝子揚雲雀 雲雀野へ役も台詞もない芝居

        竜の鱗【句帖2024-14】

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        • 句帖7:竜の鱗
          14本
        • collection
          12本
        • 詩について
          7本
        • 俳諧詩
          11本
        • ツキイチエシレ
          11本
        • ツキイチエシレ☆夢の話
          4本

        記事

          竜の鱗【句帖2024-10】

          四月 夜明け残酷極まれり 枝垂桜真夜に眼ざめた時の夢 山桜一列縦隊にて進む 不定形の猫どこから花吹雪 小庭の老樹羽ばたく桜かな 滅びの群みな早口の花見客 危機という言葉を愛す花疲れ 花篝屍を焼く薪の山 青御幣閉じては開く花祭 四月 伸びる緑の導火線

          竜の鱗【句帖2024-10】

          竜の鱗【句帖2024-09】

          初蝶来湯川博士を探す旅 繃帯の匂いに触る紋黄蝶 初蝶や裏返ってしまいそう 風光る緑に戯れの上に 風光る青い如雨露の中の水 弧を描く石橋映し春の川 龍神の白い腹側水草生ふ 水草生ふ洗われそして洗いたい 蜜のあはれ醸す蛙の目借時 目借時地下三階には何も無い

          竜の鱗【句帖2024-09】

          竜の鱗【句帖2024-08】

          花冷えの楽器店開かない抽出し 背のびして昼灯ともす春愁 宙吊りのまゝ数百のマグノリア 春休み軽く毛先を遊ばせて 春の草無人館のまだら錆 セロファン包装春草は踏み躙る 地下茎に軟骨点々と豆の花 春の夢暗橙紫色の舌先に 眠らせておいて一束の春龍胆 朝寝して脱殻沈む水の中

          竜の鱗【句帖2024-08】

          竜の鱗【句帖2024-07】

          透きとおり潜み隠れて彼岸入り 彼岸会の雲の旗振る厳かに 倦怠と眠気ぶらさげ彼岸かな 麗かや私、もう一人、もう一人 手の中の見えない言伝春うらら 海生まれ小さな飛沫春の昼 春昼の砂山を掘る指の先 春休み仰向け疾走する世界 本当のことを言おうか 蘖ゆる ひこばえや後ろの正面だあれ?

          竜の鱗【句帖2024-07】

          竜の鱗【句帖2024-06】

          名残雪一筆箋を切りはなす 淡雪や膝小僧にはラブ・レター 極悪人の口の中へと牡丹雪 菜の花の乱反射 眠ってるんだよ 花菜摘む悪い大人になるなんて な、って菜の花人の場所 紫木蓮歩道橋から夜の街 珈琲も血も黒く塗る紫木蓮 黄竜は堕ちて弾かれ春夕焼 春朧元の世界の青い薔薇

          竜の鱗【句帖2024-06】

          竜の鱗【句帖2024-05】

          囀や橋の名たよりに散歩して 小鳥の巣ながあいながい滑り台 百千鳥暗がり靴底に溜まる 鳥の恋揺らぐ「ぼく」とか「ぼくら」とか 湯に入れた卵浮き立つ囀れり 写真皆同じ顔付き夏蜜柑 夏柑や体育座りして二人 甘夏に溺れてしまう野垂れ死ぬ 剪定の口笛渦を巻きながら 剪定鋏鳴るどちらかが主役

          竜の鱗【句帖2024-05】

          竜の鱗【句帖2024-04】

          何処からか何か来る来る霞立つ 春霞首をのばして夢を食う 急急如律令 人間じゃいけない朝霞 木の芽風空一面の真っ昼間 窓硝子に爪立て苦し木の芽時 冴返るモノクロ写真の遊園地 後ろの私全てかたまり冴返る 無限より無限に亙る藪椿 花椿雨を聞こうか夜が更ける 鍵盤の上あざ笑う紅椿

          竜の鱗【句帖2024-04】

          竜の鱗【句帖2024-03】

          春一番人型兵器は夢をみる 薄闇の狐穴より春の風 蛇口から水、ひだる神、春の雷 風光るきゅるきゅる駄目な詩を殺す 血は黒く身内に滲む涅槃西風 剃刀は頬から喉へ春の宵 花菜風刃先を舐めて悪い顔 春雨や官女三人台詞あて 憾みつらみ目を開け聴けば春時雨 菜種梅雨永遠にある古本屋

          竜の鱗【句帖2024-03】

          竜の鱗【句帖2024-02】

          鈴の緒を宙に振りあげ春浅し 東風が東風に東風を 朝のあやうさ 薄氷やうつつの下にある暗渠 土手青む王子の腕は羽のまま 私を一片とする草萌ゆる 梅林の舞手は決して上向かず 指先のそのまた先でめくる梅 白梅や夜闇に増して翁面 きちきちとひちぎり草餅ひなの菓子 女雛ある凝視を外す瞬間に

          竜の鱗【句帖2024-02】

          竜の鱗【句帖2024-01】

          追儺式ほんとのこころみぬように 夜に鳴る広間の時計鬼やらひ 福は内呼び出されしは何番目 形あるものは壊され鬼の豆 恵方巻き喋るし切るし明日無いし 春寒し折れた取手が手に残る 落ちながら雫抱き合う余寒かな 自分より先ゆく野良や梅ひらく 立春大吉飛行機雲は「ハ」を描く ばかなりにばかに寄り添う春立てり

          竜の鱗【句帖2024-01】

          Automatisme Ⅲ【句帖2023/春】

          立春大吉ちらせばにじむ海の色 緑青の鏡は楕円春兆す まだら紐誘い進む春の泥 口のない兎の絵皿冴返る 百千鳥問うあと何周あるか問う 剥がしても同じく私目借時 みっしりと亡者は立てり小米花 も一人の我が笑って花の雨 春深く落ちればいいが水の夢 蝶生まる迦陵頻伽の舞支度 蒐集す欺瞞冷血花衣 山笑う疾く人類の列出でよ 鐘朧天が高うて上られぬ

          Automatisme Ⅲ【句帖2023/春】

          Automatisme Ⅱ【句帖2022/秋・冬・新年】

          秋 たまさかに墓標となりぬ火焔茸 次の間に控え候黒葡萄 閑かさや館取り巻く曼珠沙華 触れるとき触れられており花芒 雁来紅一つ残らず判を押せ 秋天に薄く水脈引く櫂の舟 木犀の果ては人外時間外 撫子を小さく束ねて尾根の道 殺したいとまでは思えず穴窓 秋蝶や夢なら口にする言葉 中の子の行ったり来たり木守柿 冬 石蕗咲く畢竟夜は生きやすい 日々過ごす日々を過つ実南天 膝上の本は開かれ寒の薔薇 聖夜 過去は無言で突き抜ける 細雪紺地更紗の帯締めて 雉

          Automatisme Ⅱ【句帖2022/秋・冬・新年】