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「私をくいとめて」……社会の矛盾を食い止めて、なんて思いながら振り返る女子サッカーの2020年

第33回東京国際映画祭 TOKYOプレミア2020部門 観客賞/東京都知事賞を受賞した大九明子監督の最新作『私をくいとめて』は、もう一度見たくなる映画だ。松岡茉優さんが天才っぷりを発揮した前作『勝手にふるえてろ』と表裏の関係にあるような映画と説明すれば、映画ファンには想像がつくかもしれない。主演はのんさんで、NHKの朝ドラ『あまちゃん』以来、7年ぶりに橋本愛さんと共演した。

『勝手にふるえてろ』で「『経理している女性ってしっかりしているから良い奥さんになりそう』という合コンでの台詞」を登場させた大九明子監督は『私をくいとめて』でも「女性の境遇」を盛り込んできた。

●女性の芸人が酔って舞台に上がってきた男性の集団に抱きつかれるシーン
●優秀な上司のために勤務先でお茶汲みをするシーン

●打合せに出かけるときに靴をハイヒールに履き替えることは忘れないが傘は忘れる上司のシーン

男女雇用機会均等法が出来たのは1985年。女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)が出来たのは2015年。2012年に新設された女性活躍担当大臣は、現在は橋本聖子議員が務めている。そういえば、橋本聖子議員は、ソチ五輪選手村での打ち上げで高橋大輔選手にキスを迫るセクシャルハラスメントがありましたね。

モノクロームな労働問題として報じられる「女性活躍」

政府は「女性活躍」を人権の問題としてよりも労働の問題としてと捉えて厚生労働省から発信することが多いため、どうしても「もっと女性が働くために」という文脈が目立ってしまう。自然とメッセージは一方的になり現実社会に生きる多くの人々の気持ちとのギャップは縮まる気配がない。矛盾が広がる。そんなモヤモヤとストレスを抱える毎日に、大九明子監督の映画は、さりげなく小さな光を当てているように感じる。

自ら活躍したいと考える選手・関係者、その想いは天然色

#女子サカマガ 記事閲覧数TOP10を抽出してみた。10点の記事のうち 選手のインタビュー記事が2点と少数なのが特徴。ほぼサッカーの話が出てこないfemtech企業のインタビュー記事が2位に入っており、社会と女子サッカーの関係が変化した2020年を象徴している。政府からの発信はモノクロームで「女性活躍」を上から強要しているように感じるが、女子サッカーは、自ら活躍したいと考える選手・関係者によって動かされている。その結果、女子サッカーはファンのものから、女性自らが社会を動かすトリガーに変わりつつある。その想いは天然色だ。

#女子サカマガ 記事閲覧数TOP10
10位 WEリーグ 岡島喜久子チェアインタビュー前篇「女子がどこまでできるか」
9位 NAC神戸レオネッサ なぜ2位まで急上昇したのか? 2020年の戦術変遷から見えたこと
8位 WEリーグ 岡島喜久子チェアインタビュー後篇 女子サッカーのプロ化は世界の流れ
7位 新スタジアム、廃校利用の練習場……WEリーグ入りへ伊賀FCくノ一三重の再挑戦
6位 「男子チームでやりたい」と自分から言って入れてもらいました。 元気あふれるプレーの秘密 児野楓香選手(新潟L)の #女子サカ旅
5位 三谷沙也加選手(AC長野パルセイロ・レディース)の 笑顔が美しいわけ #女子サカ旅
4位 なでしこジャパン山根恵里奈選手引退会見 「甘い」と言われるかもしれないですけど「自分自身を本当に大事にしてほしい」と思っています。
3位 「クリスティアーノ・ロナウドを目指しても良いけれど セルヒオ・ラモスを目指すな」 WEリーグに必要なメンタルアドバイスとは?
2位 femtech企業はWEリーグに何を期待するのか?
1位 「WEリーグ以降」 アンジュヴィオレ広島存続問題に揺れる広島女子サッカーの未来は?これは全国に通じるモデルケースだ

1990年台に、Jリーグが地方の時代を変えていったように、2021年はWEリーグが女性の時代を変えるかもしれない。



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