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手動ポイント切り替えをイメージする

私が小さいときの鉄道は、今と違って何でも人間が行っていた。
切符を売る駅員さん。
改札口で切符を切る駅員さん。
案内板が見えにくい人でも、お年寄りで地理がよくわからないひとでも、駅員さんに案内を請えば、「どこまで行くのはいくらです」と答えて、乗り換えまで教えてくれるから安心だった。

そして、なんといっても、駅でのハイライトは、手動での線路のポイント切り替えだった。
線路のわきに、ポイントの切り替えをする機械があって、駅員さんが線路に降りてきて、持ち手をぐっと動かすと、線路がガッチャンと音を出して、ポイントが切り替わるのだ。
今でも、古びた郊外の駅などには、切り替えの機械が残っていたりする。
サビついてたたずんでいる姿は、ものすごく素敵だ。
なぜって、私は心の中で、いつだって、ポイント切り替え器のお世話になっているからだ。

生きていると、いろいろなことが起こる。
予測できないことも、思わぬ攻撃を受けることも、感情が揺さぶられて、ぐらぐらになってしまうことも、
激しい怒りがこみあげてきて、心が燃え上がることも。

そういう時は、目を閉じて、線路のわきのポイント切り替え器をイメージする。
そして私は線路に降りて、かつて駅員さんが行っていたように、おもむろに、ゆっくりと、もったいぶって、誇り高く手を伸ばし、持ち手をつかんで、ガッシャンと線路のポイントを切り替える。

そう、今まで走ってきた線路でなくて、切り替えた線路を走りだす。
自分にいい聞かせたら、イメージの中の電車の運転席に乗り込む。
そして、指さし確認して出発しよう。

あとはもう、電車でGO。
私の行き先は私が決める。
私の行き先は、私が進める。
雨も降る。
雷もなる。
風も吹く。

後ろに残る、昔の世界を吹っ切って、私は進む。
ネガティブな言葉は振り切って。
誰かに守ってもらわなくてもいい。
誰かに誘導してもらわなくていい。

注意深く丁寧に自分の道を進んでいく。

懐かしのポイント切り替え


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