非乳化のスープ

ラーメン二郎を食べてきた。

前回はいつだか覚えてもいないが身体はいつまで経っても味を覚えていて不意に思い出して食べたくなる。

場所は近場の上野毛。
自転車で行ける愛用の店だ。

二郎ラーメンは様々な場所に店舗を置いていることからチェーン店と思われがちだが各店舗が独立していて味も値段も違う。
上野毛は他店と比べて麺が細めで豚も脂身が少ない引き締まった肉質で非乳化のスープが魅力だ。

その味を求めて世田谷の下町にも関わらず平日でも行列になる。
ただ、上野毛の魅力はそこだけではない。みんなは二郎ラーメンの店主と聞いてどのような人を頭に思い浮かべるだろうか。

複雑なルールが存在すると思われているのもあり
頑固で厳しい性格の人と思われるケースが多い。
まぁそれも間違いではない。
店舗によっては難しい性格の人もいる。

しかし上野毛の店主は優しいのだ。
見た目はふくよかで服装も薄手の肌着に真っ白な作業ズボンでtheラーメン屋の店主という風貌で初見はビビるが彼の発する声や丁寧な言葉遣いからは緊張を中和させてくれるギャップを感じる。

2人組の客には隣同士の座席を提供出来る様に配慮してくれたり大きい荷物を置けず困っている人には場所を開けてくれたりと忙しいにも関わらず気配りができるとても素敵な人柄だ。
 
多分この人は仕事だから優しいのではなく日頃からそうなんだろう、と思った。

ラーメンが届く。
コールはニンニク少なめヤサイアブラだ。
いつも通りの表情をしたラーメンがこちらを覗く。
食べ物の味というのは作り手の感情によって変化するということを耳にしたことがある。
落ち着いている時は穏やかな味がし、荒れている時は不安定な味、不味さを感じる。
前と変わらないこの光景、この味。
安定した美味しさというのはこの店主のもとであるからなのだろう、そう感じた。

非乳化のスープは素材の味が直接感じられてパンチがあるが食べると後悔してしまう、けれど必ずまた食べたくなるとネットで講評されていた。

上野毛店は年季の入った外観で店内にはちょい強面のおじさん店主がいて入るのに躊躇ってしまう、けれどとても優しくて毎度変わらない美味しさを求めて必ず来てしまう。

そんな共通点らしきものを考えてたらギラギラ光る油の海の中には元気を無くしたキャベツと焼肉店で出てきたら食べるのを控えてしまうほどの脂しか浮かんでいなかった。


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