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毛刈りと貧毛


上皮細胞成長因子(EGF)の受容体に異常があるマウスは毛が縮れてしまいます。増殖因子ですが、ヒツジの毛においては脱毛に関係するようです。

ヒツジの毛刈り

 羊毛を採取するときに通常バリカンを使いますが、ヒツジにEGFを注射すると成長期が止まり、自然と毛が抜けます。注入後1か月程度で、セーターを脱ぐように毛が剥がれ落ちます。抜けたあと、毛周期は正常に行われるようで副作用もありません。

 しかし、ヒトではEGF受容体に異常があると頭皮が多汗症になったり、眉毛が太く長くなったりします。また、EGF受容体の活性に関わるリゾホスファチジン酸というシグナル物質があります。このリゾホスファチジン酸を作り出す酵素の遺伝子変異が先天性貧毛症の主な原因とされています。
 この疾患では生まれた時は正常に毛髪が生えますが、徐々に脱毛が進み、細い毛がまばらに生えるようになります。これは最初の毛周期は通常通り行われるが、いったん毛周期が終わると毛乳頭と毛穴が隔離されて生えてこなくなるようです。

 猫ではバーマンやシャムなどの種で先天性貧毛症が報告されており、出生時や1か月齢より脱毛が表れるようです。この症状は多くが雄であることからネコの性別と関連する遺伝子の変異が原因であることが予想されています。

参考文献

長江勘次郎, et al. "新生子豚の無毛症の発生例について." 日本獣医師会雑誌 33.7 (1980): 333-338.

https://nna-au.com/feature/mays-sheeps/79273/

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