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〇続・「アーバン問題」~言葉の言い換え次々と

〇続・「アーバン問題」~言葉の言い換え次々と

(本作・本文は約2500字。「黙読」ゆっくり1分500字、「速読」1分1000字換算すると、5分から3分。いわゆる「音読」(アナウンサー1分300字)だと8分くらいの至福のひと時です。ただしリンク記事を読んだり、音源などを聴きますと、もう少しさらに長いお時間楽しめます。お楽しみください)

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〇続・「アーバン問題」~言葉の言い換え次々と

【Update: Using The Word "Urban"】


2020年6月16日付けnoteでご紹介した「アーバン」という単語の使用を禁止~その理由と今後、の続編をお届けする。

「アーバン」という単語の使用を禁止~その理由と今後
https://note.com/ebs/n/nc77fa2ccb05d

これはアリアナ・グランデ、ドレイクなどを抱えるリパブリック・レコーズが2020年6月5日、「今後、自社内で役職名・部署名、音楽を表す言葉として『アーバン』という単語を使用禁止にする」と発表したことについての解説記事だ。

本記事では、この「アーバン」という言葉・単語が表す二つの意味、ブラック・ミュージックの名前の変遷の歴史、単語自体の意味の変遷、ジャンルはひとつになるのか、言い換え語は、といった過去・現在・未来を俯瞰した。

しかし、その後も、アメリカ音楽業界ではさまざまな意見が噴出し、なかなか収拾がつかない。

また、「アーバン」ではないが、レディー・アンテベラムが「アンテベラム」という単語が南部の奴隷制を想起させるということで、グループ名をレディーAと変更したり、同じような理由でディキシー・チックスがディキシーをやめ単にチックスに改名したり、さらに、ジョーイ・ニグロがその芸名に「ニグロ」とあるのが適切ではないと、本名のデイヴ・リーに変更した。まさに「言葉表記の激動」が起こっている。一方からすれば、ある種「言葉狩り」のような様相を呈しているともいえる。

「アーバン問題」が出たとき、何人かに質問をしていたが、そのうちの一人でアメリカ在住のジャーナリストで日本の文化にも詳しいデクスター・トーマスさんが長文の返事を送ってくれたので、それを紹介しつつ、もう少しこの「アーバン問題」を見てみようと思う。

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「アーバン問題」は、2018年の時点ですでに業界のトピックになっていた。

Why Do We Still Call R&B/Hip-Hop 'Urban' -- And Is It Time for a Change?
by Keith Murphy September 28, 2018, 


https://www.billboard.com/articles/columns/hip-hop/8477079/urban-hip-hop-term-change

さて、トーマスさんによると、「実はかなり前から、「アーバン」に対して疑問を持つ黒人はすくなからずいましたね。「黒人」が作っている音楽なのに「黒人」を言いたがらない姿勢が怪しい、と。黒人の文化なのにそんな歪曲な言い方じゃ失礼だろう、と」という。

ほとんど「アーバン」という単語を使ったことがないというトーマスさんが言う。「僕の知っている人でも、アーバンと言う人はほぼいません。「アーバン」はむしろ業界用語みたいで、コマーシャルラジオで流れるような、洗練された、ダサいR&Bだ、というのが僕の印象です。(笑)」

ブログ アーバン デクスター 通りの名前

(デジことデクスター・トーマスさん)

これは、僕には新鮮な意見だった。

となると、ストレートに「ブラック・ミュージック」と呼んだほうがいいのではないか、という意見もある。

あるいは、「ブラック・ミュージック」という名称があるなら、「ホワイト・ミュージック」という名前を作り、バランスを取る、という選択肢もあるのではないかと思うようにもなった。実現性はほとんどないと思うが。(笑)

では、黒人ピアニストがモーツァルトを弾いたら、それも「ブラック・ミュージック」になるのか、白人のエミネムのラップは「ブラック・ミュージック」なのか、という命題がでてくる。

とても揺れるわけだ。

つまり、「ブラック・ミュージック」だけ、人種名がそのジャンル名を指すことになっていて、これが様々な問題を引き起こすようになっている。

そしてデクスターさんはこうまとめている。

「数年前の話ですが、僕は初めて日本のタワーレコードに行って、『ブラック・ミュージック』なるコーナーがあるということに驚きました。そんな率直に『ブラック』って呼んでもいいのか、と思ったのがまだ記憶に新しいです。DMXなんかと一緒にレニークラビッツを並べるとかってどういうことだろうと。僕の中では完全に別のジャンル(ヒップホップとロック)でしたので。しばらくすると、イギリスでも『ブラック・ミュージック』という名称が普通であることにも少し違和感を覚えました。」

「アーバンはもとより、ブラック・ミュージックという曖昧な総合名称より、僕はこれからも、たんに『ヒップホップ』とか『ジャズ』とか『ゴスペル』とか言いますかね。僕の中では、『ブラック・ミュージック』は音楽の伝統・系統であり、美術学について議論する際には「範疇」として機能しますが、『ジャンル』ではありません。」

それにしても、2020年5月25日、ミネアポリスで白人警官に殺害されたジョージ・フロイドの事件をきっかけに巻き起こり始めた「第二次ブラック・ライヴズ・マター」の動き。実に様々な分野にその影響を与えつつある。誰もが予想だにしなかった影響の広がりはこんごもどんどん増えそうだ。


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