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ローリング・ストーンズ、18年ぶりのオリジナル・アルバム『ハックニー・ダイアモンズ』は現役最後のアルバムなのか?

ローリング・ストーンズ、18年ぶりのオリジナル・アルバム『ハックニー・ダイアモンズ』は現役最後のアルバムなのか?
 
【Rolling Stones’ “Hackney Diamonds” Will Be Their Final Album?】
 
匙加減(さじかげん)。
 
話題騒然というのだろうか。ローリング・ストーンズのオリジナル・アルバムとしては『ア・ビッガ―・バン』(2005年)以来18年ぶりのオリジナルによる新作『ハックニー・ダイアモンド』が2023年10月20日世界同時発売された。日本時間でも20日午前0時からデジタルで聴けるようになり、さっそく、ダウンロードし何度も聴いた。『ア・ビガー・バン』の後、2016年に『ブルー&ロンサム』というブルーズのカヴァー・アルバムをだしているが、それから数えても7年ぶりだ。
 
昔ながらのストーンズがそのまま蘇ったという第一印象を持った。ストーンズは変わらずとも、周囲の音楽状況がものすごく変わってきて、その中で、昔と同じサウンドを十数年ぶりに聞くと、それは一周してまったく新しいもののように新鮮に聴こえてくる、そんな感じを持った。
 
だから彼らのような大きな存在のアーティストは、10年か15年くらいに一度、同じようなサウンドのものを、ファンが求めているようなものを、きっちり出してくれれば、必ず話題になるということを見事に証明していると思う。
 
もちろん、プロデューサーに若手のアンドリュー・ワットが抜擢されて、それなりのちょっとだけ新しい部分もあるのだろうが、本質的にはこの4-50年のストーンズの骨格は変わらない。
 
おいしいコシヒカリ、それも最上級のコシヒカリにちょっと最近のおいしいふりかけ(ワットのプロデュースぶり)がかかっているような極上のお米というところだろうか。いや、海外の人は米を主食にしないだろうから、最上級のフィレミニヨンか。それをステーキソースで食べるか、わさび醤油で食べるか、そのソースの部分がワットというシェフの文字通り匙加減。
 
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サザン・ソウル・バラード。
 
さて担当しているFM番組『AOR/Soul To Soul』(毎週木曜夜8時からJFN系列、インターFMで生放送、DJユキ・ラインハート、吉岡正晴)でも、第一弾シングル「アングリー」を9月7日、第二弾「スイート・サウンド・オブ・ヘヴン」も10月5日にかけた。前者はいわゆる「四つ打ち」のディスコっぽいダンサブルな曲で、後者はアメリカ南部メンフィスのスタックス・レコーズのソウル・レコーズを思わせる重厚なソウル・バラード。特にレディー・ガガとのデュエットもひじょうに印象的だ。
 
僕はこれを聴いたときに、この曲がいつ書かれたのか現時点ではわからないのだが、ひょっとしてデュエット・パートナーとしてティナ・ターナーを想定して書いたのではないか、と思った。残念ながら、ティナは今年(2023年)5月24日に亡くなってしまい、それはかなわなくなった。ちょっとスタックスのオーティス・レディングが歌いそうな曲調だ。日本でいえばゴスペラーズの「ソウル・ソング・ジューク」がオーティス・ラインの一曲だが、そういう路線だ。
 
The Rolling Stones | Sweet Sounds Of Heaven | Feat. Lady Gaga & Stevie Wonder | Visualiser

 
Otis Redding These Arms Of Mine

 
Otis Redding I've Been Loving You Too Long

 
Otis Redding Try A Little Tenderness

 
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ファイナル。
 
ところで、アルバムの最後(ボーナス・トラックは除く)を飾るのは「ローリング・ストーン・ブルーズ」というタイトル。これはブルーズ・マン、マディー・ウォーターズの1950年の作品「ローリング・ストーン」という曲のカヴァーだが、ご存じの通り、ここから彼らはグループ名を取った。
 
Rolling Stones – Rolling Stone Blues

 
Muddy Waters – Rolling Stone

 
この曲をアルバムの最後に持ってきたことを見て、僕はローリング・ストーンズがこのアルバムを現役最後のアルバムに見立てて発表したのではないかと思った。
 
マディー・ウォーターズで始まった歴史を73年を経て、これで閉じるというわけだ。前作のブルーズ・カヴァー作『ブルー&ロンサム』では12曲すべてがブルーズ曲のカヴァーだったが、よく考えてみると、ここにはマディー・ウォーターズの「ローリング・ストーン」がはいっていなかった。ひょっとすると、このときのセッションで録音していたアウトテイクかもしれないが、いずれにせよ、前作には収録されなかった。まさか、次のアルバムの最後にいれるためにキープしたということではないと思うが、いま、こうしてみると、そういうこともあり得たかなとも邪推してしまう。
 
アルバムの最初の曲と、最後の曲は、アーティストはもっとも考え抜いて決めるものだ。
 
たとえば、次のアルバムが10年後だったら、ミック・ジャガーは90歳。キースも同じ1943年12月生まれで90歳になる。ロニー・ウッドは1947年なので、86歳。これがトニー・ベネットのようなシンガーだったら新録もありえなくはないが、さすがにこの形態のロックンロール・バンドとして10年後には新録の新譜は出せないのではないだろうか。ということは、今回の作品は、それを打ち出しこそしていないが、「現役最後のアルバム」になるのかもしれないと思っているのではないか。そこで、最後のトラックとして、自分たちのスタート地点となった作品をいれたというわけだ。
 
もちろん、今作用、あるいは、その他の録音セッションが無数行われていて、未発表のアウトテイクが何曲もあり、それらが何らかの形で「未発表・新作」としてこれからも出る可能性は十分ある。今作に向けて23曲が録音されているというので、12曲(日本盤ボーナスを加えると13曲)がリリースされたので、11曲(10曲)が残っていることになる。
 
「最後のアルバム」という打ち出しをしなかったのは、デイヴィッド・ボウイの2016年1月8日(ボウイの誕生日)に発売された『ブラック・スター』を思わせる。これが出たとき、だれも、それが彼の最後のアルバムとなるなど夢にも思わなかった。しかし、デイヴィッド・ボウイ本人はこれを最後のアルバムにするつもり、あるいは、最後のアルバムになることを知っていた。そして、このアルバム発売の2日後1月10日に突然、この世を去ってしまったのだ。
 
ひょっとして、10年と言わず、1-2年でこれらのアウトテイクを元に、次のアルバムが出てくるのか、それとも、これが事実上の最後のアルバムになるのか。しばらくは様子見をして、歴史の中でこのアルバムがどういう位置に座るかを眺めたい。
 
ちなみに本作アルバムは来年のグラミーには間に合わず、再来年の候補になる。ただし最初のシングルは来年の候補の可能性がある。
 
■『ハックニー・ダイアモンズ』、2023年11月2日(木)オンエアの『AOR/Soul To Soul ♯099
』(JFN各局、インターFM)で特集予定。
 
The Rolling Stones - Angry (Official Music Video)

 
The Rolling Stones & Lady Gaga – Sweet Sounds Of Heaven (Live from Racket NYC)

 

 
全12曲

 
Spotify

 
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ENT>ARTIST>Rolling Stones
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