大旋風を巻き起こしていったパフォーマーとしてのジャム&ルイス (パート1)~東京初日ファースト完全セットリスト付き
大旋風を巻き起こしていったパフォーマーとしてのジャム&ルイス(パート1)~東京初日ファースト完全セットリスト付き
【Performer Jimmy Jam & Terry Lewis Took The Billboard Live By Storm】
大旋風。
1980年以降、1990年代、2000年代と長きにわたってスーパー・プロデューサーとして数多くのヒットを放ってきたジャム&ルイス。(ジミー・ジャム&テリー・ルイス) そのジャム&ルイスがアーティストとして初めて日本でライヴを敢行。東京3日(6回)、大阪1日(2回)計8ショーを行った。
ジャム&ルイスは、元々プリンスがてがけたザ・タイムのメンバーとして世に出てきて、ザ・タイムとしてもヒットを放ち、ライヴも行ってきた。(ただしグループ時代はジャム&ルイスや他のメンバーがやっていたグループにプリンスがプロデュースで乗り込んできた)
しかし、1982年2月、彼らがちょっとしたオフの数日間にアトランタでSOSバンドのアルバムのプロデュースをしたとき、次のタイムとしての公演地へ行く飛行機が雪のために飛ばなくなり、そのタイムのライヴに穴をあけてしまい、プリンスが激怒。彼らはタイムをクビになってしまう。そこで彼らはプロデュース業を本格化せざるを得なくなり、次々と仕事を取ってはプロデュース。
当時飛ぶ鳥をも落とす勢いだったソーラー・レコーズやクラレンス・エイヴォントのタブー・レコーズでプロデュース業を始め、徐々にヒットが出るようになった。SOSバンドなどがヒットするようになり、まもなく、シェレール、アレグザンダー・オニールらがヒットし、ブラック・ミュージック界で新進気鋭のプロデューサーとして確固たる地位を築いた。おりしも、出始めたばかりのドラム・マシーン、TR-808を多用したシンセ・ファンクの第一世代プロデューサーとして一世を風靡。独特の「ジャム&ルイス・サウンド」が確立された。
プリンスは1978年のデビュー作から普通にブラック・ミュージシャンの1人としてフォローしていたが、彼がてがけたザ・タイムは、1981年にデビュー作を出し、プリンスのファンキーなバンド指向‣嗜好を見せており、モリス・デイのキャラクターもあり、よりR&B的ファンク・バンドとして気になるようになった。そんな彼らがひょんなことからプロデューサー業に転身。特に1986年2月全米発表のジャネット・ジャクソンの『コントロール』をてがけて、これがポップ部門で大ブレイクすることになり、彼らのプロデューサーとしての地位も圧倒的なものになった。
ザ・タイム時代のライヴ・パフォーマンスは、御大プリンスの厳しい指導もあり、かなり完成度の高いライヴ・バンドになっていったが、彼らは1982年春以降、そこを離脱してプロデューサー業に専念したため、以後はライヴ・パフォーマーとしてはそれほどステージには上らなくなった。
それから約40年、2021年7月、彼らがアーティスト、ジャム&ルイスとしてのデビュー・アルバム『ジャム&ルイス:ヴォリューム・ワン』をキャリアの中で初めて出したことで、単発的だがライヴをやりだすようになった。それらの動画を見たビルボードライブ・スタッフが来日を打診するようになり、ついに2024年7月にアーティストとして彼らが日本のステージに立つことになった。
彼らを含むザ・タイムは1991年2月横浜アリーナでライヴが決定、発表されたが、どたんばでジャム&ルイスの来日キャンセルが発表され、ジャム&ルイスは来日しなかった。ぼぼ同時期、モリス・デイがソロとしてやはり横浜のライヴハウスで来日。タイムとモリス・デイを別々に見て、脳内合成するしかなかった。
その後、1999年、ジャム&ルイスは宇多田ヒカルの作品をプロデュース、そのバンドの一環でゲスト的に来日、また2003年彼らがプロデュースする新人ノディーシャのプロモーションに同行して来日した。
僕は1986年6月、ミネアポリスの今は亡きフライトタイム・スタジオに二人を訪ね、日本人として初インタヴュー。その模様は当時、雑誌アドリブなどに寄稿した。ノディーシャ来日時にもインタヴュー。そこで、今回は21年ぶりの再会ということなった。
ジャネットをはじめとする多くの大ヒット群。それをプロデュースした彼らが実際にステージに上がり、生で演奏する。『ディスコ・サーチン』などでも3回にわたって事前特集。おおいに盛り上げたが、そんな話をしていると、期待もどんどん膨らんだ。
ジャム&ルイスのアーティストとしての初めての来日。期待が高まらないわけがない。
こちらも満を持して初日のファースト・ステージにのぞんだ。
客席もいつになくレジェンドの登場に始まる前から熱くなっている。
暗転から数秒ずつのスニペット(曲が少しずつ続けて流れるもの=詳細セットリスト参照)が出て、そこからおもむろに一曲目に。SOSだ。
シンセの音からして、ジャム&ルイスだ。そして重いドラムスとベース。もう一気にジャム&ルイスのめくるめく世界が展開された。3曲目に「アンコール」(シェリル・リン)。
以後、次々とほぼノンストップで繰り広げられるジャム&ルイスの作品群。詳細は、下記セットリストをごらんいただくとして、なによりも、再確認させられたのが、本当にいい曲が多いなあ、ということ。アップテンポのダンス・ナンバー、ディスコ・ヒットも、バラードも遅いミディアム・テンポも万遍なくすばらしい。それはまさにベスト・ヒット・ジャム&ルイスのコンピレーション。
今回の下記セットリストには、曲名、この日リードを取ったシンガー、Sがシェレーア、Rがルーベン、ヒットさせたアーティスト名、その曲がシングルで出た年月を記した。アルバム発売時期とシングル発売時期がちがうものもある。このリストを見ながら、じっくりライヴを反芻してください。
シェレーアはジャネット曲(全12曲)より、バラードあるいはゴスペル曲のほうがあってるような気がしたが、ジャネット曲ももちろんいい感じだ。そして、ルーベンもそつなくヒット曲を歌った。
シェレーアの一番のハイライトは、下記25曲目のゴスペル・アーティスト、ヨランダ・アダムスのヒット「オープン・マイ・ハート」。そして、エンディングはジャネットの「トゥゲザー・アゲイン」かと思いきや、サウンズ・オブ・ブラックネスの「アイ・ビリーヴ」。これはかなり意外だった。
シェレーアは、フュージョン/ソウル系のサックス奏者、カーク・ウェイラムの来日時に確かな歌声を聴かせており、ある意味お墨付きだったが、ゴスペル調の曲は白眉だ。
また、ルーベンもプロモーション来日、さらに、デイヴィッド・フォスター・ショーでの来日もあり、迫力ある歌声は定評あるところ。ジャム&ルイス楽曲を歌うのに、シェレーアもルーベンもまったく問題ない。
なにより、ジャム&ルイスがステージに立っているだけで胸が熱くなる。もちろん、ザ・タイム時のライヴ・パフォーマンスと比べたら当時を100点としたら今は80点くらいなのかもしれないが、まだやってない曲もたくさんあるのだから、セトリを半分くらい入れ替えて再度来日してほしいところ。
オッシーと一緒に見た2日目のライヴ・レポは明日に。
(セットリスト、初日と二日目で微妙に順番がちがっているところ、追加があった部分があるので、明日付で2日目詳細をお届けします。あと、まだ確認は取れていないのですが、大阪のセットリストはまた変わったとのこと。それも後日分かればお知らせします。)
(つづく)
■過去関連記事
続~ジャム&ルイス~セットリストの意外な選曲
2024年7月30日
速報 ジャム&ルイス、初来日コンサート・ミニ・ライヴ・レポ
2024年7月29日
聴取感謝。(2024年7月27日)『レディオ・ディスコ』内「ディスコ・サーチン #088 」~オリンピック開会式雑感と来日直前ジャム&ルイス・セットリスト予想
2024年7月28日
明日土曜(2024年7月27日)『レディオ・ディスコ』内「ディスコ・サーチン #088 」~来日直前~ジャム&ルイス特集
2024年7月26日
ジャム&ルイス、来日メンバー、ヴォーカリスト発表、ルーベン・スタッダードとシェレーア~松尾潔のメロウな夜間授業開催日も公開
2024年5月11日
■ルーベンとシェレーアについて
ルーベンは『アメリカン・アイドル』2年目の2003年の優勝者。その後、Jレコーズからデビューし、デビュー作は200万枚を売った。ルーベンはプロモーションで2004年3月来日、そのとき渋谷デュオでギタリストと二人だけのショーケース・ライヴを敢行。その後デイヴィッド・フォスターのライヴで2010年10月来日。このときはフルオーケストラで歌った。ルーベンには2番目の妻との間に2020年に息子が、2024年に娘が生まれている。(ライヴ評下記参照)
ルーベンの4作目『ラヴ・イズ』でジャム&ルイスが5曲プロデュースしている。
Ruben Studdard Can’t Help It (Produced By Jam & Lewis)
Ruben Studdard-Flying Without Wings
Ruben Studdard-More Than Words (Produced by Jam & Lewis)
またシェレーアは、もともとジャム&ルイス・キャンプの一員。カーク・ウェイラムのライヴで2014年5月来日。多くのアーティストのセッションやレコーディングにゲスト参加。その後、ジャム&ルイスのデビュー・アルバム『ヴォリューム・ワン』でバッキング・シンガーの1人として2曲で抜擢されている。また、クインシーがてがけたPBSで放送されたコンサートで『クインシー・ジョーンズ・プレゼンツ:シェレーア』という番組が放映されている。また、クインシーがドバイに出した「Qズ・バー&ラウンジ」で2カ月ほどレジデンシーとして登場していた。もっとも影響を受けたシンガーはホイットニー・ヒューストンだと公言している。(ライヴ評下記参照)
Jam &Lewis Happily Unhappy (feat Toni Braxton) (backing vocal, Shelea)
Sheléa You Put a Move On My Heart (Live)
■ Sheléaシェレーアの発音・表記について
これまで日本盤の表記は「シェレーエ」でしたが、前回来日時に確認したところ、本人が「シェレーア」だというので、以来表記を当ソウル・サーチン・ブログでは、「シェレーア」としています。
■過去関連記事
カーク&ケヴィン・ウェイラム+シェレーア+ジョン・スタッダート、ソウルはひとつに
2014年05月22日(木)
デイヴィッド・フォスター・ライヴ~時代の変遷によって入れ替わるスター
2010年10月22日(金)
~~~~~
~~~~~
■初来日・完全セットリスト:ジャム&ルイス transcribed by The Soul Searcher
Setlist : Jam & Lewis, 7/28/2024 (Sunday), first show @ Billboard Live Tokyo
【凡例】
曲名
[S]=Shelea lead, シェレーア [R]=Ruben leadルーベン、先にリードを取ったシンガー
[ ] denotes the artist who made it hit, single released month and year, ヒットさせたアーティストと全米シングルリリース年月1983/6は1983年6月全米発売
J#1~ ジャネット・ジャクソン曲のみ1~12までナンバーを振った
Show started 17:30
00 Mix Medley (pre-recorded) a snippet of “777-9311”[The Time] – “If It Isn’t Love” [New Edition] – “Rhythm Nation” [Janet Jackson] – “That’s What It’s Made For” [Usher]
01 Intro / Just Be Good To Me [Shelea [=S])][SOS Band, 1983/6]
02 Tell Me If You Still Care [Ruben [=R] + Shelea] [SOS Band, 1983/10]
03 Encore [S] [Cheryl Lynn, 1983/11]
04 I Didn’t Mean To Turn You On [S] [Cherrelle, 1984/4, Robert Palmer, 1986/8]
05 Saturday Love [S+R] [Cherrelle with Alexander O’Neal, 1986/1]
06 Fake [R][Alexander O’Neal, 1987/5]
07 Human [R] [Human League, 1986/8]
08 What Have You Done For Me Lately [S] [Janet Jackson, 1986/1] J#1
09 Nasty [S] [Janet Jackson, 1986/4] J#2
10 When I Think Of You [S] [Janet Jackson, 1986/7] J#3
11 Love Will Never Do (Without You) [R+S] [Janet Jackson, 1990/2] J#4
12 Escapade [S] [Janet Jackson, 1990/1] J#5
13 Rub You The Right Way [R] [Johnny Gill, 1990/3]
14 Can You Stand The Rain [R+S] [New Edition, 1988/12]
15 ,<Piano Bar, ballad section> (#15-19) Tender Love [R] [The Force MD’s, 1985/12]
16 On Bended Knee [R] [Boyz II Men, 1994/11]
17 Come Back To Me [S] [Janet Jackson, 1990/6] J#6
18 Let’s Wait A While [S] [Janet Jackson, 1987/1] J#7
19 Again [S] [Janet Jackson, 1993/10] J#8
20 All For You [S] [Janet Jackson, 2001/3] J#9
21 U Remind Me [R] [Usher, 2001/5]
22 Bad Girl [R] [Usher, from the album “Confessions” 2004/3]
23 That’s The Way Love Goes [S] [Janet Jackson, 1993/4] J#10
24 He Don’t Know Nothing About It [R] [Jam & Lewis, Babyface, 2020/11, from album “Jam & Lewis Vol.1, 2021/7]
25 Open My Heart [S] [Yolanda Adams, 2000/4, from album “Mountain High…Valley Low”, 1999/9]
26 Doesn’t Really Matter [S] [Janet Jackson, 2000/5] J#11
27 Together Again [S] [Janet Jackson, 1997/12] J#12
28 I Believe [S+all] [The Sounds Of Blackness, 1994/3]
Show ended 18:50
Members
Jimmy Jam / ジミー・ジャム (Keyboards、vocal)
Terry Lewis / テリー・ルイス (Bass)
Ruben Studdard / ルーベン・スタッダード(Vo)
Sheléa / シェレーア(Vo)
John Jackson / ジョン・ジャクソン(Music Director)Keyboards
John Snow / ジョン・スノー(Gt)
David Smith / デイヴィッド・スミス(Dr)
ENT>LIVE>Jam & Lewis
ここから先は
¥ 200
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?