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〇横尾忠則展を見て~その「アート」と「サイエンス」~ヒップ・ホップ的手法も感じて

〇横尾忠則展を見て~その「アート」と「サイエンス」~ヒップ・ホップ的手法も感じて

【Appreciating Tadanori Yokoo Exhibition: Yokoo’s Art And Science】

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〇横尾忠則展を見て~その「アート」と「サイエンス」~ヒップ・ホップ的手法も感じて

【Appreciating Tadanori Yokoo Exhibition: Yokoo’s Art And Science】

原郷幻境現況。

日本が世界に誇るアーティスト、横尾忠則の展覧会『GENKYO横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?』を見た。東京展示は2021年7月17日(土)から始まり10月17日(日)までだったが、その終了ギリギリ2日前の15日(金)にすべりこんだ。やはりこういう展覧会は、初日もしくは最初の1週間以内に見に行かなければならないと痛感した。

さて、噂には聞いていたが、実際本当に圧巻だった。入場してからあっという間に2時間強。ライヴを集中するように見た。

■すべては現場にある

現場。

最初に感じたことは、音楽はやはりライヴ現場、DJイヴェントもイヴェント現場、映画もスクリーン、絵画展も展示会場そのものに行って、その作品やアーティストの波動、鼓動、息吹、空気、グルーヴ、ヴァイブレーションを感じないとダメだな、ということ。ネットや画集ではどうしても、この現物の波動は感じられない。当たり前と言えば当たり前なのだが、それを改めて感じた。

特に入ってすぐの部屋、「神話の森」の展示作品は相当大きいもの(150号とか?)が何点も飾られるので、その物量に圧倒される。イントロでガツーンとやられた感じだ。1階と3階で計13のテーマが付けられ、それに沿った展示がされている。

横尾展 1階レイアウト


(1階のレイアウト)

■引用の手法はヒップ・ホップと同じ

引用。

驚くべきは、そのスタイルの様々な違いだ。過去のアーティストの作品を下敷きにそれを引用し、自身の味を付け加え、新たな作品にしてしまう。

たとえば、ルソーの作品を数点元にして、いろいろと描いているのだが、どう見てもルソーなのだが、どう見ても横尾忠則になっている。


横尾展 画集 ルソー3 何点か

(写真=図録より)

図録には、オリジナルと横尾作品が並列で掲載されていて実におもしろい。

この他にもアンディ・ウォーホルのようなポップ・アートからさまざまな過去のアーティスト、さらには過去の自分自身の作品まで引用する。

まさにこの引用の手法はヒップ・ホップと同じだと思った。僕は横尾忠則は、1960年代後期のヒッピー、反体制的な彩の印象が強いのだが、ヒッピーからヒップ・ホップへとその点と点が繋がって線になっていると感じた。

そして、60年代から2020年代の今日まで彼は一カ所に留まることなく、常に変化し続け、新しいものを追いかけ、何かおもしろいものを探そうとしているように見えた。そのパワーは恐るべしだ。

解説によれば、1980年、ニューヨークでピカソ回顧展を見て衝撃を受け、いわゆる「画家宣言」をしてから作風が変わったという。実際に本人が「画家宣言」をどこかでしたわけではないが、インタヴュー、自身のエッセイなどでそのようなニュアンスを書いているという。

横尾展 3階レイアウト


(3階のレイアウト)

■クライアントありきのグラフィック・デザイナーから自身が描きたいものを描くアーティストへ

画家。

1960年代からそれまでは、いわゆるグラフィック・デザイナーとしてさまざまなクライアントから注文を受けて、それに応えて仕事をしてきた。それが画家になれば自分自身が感じたこと、自分が書きたいものを優先して作品にしていく。彼はさまざまな呼ばれ方をするが、自分は職人だと思っている、と言う。

グラフィック・デザイナーとしての作品を俯瞰して見る力が、そこに自分の芸術性を持った作品を作っていく際のプロデューサー的感覚を無意識のうちに持ち得ることになったのだろう。

横尾が描くテーマは多岐にわたる。「滝」「Y字路」「愛猫」「戦争の記憶」「地球の中心・宇宙」「女性」「性」…。そして、独自の死生観。

■平和が先か、芸術が先か

平和と芸術。

最近は、こうした刺激の強い、作品によっては主張のある絵画や、音楽は、世界平和に貢献できるか、戦争を止めさせる原動力になるか、などと僕は考えてしまう。一方で、平和だからこそ、こうした芸術作品を享受できるという見方もできる。平和だから芸術か、芸術があってそれが平和を作るのか。まさに鶏が先か卵が先かと同様の命題だ。一般的には、平和がなければ芸術活動をする余裕はないとされるのだが…。

だが、僕は世界の政治家のような国のリーダーになるような人たちは、みな少なくともこうした芸術作品に積極的に触れ、感性を磨くべきだと思う。そうすれば、戦争をしようなどとは思わなくなるのではないか。一枚の絵が、一枚の写真が、一曲の歌が戦争を止める起爆剤になることは十分にあり得る。しかし、芸術を理解しない、できない輩には、それが伝わらない。政治などの責任を背負う連中には、基本的な国語力のほかに芸術に関しての基礎知識をテストするような「芸術検定」でも課したいほどだ。

芸術家やアーティストたちは自らが意識するしないにかかわらずそうした力を持っているのだ。

■横尾忠則ワールドに漂う「アート」と「サイエンス」

アートとサイエンス。

そして、アートとサイエンス(科学)は表裏一体のもので、その二つを切り離すことはできない。科学的に説明ができないものも、アートであれば、描き出すことができる。そこを突き詰めると、精神的なもの、スピリチュアルなもの、ソウル(魂)の世界のものにたどり着いていく。

横尾本人は「ただ描きたいものを描いている。これからも描いていく」という。その作品から精神性を感じるのか、ソウルを感じるのか、グルーヴを感じるのか、それはあくまで見る者に委ねられる。そこには、「サイエンス」で割り切れないものが「アート」として生み出されている。

横尾は、作品を見て、それをどう見ようが見る側の自由だというニュアンスのことを語っている。それは、その作品に常に十分なスペース(余白)があるからだ。それはイマジネーションへのスペースであり、サイエンスとアートの緩衝地帯としてのスペースでもある。

この膨大な量の作品群のエネルギーは二時間強ほどあびてくたくたになったが、もう一周したいと思わせられた。それは作品が持つ強力な磁場のせいで、作品の持つプラス(+)の磁場が僕の体にあるマイナス(-)の要素を引っ張って行こうとしたためだろう。この磁場は、それにしても強力すぎた。

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終了後、本人は次のようなツイートをした。

横尾忠則
@tadanoriyokoo
午後1:03 · 2021年10月18日

都現美の「GENKYO 横尾忠則」展と21_21の「The Artists」展も4ヶ月振りで終りました。開始間もなくはオリンピックとコロナで緊急事態宣言と重なってえらいタイミングにぶつかったなと思ったけど、オリンピックも終了の頃から変化が起こりました。

昨日の最終日は案の定行列ができましたが、来観客全てを美術館が受け入れてくれました。当日の雨は展覧会のお別れの雨だと思いました。もう二度と見ることのない作品群にお別れをしてきました。

お祭り騒ぎも終り、これで静かに冥土の旅立ちができそうです。死ぬ寸前に見るという走馬灯のように85年が目の前を通り過ぎていきました。

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タイトル 『GENKYO横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?』。
期間 2021年7月17日(土)から10月17日(日)
作品制作 横尾忠則
会場 東京都現代美術館 
〒135-0022; 東京都江東区三好四丁目1番1号

■各部屋のタイトル 

1 神話の森へ
2 多元宇宙論 
3 越境するグラフィック
4 リメイク/リモデル
5 滝のインスタレーション
6 地球の中心への旅
7 死者の書
8 Y字路にて
9 タマへのレクイエム
10 横尾によって裸にされたデュシャン、さえも
11 終わりなき冒険
12 西脇再訪
13 原郷の森



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